グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也) GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 2
2019 AUTOBACS SUPER GT Round2 FUJI GT 500km RACE
会期:2019年5月3~4日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
天候:雨
観客:9万1800人(2日間)
予選:6番手
決勝:6位
獲得ポイント:5P
シリーズ順位:7位(6.5P)
■FreePractice QF1-2
令和元年のSUPERGT初イベントとなる2019年シーズン第2戦が、史上初の10連休となったゴールデンウイーク後半の5月3~4日に富士スピードウェイで開催された。このGW定番となった500km長距離レースに向け、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは参加条件となる性能調整(BoP/バランス・オブ・パフォーマンス)に見直しを受け、重量は+55kgへ微増の1340kgと相変わらず参戦車種中No.1の重量級ながら、パワーに影響するエンジンへの吸気量制限が緩和され、レースで重要な最高速がわずかに改善。反撃の季節に向け少しばかりの後押しを得ることになった。
快晴の予選日に3万5800人を集めて始まった公式練習では、気温20度、路面温度27度のコンディションながら持ち込んだタイヤのソフト側となるミディアム、ハード側となるミディアムハードの双方ともに良好なグリップ感が得られず。ショートランでタイヤ評価を繰り返した片岡選手も、セッション中盤の早いタイミングでバトンを受け、軽いロングランをこなした谷口選手も曇り顔。前後のグリップバランスが定まらず、アンダーステア、オーバーステアの症状が頻発するため、ドライバーはその姿勢制御に多くの操作を要し、ブレーキング、ステアリング、スロットルの加減に常に神経を尖らせる必要があり長距離戦を戦う上では不安要素に。
10時15分からのGT300クラス占有走行では、谷口選手が1分37秒281の自己ベストを記録も、最終的には片岡選手がセッション序盤に記録した1分37秒149のタイムで5位に。決勝に向け重要な最高速でも、マザーシャシーとなる5号車(ADVICSマッハ車検MC86)が記録したクラストップの280.519km/hに対し、4号車はGT3でも劣勢の271.357km/hが精一杯と、不安要素を抱えたまま公式練習を終えることとなった。
そんなチームにいつも力を与えてくれるのは、サーキットに詰めかけ声援をくれるGOODSMILE RACING & Team UKYO個人スポンサーやファンの姿。今回のピットウォークでもドライバーサイン会では自主的に最後尾のプラカードを掲げ、サインガードでのステッカー配布も1コーナー方向にピット数個分は続こうかという長蛇の列が出現する人気ぶりとなるも、中盤からはファンが自主的に配布担当を買って出ることで待ち時間削減に貢献。誰もが”自分ごと”としてオーガナイズに積極参加する熱い姿が見受けられた。
その力強い後押しを得て、午後14時30分から全29台参加でのレギュラー方式となったノックアウト予選では、今回も片岡選手がQ1を担当。予選で使用するタイヤのいずれかを決勝スタート時にも装着する規則のため、レース距離を見据えてハード側をチョイスした4号車は、タイムが期待できる1度きりのチャンスを活かすべく入念なウォームアップを進めて、計測3周目に1分37秒189をマーク。
「マシンバランスも好みでなく、セクター3では他車に引っ掛かり」ながらも11番手で通過を果たすと、Q2担当の谷口選手が同じく最初のアタックで1分36秒592という素晴らしいタイムを記録し、見事6番グリッドを獲得。一部では路面温度が40度を超えるトラック状況で、その路面改善以上のジャンプアップを果たし、上位8台までが0.776秒差という僅差のバトルをくぐり抜け、500km決戦に向け最善のポジションからスタートを迎える。
■Race
迎えた決勝日、110周500kmのレースに向け快晴の富士スピードウェイには5万6000人の大観衆が詰めかけた。前日公式練習のタイム差などから、ライバル陣営とはレースペースでコンマ5秒ほどの差があると分析していたGSRチーム。今回は持ち込んだタイヤ特性などから2回ピットが義務付けとなる戦略面でも、無交換どころか片側2輪交換も封じられ、オーソドックスな4輪交換が前提条件に。
さらに天気予報では急な雨の可能性もあったことから、ルーティンのピット作業をいかに天候急変に合わせられるかがポイントとなった。しかし、その予想を覆すかのように決勝前のウォームアップ走行から雨がパラつき始め、片岡選手からスイッチした谷口選手は1周もできぬままピットへと帰還。それでもドライを信じて決勝前6番グリッドに並んだ4号車グッドスマイル 初音ミク AMGだったが、スタート開始5分前には本格的な降雨となり、開幕戦に続いて再びのセーフティカー(SC)先導スタートに。
グリッド上の全車がレインタイヤに履き替えてのレースでは、前日のキッズウォークでサプライズの誕生パーティが催され「2回目の成人式」を迎えた片岡選手がスタートを担当。雨は路面を濡らす程度で上がる、と読んだチームはウエットパターンの入ったレインタイヤでもハード側のコンパウンドをチョイスすると、片岡選手は3周目のレース開始時点から360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)などをかわして5番手にポジションを上げる力走を見せる。
