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江口洋介演じるガンテツが貫いた威厳 『ストロベリーナイト・サーガ』謎が残る「左だけ見た場合」

2019年05月10日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ロジックで解かれていく事件が多い中、最後まで説明のつかない謎が残された『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)第5話。前回同様に1話完結の事件に迫った。原作は誉田哲也の姫川玲子シリーズの『シンメトリー』に収録されている「左だけ見た場合」である。本作は過去に、土曜プレミアム特別企画『ストロベリーナイト アフター・ザ・インビジブルレイン』(2013)でオムニバス形式の作品として井岡(生瀬勝久)と日下(遠藤憲一)を主役にむかえ20分程度の短編として映像化されていた。今回は同じ原作を、チーム姫川の物語に生まれ変わらせている。


【写真】タバコをふかす姫川(二階堂ふみ)


 超能力を使えるという科学で立証されない設定が、最後まで明かされることなく終わり、ラストは視聴者に委ねられる形で幕を閉じた。姫川玲子(二階堂ふみ)は序盤から超能力や霊などに対して否定的な意見を貫き、この事件にはいかにも不思議な力が関わっているかのように演出した。かなりシンプルなトリックだが、こうして夢中で観ることができるのは、犠牲者が超能力者かもしれないというカモフラージュによって成り立っている。前回同様に短編を原作とし、姫川班の面々のパーソナリティが明かされるなどマイルドな内容であったが、今回は姫川と菊田(亀梨和也)との関係をどこか勘ぐってしまうようなシーンも散見された。


 容疑者を尾行している際に菊田が咄嗟に姫川を隠すために接近したり、菊田がいつも姫川のことを気にかけているような素ぶりを見せたり、2人には他の班員とは違う特別な想いがあるように感じるシーンがある。真剣な眼差しで姫川を見つめている菊田の姿は、亀梨ファンにはたまらないだろう。亀梨の持つ、強く切ない瞳が菊田の寡黙な雰囲気と非常によく合っているのだ。姫川の方は未だに何のアクションもないが、これから2人がどんな関係を築いていくのか。仕事のパートナーなのか、男女の仲になるのか、気になるところだ。


 また、第5話ではのり(葉山奨之)の過去にも含みが感じられる演出がされていた。のりの過去を思わせる映像が流れたり、犯人に暴力を振るわれることを異様に怖がっている様子が描かれている。さらに、ガンテツ(江口洋介)と被害者の意外な繋がりも描かれた。”嫌な奴”として姫川に認識されているガンテツだが、1話に続いて5話でも、ハートウォーミングなエピソードを披露。クールだが情に厚く、面倒見が良いキャラクターを短い出演時間でしっかり主張する江口の力量には敬服する。ぶっきらぼうだが、思わず魅力を感じてしまうキャラクターだ。


 今までは姫川の過去が中心であったが、徐々に菊田やのり、ガンテツのエピソードが盛り込まれ始めている。それぞれの出演シーンは長くないものの、キャラクターの背景は詳細に描かれ、作品からもよく伝わってくる。こうした表現力の高さは、実力のある俳優陣の努力と、演出の器用さによるものだろう。作品も中盤戦に入り、次回以降はどのようにそれぞれのキャラクターの個性が明かされていくのだろうか。


(Nana Numoto)