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飲食店「お子さまも、必ず注文して」 未就学児も「1人1品」ルール、問題ないの?

2019年05月09日 10:01  弁護士ドットコム

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小さな子どもを連れての外食は、親が神経を使う育児業務の一つだ。綿密な予定を立てても、予期せぬ場所や時間帯に食事せざるを得ないことだってある。


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だからこそ「お子さまの入店、お断り」「お子さまも、必ず1品は注文してください」といった店の張り紙を見ると、心が折れてしまう親だっている。



東海地方に住む主婦のA子さんは先日、入ろうとした喫茶店のドアに「未就学児のお子さまも、注文してください。離乳食のみ持ち込みOKです」と書いてあるのを見て、一気に暗い気持ちになったという。



「その日は幼稚園児2人を連れて行った病院で、予定より時間が長くかかってしまい、運悪く近隣のサラリーマンのランチタイムと重なってしまったんです。ようやく入れそうな店がその喫茶店でした。子どもメニューはありません。うちの子は2人とも少食です。大部分を残しても、注文しなければいけないのでしょうか。納得がいきませんでした」



店には店の事情があることはわかる。しかし、このような店側の対応に法的な問題はないのだろうか。店は客をあらかじめ選別してもいいのか。また仮に、このような店に入店した後、「やっぱり頼めない」と客が言った場合には、店側は客を追い出すこともできるのか。上田孝治弁護士に聞いた。



●「一定の条件をつけることは基本的には自由」

飲食店において飲食をするというのも契約になり、お店側とお客さん側の合意により成立します。そして、契約に関しては、契約をする当事者の意思を基本的に尊重するという考え方に基づいて、契約自由の原則というものがあります。



契約自由の原則は、(1)そもそも契約をするかしないか、(2)契約をするとして誰と契約をするか、(3)契約の具体的な内容をどうするか、(4)契約をする際にどのような形式でするかについて、当事者が自由に決めることができるという原則です。



したがって、当事者のどちらか片方が契約をしたいと思っていても、もう片方が契約するのを拒んだり、契約するにあたって一定の条件をつけることは基本的には自由ということになります。



●「子どもの入店はお断り」掲示は、飲食店の自由

飲食店を利用する契約をする際の条件として「お子さまも、注文して」と明示しているのであれば、その条件を受け入れられないお客さんの入店を拒むことができますし、もっと直接的に「子どもの入店はお断り」とするのもやはり飲食店側の自由です。



子どもも注文しなければならないという条件が定められているお店で、その条件を受け入れて入店した後に「やっぱり頼めない」とお客さんが言った場合には、条件を守ってくれないということになります。お店側はお客さんに出て行ってもらうことも可能です。



ですので、お客さん側としては、子どもも注文しなければならないという条件が嫌であれば、そのお店を利用せずに、そのような条件のない別の飲食店を利用するということになります。



結局のところ、そのような条件をつけることは法律上許されており、後は、それによるメリットやデメリットを、お店側が営業上の判断としてどう考えるかという問題になると思います。



(弁護士ドットコムニュース)




【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題、マンション管理法務に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/