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「定期テスト、宿題なし」公立中学の改革を「アンチ宿題派」の若新雄純氏が評価 「内発的な行動の習慣付けが大事」

2019年05月13日 12:30  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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担任や定期テスト、宿題の廃止など、千代田区立麹町中学校で行われている改革が注目を集めている。教員がチームで子どもたちを指導するという同校は、単元ごとの実力テストを増やし、日常的に勉強習慣をつけるための改革を行っているという。

5月9日放送の「モーニングCROSS」(TOKYO MX)でもこの改革を取り上げた。慶應義塾大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は同校の取り組みを、

「アップデートというよりも、 もう一度立ち止まって"人が学ぶ"ということを丁寧に見ている」

と高評価。自身を「アンチ宿題派」として、「自分から行動する習慣づけの大切さ」を語った。(文:okei)

宿題がなければ遊んでばかりの子も「1ページくらいは教科書を開くことがあるかもしれない」


特に定期テストの廃止は、各教科の単元が終わるごとに理解度を確認し、受け直しもできる点を評価した。そもそもテストは一発勝負で点をとることが大事なのではなく、習得度を測ることが重要だ。これまでは、先生の成績のつけ易さの面から「1回きり」になっていたと解説した。

若新氏は「全員一律同じ宿題」というこれまでの風潮にも疑問を呈する。自宅学習が必要な人には個別に出してもいいが、全員に「これをやるべき」は必要ないという。

例えば、子どもが家に帰って遊びたくても、「宿題やらなきゃ」と遊べなければ、"外的な行動管理"をすることになる。管理されなければずっとゲームをしてしまうかもしれないし、勉強時間が減るかもしれないが、「その中でチラッと、1ページくらいは教科書を開くことがあるかもしれない」と若新氏は言う。

「『外的習慣』より、ほんのわずかでも内発的な行動によって何かを始める『内的習慣』の方が大事」と、先生や学校から与えられた習慣より、小さくても自分から納得して動く習慣が重要だと説いた。

「言われた通りにやっても最後に裏切られる時代」「人生のオーナーシップが求められる」

そもそもこれまでの教育は、明治期に農民から工業労働者へ移行するときに出来た近代的なもの。我々が外的な習慣を身につけさせられてきたのは、皆で同じ働きをする「労働集約型」の経済で豊かになってきたからだと解説する。よって、外的習慣をしっかり身につけさせることは、個人の豊かさにもつながってきた。

しかし、今後はそうではないというのが若新氏の考えだ。「内的習慣は人生のオーナーシップにつながる」と主張し、こんな厳しい指摘もしている。

「いま、人生は『人に言われた通りにやってきても、最後に裏切られる時代』だから」
「自分の人生に対して意味を見出したり納得ができるオーナーシップを持つことが求められている。決められたことをどう習慣化するかよりも、 ほんのちょっとでもいいから内的な習慣を身につけるべき」

オーナーシップとは、自分の人生を主体的に考え、自分で決めて切り拓いていくということだ。与えられたことを愚直にやっていれば報われる時代ではなく、自分の意思で動くことが大事という指摘だろう。当然のようだが、長い間一律だった公教育を改革する難しさも感じる。ツイッターでは、「『宿題を無くすべき!アンチ宿題だ』朝からスゲエ議論してるぞ」「残念ながら、子供は自発的に勉強なんてしない。絶対にしない!」など賛否の声が上がっていた。

また、番組放送後の取材に対して若新氏は、

「教育のあり方・考え方については、今はまさに変化の過渡期。たしかに、宿題管理などによって育成してきた反復能力や演算能力は、持って生まれた才能やセンスに関わらず誰でもある程度高めることができるというフェアさがあったと思う。そして、いい就職や給料にもつながった。ところが、これからはそれこそが機械に取って代わられてしまう。僕が提案したいのは、だから才能やセンスを磨こうということではない。結果はどうであれ自分で決めた、自分で意味を見出したという納得感こそが、これからの人生を支えてくれるのではないか。そのためには、内的な行動・習慣を日常的に心がけることが大切」

とコメントしている。