2019年05月13日 18:11 弁護士ドットコム
東京都内の建築設計事務所で専門業務型の裁量労働制を適用されていた女性(20代)が、長時間労働が原因で適応障害を発症したとして、中央労働基準監督署が2019年3月18日付で労災認定していたことがわかった。
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女性と女性が加入する労働組合「裁量労働制ユニオン」(坂倉昇平代表)が5月13日、東京・霞が関の厚生労働省で記者会見し、明らかにした。
「(長時間労働に対する)違和感はずっとありましたが、まわりがみんなそうしていましたし、この業界はそれが当たり前だとすりこまれていました。
労災を申請した理由は、身体を壊した理由をはっきりさせたかったためです。今まで、ずっと自分が悪いのではないかと自分のことを責めていました。労災が認定され、ようやく自分は悪くないと言われた気がしてほっとしました」(女性)
女性は2015年4月に新卒採用され、専門業務型裁量労働制の適用対象となった。
裁量労働制は、1日にどれだけ働いたとしても、みなし労働時間分を働いたとみなされる制度だ。会社では、みなし労働時間は「1日8時間」とされていたが、入社3カ月目には残業時間は月100時間をこえていたという。
労基署が認定した精神疾患の発症日は2018年4月20日。発症1カ月前の残業時間は173時間15分だった。同年6月から女性は休職したが、入社してから休職するまでの3年3カ月のうち7割の期間において、過労死ラインの月80時間以上の残業をおこなっていたという。
女性は2018年6月にユニオンに加入。未払い残業代や長時間労働の改善を求めて会社と団体交渉をおこない、2019年4月に和解した。
ユニオンの説明によると、会社は団体交渉や労基署の指導を踏まえ、2018年10月に裁量労働制を廃止。ほかにもフレックスタイム制を導入するなどの長時間労働対策をおこなった。
2018年4月には最大残業時間が170時間(全体の平均残業時間は63.26時間)だったが、12月には79.5時間(全体の平均残業時間は36.95時間)に下がるなど、残業時間は大幅に減っているという。
女性は「3年勤務してきましたが、その間は何も変わりませんでした。なぜ、もっと早くやってくれなかったのか」と悔しさを滲ませた。
会社は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「裁量労働制の適用によって、女性が休職したことについて真摯に受け止めたい」とコメントした。
※裁量労働制ユニオンでは、5月18日・26日に裁量労働制ホットラインを実施する。
5月18日(土)13時ー17時
5月26日(日)13時ー17時
0120-333-774(通話・相談料無料・秘密厳守、ユニオンスタッフが対応)
(弁護士ドットコムニュース)