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『パーフェクトワールド』瀬戸康史&中村ゆりの登場で、物語は四角関係に ドラマならではの脚色も

2019年05月08日 12:41  リアルサウンド

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 “諦め”と“犠牲”。事故に遭って以来、恋愛を一生しないと決めていた樹(松坂桃李)の心を動かし、想いを成就させたつぐみ(山本美月)。先週の改元に伴う放送休止をはさみ、7日に放送された火曜ドラマ『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)の第3話は、このドラマのもうひとつのスタートラインに立つエピソードであったといえよう。つぐみと樹の交際に立ちはだかる、つぐみの父・元久(松重豊)の反対。そして是枝(瀬戸康史)と長沢(中村ゆり)という、それぞれのライバルの存在の大きさがしっかりと描写されていく。


参考:松坂と山本のお出かけ


 原作では元久の存在こそが物語を左右させる役割を果たしているだけに、おそらくドラマでも同様の展開が待ち受けているのであろう。今回のエピソードだけではまだ元久の病気について軽く触れられるだけにとどまり、娘への想いがはっきりと語られないものの、さすがは松重豊が演じているだけあって、些細な表情ひとつで何かを隠している素ぶりをみせてくれる。もっとも、樹が子供のボールを取ろうとして転倒するシーンや、足の指をぶつけるシーンなど、つぐみが樹と一緒にいることで自身に大きな責任が伴うことを感じる要素がひとつひとつ丁寧に原作から汲み取られている中でも、ドラマならではの改変や脚色がそこかしこに見受けられる。


 そのひとつが、つぐみの妹・しおり(岡崎紗絵)という原作にはいないドラマのオリジナルキャラクターであろう。父親が娘を溺愛するという、いたってシンプルな家族ドラマとしての要素をより強化するためにつぐみと対比になるしおり。同時に、障がい者との恋愛という部分においてもまったく異なる考え方を持つ人物として描かれている。“レンタル彼女”のバイトとして、晴人(松村北斗)と出会うくだりで、彼が義足であることを知った時のあからさまな表情。原作で晴人の幼なじみ兼恋人として登場していた舞花を土台にしたキャラクターのようにも思えるが、つぐみの葛藤をより浮き彫りにさせる点で舞花と共通していながらも、真逆のアプローチであるといえるだろう。


 そして、今回のエピソードでライバルとしての本領を発揮しはじめた是枝の描かれ方も原作から脚色された極めて重要な部分だ。原作での彼は高校時代につぐみにちょっかいを出す程度の存在で、卒業時に告白のタイミングを逃し、数年の時を経て樹とともに帰省していたつぐみと偶然再会することから、2人の仲に割って入ってくるようになる。つまり、原作ではつぐみ1人を軸に樹と是枝、2つの“運命的な再会”が物語を動かしていたわけだが、ドラマ版で是枝はつぐみの幼なじみ。これはつぐみ視点での樹の対比から、樹視点での長沢の対比になるという意味合いが感じ取れる。


 つぐみと樹、そして是枝と長沢という4人の四角関係。“運命的な再会”はつぐみと樹に留めることで際立たせ、それぞれにずっと見守ってきた異性が近くにいるということで、越えられない大きな壁を2人の主人公に感じさせる。もっとも、女性読者層に偏りがちな少女漫画である原作と、性別を問わないテレビドラマというメディアの違いもあるのだろう。つぐみに何かあればすぐに駆けつけることができる是枝と、樹にとって“生きる希望をくれた恩人”である長沢。2人のライバルの存在があってこそ、本作のラブストーリーというジャンルの魅力が高まることはいうまでもない。  (文=久保田和馬)