しかし11周目には再びのSC導入となり、その後もGT500を含めた両クラスでアクシデントが発生し、16周目には雨量の急増による赤旗掲示でレースは約30分程度の中断に。さらに片岡選手の苦難はここから。SC先導による隊列が18周目にリスタートを迎えると、グリッド待機中に冷えに冷え切ったハードコンパウンドのレインタイヤはまったく発動の気配を見せず。
しかし雨は上がるも路面にはまだ大量の水が残り、「このまま走り続けても温まるかの確信がないほど。スピンしないので精一杯」という状況で11番手にまでポジションを落とすと、罰ゲームのような時間を乗り越え23周目にようやく1分49秒台まで回復。
するとここからはショータイムとなり、24周目以降毎ラップの自己ベスト更新で先行車を追い始め、1分48秒台を連発し30周目には9番手へ。翌周には88号車(マネパランボルギーニGT3)をコース上で仕留めて8番手、35周目には自己ベストの1分46秒294を刻んで2番手までポジションを上げたところで、38周で谷口選手、そしてスリックタイヤへのチェンジのためピットへと向かう。
ここで満タン給油とラップ数を考慮してミディアムハードを選択してコースインした谷口選手は、60号車(SYNTIUM LM corsa RC F GT3)、21号車(Hitotsuyama Audi R8 LMS)、61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)らがひしめく場所でアウトラップを迎え、42周目にはコースオフを喫していたGT500車両に遭遇し、あわやの場面も迎えるなど試練の局面に。
9番手走行も「タイヤが厳しくてフロントが入らず、あの手この手でドライビングの引き出しを全部開けてはひっくり返し」のテクニックを駆使しマシンをコントロールすると、44周目には自己ベストの1分38秒658を記録して猛追を開始。51周目には60号車もオーバーテイクし7番手へ。さらに55周目には前方でドッグファイト中だった21号車の左リヤがバーストし「イエロー区間だったのでグリーンポストを探す間に抜くのを留まりタイムロス」したものの、そこからはひとり旅でラップごとにギャップ1秒を削り取る力走を見せ、72周目に再び片岡選手にバトンタッチする。
同じくミディアムハードで110周のフィニッシュラインを目指した片岡選手は、時刻が18時に迫り路面温度も決勝前の25度から急降下するコンディションで「あっという間にタイヤが八角形くらいの感じになってしまって、振動はすごいわ、グリップはしないわ」という困難な状況に。
しかし後方から迫ってきた33号車(エヴァRT初号機 X Works GT-R)とのマージンを冷静に測ると、マシン挙動に全神経を動員しつつ後方から攻め立てるマシンを抑え込むレース巧者ぶりを発揮してチェッカー。6位を死守して5ポイントを獲得し、第3戦鈴鹿サーキットでは13kgのウエイトハンデを搭載。苦難に耐えながらも3戦連続のポイント獲得へ挑むことになった。
■チーム関係者コメント
安藝貴範代表
「性能調整緩和もあって期待を持って臨んだレースだったので結果には残念ですが、タイヤもマシンもドライバー技量も含め、この順位が今を象徴する順位なんだと思っています。レース的には想定外のこともたくさんあって、赤旗後にタイヤがなかなか温まらなくて片岡選手が順位を落としてしまった」
「でもそこからの追い上げは『見事』としか言いようがなく、あそこだけは楽しかったですね。さらに最終スティントでも後方から迫られたときは『もう無理』って言ってましたが(笑)、途中で走り方もかなり変えて『頑張らない方法を発見した』と」
「操るのも大変な状態で、よく乗りこなしてくれました。鈴鹿に向けてはもう少し暖かくなると思うので、そこに期待したいです」
片山右京監督
「走り初めからバランスが良くなくて運転するのに苦労するなか、予選Q2は谷口がすごくいいアタックをしてくれて、彼自身もこういう難しい状況で乗れてるな、っていうのが際立った瞬間でした」
「スタート前時点の雨は想定外で、1回目の満タン給油でもトラックポジションの悪さや重い状態での勝負になり、少し作戦が空回りした。これで最後のピットが短くできソフトタイヤで勝負できれば、とも思ったんですが選択肢がありませんでした」
「今回の6位はシリーズを考えると最低中の最低限で、これが7位だったらと思うと...。本来ならこういうときにいいレースをして結果を出してきたのがGSRですが、鈴鹿に向けては反対方向に振ってみる勇気も必要だな、と感じています」
谷口信輝選手
「予選は路面もドライで気温もいい感じという最高のGT日和。それで6番手で「明日は頑張って上に行くぞ」という意気込みで臨んだんですが、今の我々は雨の状況で他メーカーに対して劣勢であることは間違いなくて。やはりレースが始まってみたら他メーカーがグイグイときて、とくに65号車は『GT500?』みたいな速さ」
「アウトラップを頑張りにくい場所に出て、周りのペースはわからないながら頑張ったつもりではあるんですが、最後の片岡からは苦悶の……悲痛な叫びも聞こえてきて(笑)」
「正直に言えば我々の週末は6位になんて行けるポテンシャルじゃなかったから、この6位はラッキーな6位。まだまだ『弱!!』と思うんで、早くこの状況を打破しないとダメですね」
片岡龍也選手
「週末をつうじて、手持ちのマテリアルで勝てる雰囲気はなく。とはいえ感覚に対して全然タイムが出ないわけでもなく。その状況での予選6位、決勝6位という形。これも今の実力を表すような週末で、手応えとしては全然6位になるような手応えの6位ではなかった」
「まわりもミスしたりしたなかで、最後は相手がこちらのトラップにはまってくれてオマケでの6位っていうレースだったから、正直あまり面白みは感じられない週末でしたね」
「シリーズを考えると、とりあえずここで獲っておけたことは今後に活きる。でもパフォーマンスが上がらないとチャンピオンシップは厳しいと思うので、鈴鹿でも『このままじゃダメだ』という危機感の中で改善していきたいなと思います」