2019年シーズンからフォード・パフォーマンスが送り込んだ最終兵器、マスタング・スーパーカーが猛威を振るうVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーは、5月3~4日にバルバガロ・レースウェイでは初開催となる"スーパーナイト"で争われ、DJRチーム・ペンスキーの王者スコット・マクローリンとファビアン・クルサードが、前戦に続いて勝利を分け合う結果に。予選ではコースレコードも更新する驚異的速さを披露して、ナイトラウンドを制圧した。
2018年はシドニーで初の試みとなったナイトレース・イベントが、2019年はパースに開催地を移しての開催に。開幕から好調さをみせるフォード・マスタング勢は、今季デビューシーズンながらその完成度の高さでシリーズを席巻し、エアロホモロゲーションの見直しやセンター・オブ・グラビティ(CoG)の再調整などパドックでも数々の議論を巻き起こし、VASCシリーズがあの手この手で"マスタング封じ"を講じる状況に。
その施策をあざ笑うかのように、公式練習からラップレコード更新合戦が続いた週末はレース11に向けた予選でも勢いが衰えることはなく、マクローリンがさらに記録更新のタイムで今季7度目のポールポジションを獲得。
フロントロウ2番手にもDJRのクルサードがつけ、セカンドロウ3番手のホールデン・ワークス、レッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)の"セブンタイムス・チャンピオン"ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)がレースでどこまでマスタング勢に喰い下がれるかが焦点となった。
初のライティング設備採用下でのレースとなった金曜夜のラウンド11は、そのポールシッターであるマクローリンがスタートで大きく出遅れる手痛いミスを犯す波乱の幕開けに。しかし、マスタング陣営の壁は厚く1コーナーで首位を奪ったクルサードがミスを一切犯さない完璧な走りで50周を走破し、キャリア通算12勝目をマークした。
オープニングで4番手までドロップしたマクローリンも片側2輪交換の"2タイヤ"などアグレッシブなピット戦略を採用して2位にカムバックし、DJRチーム・ペンスキーが開発チームとして面目躍如となるワン・ツーを達成。
3位にもフォードのファクトリー支援を受けるティックフォード・レーシング、チャズ・モスタートが入り、マスタングが表彰台を独占。RBRAの元チャンピオン・ペア、ウインカップが4位、SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが5位と、苦しいマシン性能差をそのまま表現するようなリザルトとなった。
続く土曜夜のレースとなった83周、200kmのラウンド12は、フロントロウ2番手に並んだRBRAのウインカップがオープニングの1コーナーで意地の攻防を演じてホールショット。マスタング征伐に向けリードラップを重ねていく。
しかし冷静にレッドブルカラーのコモドアZBを追った王者マクローリンのマスタングは、最初のピットウインドウでアンダーカットに成功すると、そのまま不安要素を抱えることなくフィニッシュラインを通過。新記録となる早さで今季8勝目を挙げ、さらに選手権でのリードを拡大することになった。
「本当にテンション上がるよね、これが僕にとって初のナイトレース勝利なんだ。ファンもこれを楽しんでくれたことを願うよ」と、喜びを語ったマクローリン。
「2レース連続でスタートは台無しだったけど、今日は昨日より少しだけペースが良くて、あとは自分の仕事に集中するだけだった」
「フィリップ・アイランド(での性能調整やマスタング封じの施策)以降、僕らはさらに遠いところまで来たと感じている。マスタングの速さを維持してくれたDJRチーム・ペンスキー、シェルVパワー・レーシング、そしてクルーのみんなにおめでとうを言いたい。そして僕らはまだまだハードに戦い続けることを誓うよ」
今季3度目の2位表彰台となったウインカップに続き、3位には第2戦以来のポディウムとなるモンスターエナジー・ティックフォードのキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング)が入り、4位クルサードとともに改めてマスタングの優位性を象徴するリザルトとなった。
続く2019年VASCシリーズ第6戦は、5月24~26日にビクトリア州のウィントン・モーターレースウェイを舞台にスーパースプリント戦が待ち受ける。