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渕上 舞、“旅と私の音楽”をテーマに様々な表情を見せた2ndライブ

2019年05月13日 16:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 声優・アーティストの渕上舞が、4月28日に東京・中野サンプラザホールで『渕上 舞 2nd LIVE “Journey & My music”』を開催した。“旅と私の音楽”をテーマに、1月にリリースしたミニアルバム『Journey & My music』からの楽曲を中心に、自身が声優を務める人気アニメ『ガールズ&パンツァー』のキャラクターソングも披露するなど、アンコールを含めて全19曲を歌い切った彼女。MCでは、作詞に対する気持ちやアーティスト活動にかける思いを語った他、お茶目な素顔も覗かせるなど、渕上 舞の魅力が詰まったステージになった。


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■ツンデレの渕上ワールド全開


 1曲目は、『Journey & My music』に収録の「BLACK CAT」。猫になり切ってハイテンションで歌い踊る、小悪魔チックな魅力が全開の楽曲で、昨年末にMVが公開されるやファンの間で話題をさらったナンバーだ。会場にド派手なエレクトリックサウンドが鳴り響くと、猫耳を付けた渕上が登場し、猫のポーズで〈ニャオ~ン〉と一声。観客は「待ってました!」とばかりにドッと沸いて、会場は大興奮に包まれた。観客を挑発するようなポーズで魅せながら、ユーモアたっぷりの歌詞を畳みかけるように歌った渕上。彼女の魅力にメロメロになった観客は、ピンクとパープルのペンライトを振っ て声援を送った。


「今日はここから、みんなと一緒に旅に出たいと思いますので、しっかりついてきて下さいね」


 この日のライブは、“旅と私(渕上 舞)の音楽”がテーマのため、「渡り鳥が、いろんな国を渡り歩いていくイメージ」で構成しているとのこと。MCでは、「声優も渡り鳥だなと、感じる瞬間があります。いろいろな世界観の作品を3カ月ごとに渡り歩き、いろいろなキャラクターになれるのが、この仕事の面白いところです」と、声優という仕事に重ねて、渡り鳥に込めた気持ちも語った。


 まず前半戦は、バラードナンバーを続けて披露して、透明感のある歌声を聴かせた。幻想的なサウンドと共に、切ない心情を歌った「雪に咲く花。蜃気楼。」。ピアノバラードの「ラララ~君へ贈る歌~」では、両手でマイクをしっかり握りながら伸びやかな歌声を聴かせる。そして「部屋の窓から見る花火」では、曲の最後に花火の映像が映し出された。窓辺に佇むシルエットが映し出される幻想的なライティングも印象的で、かごの鳥が、遠くの国や街に思いを馳せているような情景を想像させてくれた。


 中盤は一転、鳥がかごから飛び立って様々な景色を観て回るように、多彩なシチュエーションと楽曲で楽しませた。「ファインダー」では、ノスタルジックなバンドサウンドに乗せて温かみのある歌声を響かせる。バックに映し出されたタンポポ畑の映像に彼女の姿が重なり、そのタイトル通り、ステージはまさしく”インスタ映え”といった感じだ。散歩するようなテンポに合わせて、可愛さ満点の歌声を聴かせた「Cute♡Appeal」では、手でハートの形を作って客席に向ける。ピンク色に染まった客席を見て、「みんな、可愛いピンクをありがとう。もっともっと可愛い私も見てね! なんちゃって(笑)」と、茶目っ気たっぷりの表情だ。


 情熱的な赤いドレスに着替えて歌った、フラメンコ調のナンバー「バレンシアガール」では、スカートの裾を翻して踊りながら歌う彼女に続いて、会場には〈Ole!〉の声が響いた。間奏では観客とのコール&レスポンスも行われ、まさしく会場が1つになって盛り上がった。渕上が「恋人や大切な人がいる人!」と問いかけた時は、思いのほか声がたくさん上がったようで、これには「何だ、みんなリア充じゃん!」と拗ねてみせる。そうかと思えば「GWの貴重な時間を、私のために割いてくれてありがとう。大好きになりそうだよ。もっと好きにさせてよ!」と、ツンデレで渕上ワールド全開になった。


■“人生は旅のようなもの” これからも旅を続けたい


 後半戦は、「ここからさらに盛り上がって行きましょう!」と、渕上が声優として出演したアニメ作品のキャラクターソングを2曲披露した。まずはアニメ『暗殺教室』のOPテーマだった「自力本願レボリューション」で、サビの〈起立。礼。ロックオン!〉という歌詞を観客と一緒に叫びながら、起立や礼をする振り付けを楽しんだ。渕上も「男の子のメインキャラクターを初めて演じた、私の中でも大切な作品です」と振り返りながら、一緒に踊ってくれた観客に笑顔で「最高でした。ありがとう」と嬉しさを滲ませた。続いて、アニメ『ガールズ&パンツァー』の主人公=西住みほとして歌った「I Found My Way」では、アグレッシブにステージ場を駆け回りながら、パワフルなボーカルを聴かせた。アッパーなロックサウンドに乗せて、会場からは〈オイ!オイ!〉とかけ声があがる。盛り上がりは最高潮で、彼女も観客の盛り上がりに合わせて一緒に拳を突き上げた。


 渕上は、このライブで披露した全19曲のうち、10曲を自身で作詞を手がけている。彼女の好きな鳥や旅になぞらえた独自の視点は、オリジナリティがあり、メッセージを感じさせてくれる。そんな歌詞に、背中を押されたファンも少なくないだろう。MCでは「だんだん歌詞を書くのが楽しくなっている自分がいる」と、作詞に対する気持ちも明かした。「Journey」を歌う際には、歌詞に込めた気持ちと今の気持ちを重ねて語った。


「大人になると距離や経験という意味での旅はできるけど、子どもの時のような思いを持ったことは出来なくなるし、自分の意見も言いづらくなるものです。私、ズケズケ言うように見られるけど、これでもけっこう気を使ってるんだよ(笑)。誰が言ったか知らないけど、“人生は旅のようなもの”と聞いたことがあります。自分自身をしっかりと持って、これからも旅を続けたい。みんなを笑顔にさせる仕事なので、まずは自分が笑顔にならないとね。私の歌で、みんなが笑顔になってくれる瞬間が、本当にうれしいです」


 アンコールでは「私の中の温かい感謝の気持ちを書いた曲です。みんなに届いたらうれしいな」と、「Good morning!Hello?Good bye.」を歌った。ミディアムテンポのスケールの大きなバラードで、〈オレンジ色の花びら~見つめちゃうね〉という歌詞の通り、客席にはウルトラオレンジのまばゆい光がゆっくりと揺れた。


 ちょっと小悪魔で、キュートで、たまに驚かされるのもまた魅力で、真っ直ぐな格好良さや素直さもあって、そんな様々な表情を見せてくれたライブ。「Good morning!Hello?Good bye.」の最後に出てくる〈「ありがとう」〉というフレーズを歌った、この日一番の心からの笑顔に胸がキュッと締め付けられた。(榑林史章)