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『なつぞら』草刈正雄演じる泰樹の“暴走”ぶりが話題に それぞれの本音が浮かび上がった第6週

2019年05月12日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『なつぞら』(NHK総合)第5週は、泰樹(草刈正雄)が照男(清原翔)に「お前、なつと結婚しろ」と衝撃の一言を告げラストを迎えていた。十勝の冬をメインにした第6週「なつよ、雪原に愛を叫べ」では、なつ(広瀬すず)の心の奥底にある夢と引き継ぐべき酪農との葛藤、その思いを知る天陽(吉沢亮)の秘めた好意、義理の兄として天陽の好意を後押ししようとする照男と、それぞれの心情が複雑に入り混じっていく。


 東京にいるなつの兄・咲太郎(岡田将生)の話の中で、「だったら行くなよ」となつに本心が漏れ出てしまう天陽のハッとした表情、伏し目がちになるなつとのシーンは、2人の表情から心の機微が読み取れる名場面だ。


 そんな繊細な高校生活のラストを豪快にぶち壊してしまうのが、やはり泰樹。第6週のトリを飾る第36回において、「お前……結婚する気はあるか?」となつに切り出してしまうのだ。第32回では富士子(松嶋菜々子)からなつに照男との結婚のことを言わないよう強く止められるが、“朝ドラ受け”でお馴染みの『あさイチ』(NHK総合)でその日、博多華丸(博多華丸・大吉)は「あのじいさんは言ってしまうね。人間と牛は一緒じゃないんだから」と愛ある辛口コメント。残念ながら、その予想は見事に的中してしまう……。


 肉親の兄・咲太郎と再会したことでなつが東京に行ってしまうのではないかと焦った泰樹は、“柴田なつ”として迎え入れるために照男と無理やりにでも結婚させようとする。しかし、その行為はなつから大事な“家族”を奪ってしまう結果となる。なつが大粒の涙を流しながらぶつける「私を他人だと思ってるからでしょ」という言葉に、泰樹は何も言えなくなってしまう。偏屈だけれど愛情深いという難しい性格故に、自身の気持ちが行き過ぎてしまったのだ。


 「すまん……」と猛省するが、富士子から差し出されたお汁粉はバクバク食べる泰樹。『なつぞら』において、最もユーモア溢れるのは泰樹に間違いない。広瀬すず、富田望生をゲストに迎え先日放送された『土曜スタジオパーク in北海道「なつぞら」特集』(NHK総合)では、VTR出演で草刈正雄が登場していたが、「何やらせても上手」「声がセクシー。ゾクゾクってきます」と女優・若尾文子に例え、広瀬の魅力をデレデレ顔で力説していたことを思い返すと、泰樹の落胆している姿はより一層味わい深く見えてくる。


 「どして、そんなこと言うの」というのは、泰樹に結婚話を打ち明けられたなつが言うセリフだが、第5週の第28回において、東京の宿で富士子がなつに「無理に母親だと思わなくてもいいからね」と投げかける場面でも、なつは同じセリフを発していた。そこから富士子はなつに対してより自然体の母親となって彼女の夢を後押ししていくが、やがて訪れるであろう別れを予感しながら本心には「今のまんまがいい。ずっと今の家族でいたい」と潜めている。ナレーションにもある通り、なつを思っているのは咲太郎だけではないのだ。


 第6週の幕開けとなる第31回は、なつが天陽の兄・陽平(犬飼貴丈)と出会い漫画動画を制作する「新東京動画社」を訪問する、若干テイストが異なる回。その放送日、5月6日はなつのモデルとなった奥山玲子の命日でもあった。なつのアニメーターへの夢は、第7週「なつよ、今が決断のとき」でついに思いとして放たれる。泰樹を始めとした柴田家はどのように受け止めるのか、そしてなつへの好意を告白すると決めた天陽との結末はいかに。(渡辺彰浩)