メルセデスF1チームのストラテジスト、ジェームズ・ボウルズは、アゼルバイジャンGP予選での“ダミー・スタート戦略”はうまくいったものの、一歩間違えればルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスは最後のアタックを失敗する危険があったと明かした。
バクーではスリップストリームを最適な形で利用することが予選のカギになるとみなされていた。メルセデスはボッタスとハミルトンの最後のランで、彼らを隊列の先頭にしないための策を講じたという。
これが成功し、ボッタスがポールポジション、ハミルトンが2番手を獲得。ふたりはそのまま決勝でも1-2フィニッシュを飾った。
「この数戦、(予選の)ピットレーンで“メキシカン・スタンドオフ”(にらみ合いの膠着状態)のような状態が発生している」とボウルズは、メルセデスのインタビューにおいて語った。
「皆がエンジンを始動しつつ、相手の出方をうかがっている。誰が最初にコースに出るのか? 最初に出た者は、他のマシンを先導することになり、トウを与える結果になる」
「上海で我々は(予選最後のランに出るのを)かなり遅らせた。皆がトウを得ようとしてぎりぎりまでコースインを待ち、その結果、制限時間内にアタックラップをスタートできなかった者もいる」
「バクーでは、トウを得られるかどうかが、ポールをつかむカギになり得ると確信していた」
「そのため我々はあるプランを実行することを決めた。他のマシンをコースインさせるために、2台を少し早めにガレージから出発させた。それは狙いどおりにいった。その後、自分たちの2台にはピットレーン出口手前で左側に寄ってスタート練習をさせた。その間に他のマシンが通り過ぎていった。そうすることで、隊列の先頭にならずに済んだのだ」
「ベッテルが集団をリードし、トウを得ることができなかった。我々のマシンは他のマシンの後ろを走り、2台ともトウを利用することができた」
「だが、この行動には非常に大きなリスクがあった。ラインを越えてアタックラップに入ったのは、チェッカーフラッグが振られるほんの数秒前だった」
こういった戦略をうまく機能させるには、綿密な準備が必要だったとボウルズは語る。
「事前の話し合いなしには実行できない。特に、ドライバーふたりにプランについて理解させ、受け入れさせ、同意させる必要があるのだ。朝の段階でドライバーたちに話をし、予選で何をし、何をしないかについて完全に理解させた。その後、コースに出る前にも、彼らが自分のやるべきことを正確に理解しているかどうかを確認するために話をした。ふたりとも素晴らしい仕事をしてくれた」