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アジカン、ヒゲダン、KEYTALK……バンドの個性と最新モードを実感できる新作

2019年05月14日 10:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 日本のロックの新たな名作『ホームタウン』の次のビジョンを示すASIAN KUNG-FU GENERATIONのニューシングル、本格的ブレイク間近のOfficial髭男dismが映画『コンフィデンスマンJP』の主題歌として制作した新曲など、いま注目すべきバンドの個性と最新モードが感じられる新作を紹介!


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 豊かな中低域を中心にした世界標準のサウンドメイクを実現、ホリエアツシ(ストレイテナー)、リヴァース・クオモ(Weezer)らをソングライターに迎えるなど、ロックバンドとして新たな地平を切り開いたアルバム『ホームタウン』(2018年12月)を経て届けられたニューシングル『Dororo / 解放区』でASIAN KUNG-FU GENERATIONは、さらなる未来に突き進む意思をはっきりと証明している。骨太にして鋭利なバンドサウンド、“闇の奥にあるはずの光”をモチーフにした歌を融合させた「Dororo」、そして、オーセンティックなギターロックを軸にしながら、楽曲の後半でポエトリーリーディングを取り入れ、〈フリーダム〉〈解放!〉というシンガロングに結びつく「解放区」。パワーポップバンドとしての存在感をキープしながら、斬新かつ現代的な表現にトライし続けるアジカンの現在地がここにある。


 ブラックミュージックのテイストを織り込んだサウンドメイク、色彩豊かなメロディによってコアな音楽リスナーから一般的なJ-POPユーザーまで幅広い層にアピールし続け、本格的なブレイクに向かって加速しているOfficial髭男dismのニューシングル表題曲「Pretender」は、映画『コンフィデンスマンJP』の主題歌として制作されたミディアムチューン。しなやかなグルーヴを描き出すドラムとベース、煌びやかで切ないギターのフレーズ、豊かなリズムを内包したメロディ、そして、〈君の運命のヒトは僕じゃない〉という認識から生まれる感情をリリカルに綴った歌詞。しっかりと精査されたファクターを自然に組み合わせることで、聴感的な気持ちよさとグッとくるエモさを同時に感じさせてくれるこの曲は、藤原聡のソングライティングの確かさ、ポップバンドとしての質の高さを改めて示すことになるだろう。


 レーベルを移籍し、再スタートを切るKEYTALKのニューシングル『BUBBLE-GUM MAGIC』(作詞/作曲:首藤義勝)は、BPMを抑え、ソウル、ファンクの要素を加えたリズム、起伏に富んだメロディライン、ワウギターによるソロなどを組み合わせたナンバー。高速の4つ打ちビートで2010年代のバンドシーンのド真ん中に躍り出た彼らは今、これまでとは違うテイストのグルーヴを獲得し、新たなバンド像を提示しようとしている。その意思を示しているのが、〈終わらない 終わることない 地平線に舞い上がれ MAGIC〉というフレーズだろう。カップリングの「海」(作詞/作曲:寺中友将)はアコースティックな雰囲気のミディアムバラード。叙情性をたたえた旋律、夏の終わりの切ない思い出を映し出す歌詞からは、王道のJ-POPをルーツに持つ寺中の作家性が感じられる。


 2017年5月にシングル『CQCQ』でメジャーデビューを果たした神様、僕は気づいてしまったの1stフルアルバム『20XX』。「UNHAPPY CLUB」(テレビ東京系ドラマ『警視庁ゼロ係~生活安定課なんでも相談室~ THIRD SEASON』主題歌)、「匿名」「ストレイシープ」(映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』挿入歌)を含む本作には、ヘビィロックからエレクトロまでをカバーする高度にして広範囲な音楽的メソッド、メンバー個々の優れたプレイヤビリティ、そして、孤独、メンヘラ、終末観といったダークな世界観をポジティブに転化するような歌詞の世界など、このバンドのオリジナリティがたっぷりと描かれている。メインコンポーザーの東野へいと(Gt)を中心に、どこのだれか(Vo/Gt)、和泉りゅーしん(Ba)の楽曲も収録されるなど、ロックバンドとしての一体感が感じられるのも本作の魅力だ。


 生々しさがほとばしるバンドサウンド、日本語の響きを活かした楽曲によって、“日本のロックンロールの新たな後継者”と称される3ピースバンド・SIX LOUNGE。ニューシングル表題曲「天使のスーツケース」は、どこまでも性急に突っ走るビート、昭和の歌謡曲にも通じる叙情的なメロディ、〈スーツケースにガラクタぶち込んで/街を抜け出す〉から始まる映像的な歌詞など、このバンドの独創性がダイレクトに刻まれたロックナンバーに仕上がっている。ライブの臨場感をリアルに伝えるサウンドメイク、感情をむき出しにしたボーカルも絶品。6月にはZepp Fukuoka、新木場STUDIO COASTでワンマンライブを行うなどライブの規模も拡大しているが、新たなアンセムと呼びべき「天使のスーツケース」によって彼らは、さらに上のステージに駆け上がることになりそうだ。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。