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北欧ツーリングカー『STCC』が開幕。初戦はセアト操る女性ドライバー、ミカエラが勝利

2019年05月10日 14:51  AUTOSPORT web

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2019年開幕戦を制し、見事STCC2勝目をポール・トゥ・ウインで飾ったミカエラ-アーリン・コチュリンスキー
TCR規定採用3年目のシーズンを迎えたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の開幕戦が5月4=5日にスウェーデンのクヌットストープで開催され、PWRレーシングのミカエラ-アーリン・コチュリンスキー(セアト・クプラTCR)が自身初のポールポジション獲得から、オープニングのレース1でポール・トゥ・フィニッシュを達成し、シリーズ2勝目を飾っている。

 今季からWTCR世界ツーリングカー・カップにも進出するPWRレーシング・セアト・ディーラーチームは、共同代表のダニエル・ハグロフがWTCRへ。その影響でこれまで4台体制を敷いていたTCRスカンジナビア(STCC)では2017年王者のロバート・ダールグレンをエースに、女性ドライバーで唯一のSTCC勝利を挙げているコチュリンスキーに加え、もうひとりの共同代表子息であるピーター“ポーカー”ウォーレンバーグJr.のクプラ3台体制でシリーズに挑む形となった。

 この開幕戦を前にTCRシリーズの共通BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)に加えて、STCC独自のカンパセンション・ウエイトの搭載も発表され、PWRのクプラには60kgのバラストが追加されることに。“バラストフリー”のホンダやアウディ勢に対抗する厳しい条件での船出となった。

 5月でありながら小雪が舞い散るFP1こそミッケ・カーゲルド・レーシングのアンドレアス・アールベルグ(フォルスクワーゲン・ゴルフGTI TCR)に最速を譲ったものの、続くFP2では元王者ダールグレンが意地を見せ、ブリンク・モータースポートのアンドレアス・ウェルナーソン(アウディRS3 LMS)をコンマ2秒上回りトップタイムをマーク。そのまま予選Q1でもハンデを克服してのポールポジション獲得が濃厚、との観測もパドックには流れていた。

 その予想どおり、Q1ではダールグレンが唯一の1分切りとなる59秒963を記録し首位通過を果たすと、2番手には奮闘を見せた伏兵コチュリンスキーがコンマ3秒差で続き、PWRレーシングがワン・ツー体制に。

 するとQ1終了後からQ2開始までの間に“アイス・ストーム”と呼ばれる氷雨が襲来し、大量の雹(ひょう)がトラックを覆う事態に。すぐさま雲は去り、セッション開始時には太陽が照りつける状態まで回復するも、トラックコンディションは非常に滑りやすい状態でQ2がスタートした。

 ここでも雪混じりのFP1で速さを見せていたアールベルグのゴルフGTIが1分9秒414をマークして早々に首位固めを決めると、ドライより約10秒遅れのこのタイムを更新するドライバーはセッション終盤まで現れず、このままグリッド確定かと思われた最後の瞬間。

 タイヤチョイスで創意工夫をこらしていたコチュリンスキーがチェッカー直前のフライングラップで0.120秒更新の最速タイムを叩き出し、劇的な逆転で見事2019年最初のポールポジションをゲット。自身にとっても、うれしいSTCC初ポール獲得となった。

「本当にクレイジーな予選で、ものすごくトリッキーなセッションだったわ」と振り返った26歳のコチュリンスキー。

「私たちは始め、フロントにスリック(タイヤ)、リヤにレイン(タイヤ)の組み合わせも試したの。これはセアトのレーシング部門に伝わる伝説で、トム・コロネルが日本で試して勝利を飾ったチョイスなのよ。でもこのコンディションではフロントにまったくグリップせず、ピットに戻った時に『どうしたい』と聞かれたから、迷ったけど『前後レインで』と伝えて最後のアタックに賭けた」

「チームはアウトラップから『プッシュだ』って言うんだけど、路面はまだ滑りやすい状況で、しかもアタックラップでミスをしてしまったの。だからフィニッシュラインを通過したときには『本当にゴメン、ミスしちゃった』と答えたら、その返事は『君がP1(ポールポジション)』だった。とても驚いたわよ」

 迎えたレース1はフロントロウにアールベルグ、セカンドロウにトビアス・ブリンク(アウディRS3 LMS)、そして僚友ダールグレンの強豪たちが後方に控えるなか、スタート前に雪から雨へと変わるコンディションをものともせず、レインタイヤを履いたコチュリンスキーが盤石のダッシュを決めてみせる。

 オープニングではホンダ・レーシング・スウェーデンby MA:GPのマティアス・アンダーソン(FK2ホンダ・シビック・タイプR)が7番グリッドから2番手にジャンプアップしたものの、これをダールグレンがすぐに撃退。7周目にはブリンクのアウディも仕留めて2番手に上がると、その後は後続を抑える役目を担うことになり、そのままPWRレーシングのクプラTCRがワン・ツー・フィニッシュ。

「とても良いフィーリングだったし、私にとってもチームにとっても“スーパー・ハッピー”」と語ったコチュリンスキーが初の開幕制覇でSTCCキャリア2勝目を飾っている。

 同じく雨がらみとなったレース2は、ポールスタートのブリンク・モータースポート、ハンス・モーリン(アウディRS3 LMS)がじりじりと後退する展開となり、僚友のウェルナーソンが勝利。ペナルティ裁定のダールグレンは6位、コチュリンスキーは後方からの追い上げならずもランキングでは3位につけて、次戦6月2日のアンダーストープ戦に臨むことになった。