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『集団左遷!!』ついに明かされたスパイの正体 福山雅治たちを支える家族の絆が描かれる

2019年05月06日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 “令和最初の下剋上”をうたう日曜劇場『集団左遷!!』(TBS系)の第3話が5月5日に放送された。


参考:『集団左遷!!』福山雅治の“必死すぎる中年男性”姿は必見! イメージを一新する“普通”ぶり


 廃店撤回に向けて1カ月目から7億円の業績アップという幸先の良いスタートを切った片岡洋(福山雅治)たちの前に突如現れたのは、三友銀行常務取締役・横山輝生(三上博史)。「大いに期待しています」という言葉とは裏腹に本部の嫌がらせは目に見えて激しさを増していく。すでに廃店が決定した小平支店の残務整理に蒲田支店が駆り出される。それだけでなく、廃店候補である蒲田支店の大口顧客は本部が一括管理することになった。


 役員会で異論をはさもうとする頭取・藤田秀樹(市村正親)を会長の郷田成道(津嘉山正種)がはねつける場面がリアルだ。社内の派閥争いとパワーバランスによってサラリーマンの運命など簡単に左右されてしまう。血相を変えて本部の行員につかみかかる滝川晃司(神木隆之介)や木田美恵子(中村アン)たちは、手足をもがれながらも目標達成にまい進する。


 第3話の舞台となるのは急成長中のエステサロン「田口るみビューティーサロン」。担当は副支店長の真山徹(香川照之)だ。社長の田口るみを演じるのは浅野ゆう子。シャンパンタワーを横にホストをはべらせる絵に思わず笑ってしまったが、その夫・孝一をアニメ『名探偵コナン』で知られるベテラン声優・高木渉が演じている。近年はドラマにも活躍の場を広げており、敏腕社長を支える専務役を好演していた。


 「がんばらせていただきます!」と二つ返事で総額30億円の融資を引き受けようとする片岡だったが、真山は首を縦に振らない。前月比25%という急成長ぶりに不審感を抱く真山は、片岡に命じられてしぶしぶビューティーサロンの信用調査を行うことになる。


 廃店をめぐる銀行員の奮闘がテーマの『集団左遷!!』には、主人公を支える家族や友人の姿も丁寧に描かれている。真山が毎日定時に退社する理由は、入院中の妻・有里(西田尚美)を見舞うためだった。「無理してない?」と真山を気遣う有里。どんなときも片岡を笑顔で見守る妻・かおり(八木亜希子)は、疲れている夫に「アイス食べる?」とさりげなく声をかける。支えてくれる存在がクローズアップされることで、リストラが一人ひとりにとって重大な問題であることを再認識させられる。そんな家族の存在が第3話の鍵を握る。


 片岡から渡されたビューティーパスポートを使ってビューティーサロンを訪れたかおりだったが、来月まで予約が埋まっていると断られる。一方、滝川からスパイは真山ではないかと言われた片岡は、独自にビューティーサロンの調査をはじめた。その結果明らかになったのは、客数を大幅に超えるビューティーパスポートの過剰販売。そのことを知った真山は過剰販売をやめるよう田口夫妻に訴えていたのだ。


 しかし時すでに遅く、過剰販売を聞きつけたマスコミがビューティーサロンに押し寄せていた。もはや融資の話もこれまでかと思われたが、「でもまだ、僕はあきらめたくないんですよ」と片岡。なんというあきらめの悪さ! 片岡の底知れないポジティヴさにただただ圧倒される。そして、ここに来てついに真山も「私にひとつだけ考えがあります」と重い腰を上げる。それはビューティーサロンの再建計画を条件とする15億円の融資案だった。


 真山が“がんばろう”と思った理由。それは有里の言葉だった。「退院したら仕事をいっぱいしてもらえるように張り切って待つ」という妻の言葉に、「退院できたときにいまの仕事をなくすわけにはいかない」と返す真山。


 これまでの放送から、ガンバリズム一辺倒のようにも見える『集団左遷!!』だが、“守るべきものがあるからがんばることができる”という人間として当たり前の事実をちゃんと描いている点は見逃せない。すでにおなじみのシーンとなった河川敷を駆ける片岡の横には、新たに真山が加わった。


 ラストではついにスパイの正体が明かされた。なぜ? なんのために? コメディータッチから一転してサスペンスの様相を帯びてきた『集団左遷!!』。蒲田支店と片岡たちの行方から目が離せない。


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京の片すみで音楽やドラマについての文章を書いています。