2019年シーズンのトロロッソ・ホンダは協力関係が2年目に入ったこともあって、意思の疎通はいっそうスムーズになったと双方の関係者が口を揃える。マシンパッケージの戦闘力が、去年より増したことも確かだという。
しかし一方で、ここまでの4戦では9位入賞が最高で、コンストラクターズ選手権の順位も暫定9位。本来の実力からすると、やや物足りなさは否めない。トロロッソ・ホンダの現状について、ホンダ側の現場責任者である本橋正充チーフエンジニアが語ってくれた。
──予選9番手だったクビアトは、「現時点でのマシン性能を、最大限引き出せた」とコメントしていました。本橋さんも同様の思いですか?
本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):そうですね。他のチームもいろいろアップデートを持ち込んできた中、これまでの4戦とそう大きく勢力図は変わっていませんよね。もちろん上に行くに越したことはないんですが、戦力的には拮抗状態の中で戦えている感じですね。
──中団勢の中には、たとえばハースやルノー、マクラーレンのように、コースによってパフォーマンスが大きく上下しがちです。その中でトロロッソは比較的安定して10番手前後をキープしている印象です。その見方は、間違ってないですか?
本橋CE:去年のトロロッソ・ホンダと比べると、確かに安定はしていますね。それも決して、低値安定ではなく。
──去年はコースによって、けっこう得意不得意がありましたよね。
本橋CE:確かに。去年の反省がうまく活かされてると思いますね。
──今週末はクビアトが速さを見せた一方で、アルボンはまたもQ3進出を逃しました。
本橋CE:ええ。Q3にいける実力は十分あっただけに、少し残念でした。これだけ中団勢が接戦状態にあると。セッティングを少しでも外したり、あるいはドライバーが少しミスしただけで、順位が大きく変わる。なのでわれわれも取りこぼしなく、緊張感を持ってやっていかないといけない。
──2月のウィンターテストで走ったサーキットに約3カ月ぶりに戻って来たわけですが、今週末のトロロッソ・ホンダはほぼ想定したようなパフォーマンスを発揮していますか?
本橋CE:そうですね。この4戦でわれわれの相対的な位置関係も、だいぶ見えてきました。その意味で、ほぼ想定通りという感じですね。
■まだトップと比較すると性能・信頼性は不十分
──今回ルノーとフェラーリが、スペック2を投入しました。ルノーは主に信頼性向上とのことですが、フェラーリはパフォーマンスを上げるためと明言しています。このタイミングでのパワーユニット交換は意外でしたか?
本橋CE:いえ、そうでもないですね。チームそれぞれ戦略がありますし、どこで入ってこようと特にびっくりはしないです。継続的に開発して行く中で、いいものが見つかったから入れたということでしょうから。ホンダもそれは、同じ考えですしね。
──性能向上の目的ということですから、パワー感度の低いコースではスペック1を使うなどして、やり繰りする可能性もありますよね。
本橋CE:そう思います。あるいは金曜日用にするとか。そうやって、うまく回して行くのだと思います。
──ホンダの場合、特にトロロッソは事故で壊したりして、いっそうやり繰りが大変だと思います。
本橋CE:性能、信頼性ともに、トップと比較すると、まだ不十分だと思っています。とはいえ、どう使い回して行くかについてのノウハウは、だいぶ蓄積されています。信頼性も以前に比べれば、かなり上がっている。その分、楽になっていますよね。
──ホンダも当分は、初日はスペック1、二日目からスペック2という使い方ですか。
本橋CE:そこは今後、検討ですね。コースによって、使い方も変わりますし。
──今回はレッドブルでしたが、パワーユニット交換に要する時間も、去年より短くなっていますか?
本橋CE:短くなっていますね。開発に際しては、レース現場での運用のしやすさという観点も入っています。あとはチームと協力し合って、事前の準備をしっかり整えています。その辺りも去年よりは、向上した部分ですね。そういう部分のタイムロスは、極力防ぎたいですから。
──ありがとうございました。