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10連休中のスーパーGT富士、ニスモ柿元アンバサダーとの取材でうれしいおもてなし【大串信のサーキット徒然旅日記】

2019年05月08日 19:11  AUTOSPORT web

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モータースポーツファンの心をくすぐる。なんと気の利いた箸袋か。スーパーGT第2戦富士【大串信サーキット徒然旅日記】
御殿場駅前に「妙見」という料理店がある。創業昭和10年だというからもう84年も営業を続けている老舗である。たしかにぼくが富士スピードウェイ取材のため御殿場に出かけるようになった大昔から、料亭のような店構えのお店はそこに存在した。ただ、オーダーストップが午後8時と早いので、通り過ぎるばかりでこれまで足を踏み入れたことはなかった。

 SUPER GTシリーズ第2戦の取材で出かけた週末、ニッサン/ニスモ のアンバサダーを務める柿元邦彦さんのインタビューをする場としてこのお店を指定され、初めて入店した。皇族も立ち寄ったことがあるという風格あるお店だったが、何より感じ入ったのはその気配りだった。

 柿元さんを待つうち料理の用意が始まったのだが、その箸袋に「NISSAN NISMO」の文字が入っているではないか。

 後ほど見えた柿元さんにお話をうかがうと、柿元さんがこの店に通ううち、いつしかお店が気を利かせてわざわざ箸袋を作り、柿元さんの来店時にはそれを使って料理を供するようになったのだという。日産モータースポーツと富士スピードウェイと御殿場の街の歴史を感じさせるエピソードである。ぼくなんか、まだまだだなあ。

 本当は妙見でイッパイ呑んでみたかったが仕事だったしその夜の宿は沼津だったのでクルマで移動する必要がありかなわなかった。

 富士の取材で宿泊するときは御殿場に泊まるのが近くて便利、夜にお酒を呑むのも楽しいけれど、SUPER GTとなると宿泊施設が軒並み満室になってしまい弱小フリーランスは宿を確保できない。そういうときは沼津、あるいは三島に泊まることにしているのだ。

 バブル時代は御殿場に宿泊施設が少なかったこともあって最初から沼津に宿を予約して通っていたので、ぼくにとって沼津はなじみ深い街である。おいしい店もたくさんある。ただしグルメ番組でよく扱われる沼津港界隈は夜が早いので、仕事が終わってから立ち回るには無理がある。結局立ち回るのは駅周辺の盛り場だ。

 取材を終えて沼津に到着したのは午後9時半。妙見でインタビューしながらおいしい鯖寿司やいなり寿司のご相伴にあずかり腹は足りていたので、先に沼津入りしていた大先輩A氏に連絡して軽くイッパイだけ呑んで寝ることにした。

 どこに行こうか迷ったのだが、フランクへ行くことにした。沼津には結構しゃれたオーセンティックバーがいくつもあって、「沼津はバーの街」と言われたりもするらしい。フランクは、沼津の中でもビクトリー、梅邑と並ぶ、全国的に有名な老舗である。ただしお店は盛り場から少し離れた、静かな住宅街/オフィス街の一角にぽつんとある。

 フランクの名物はらせん階段だ。レンガ作りの角張った建物のアーチの中にある重いドアを開けると、目の前にらせん階段が現れるので、上がっていけばカウンターとテーブル席があるメインフロアにたどりつく。そこは重厚な調度品に囲まれた落ち着く空間である。

 昔沼津に定宿があった頃はフランクにもビクトリーにも梅邑にも行ったけれど、御殿場泊まりがスタンダードになったここ何年かはご無沙汰していた。7、8年ぶりか。もっとご無沙汰か。

 おじさんとおばさんとおねえさんのバーテンダーが正装して迎えてくれる。みなさんとても物腰柔らかくフレンドリーである。「あれ? 御殿場もいいけどやっぱり沼津もいいよなあ、明日仕事がなければなあ」としみじみ思った。

 でもあくまでも仕事で来ているんだから、と自分に言い聞かせて、ウイスキーを4杯だけ呑んでホテルに帰りましたとさ。