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アンチラグ改善で開幕戦の劣勢から巻き返したレクサス陣営。「それでもまだ負けている」【第2戦富士GT500決勝《あと読み》】

2019年05月05日 15:31  AUTOSPORT web

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開幕戦では低迷したが、得意の富士で予選、決勝ともにライバルと互角以上の戦いを見せたレクサス陣営
開幕戦の岡山では予選でQ2に進出できたのはわずか1台だったレクサス陣営。今シーズンの戦いが危ぶまれる第1戦の内容となったが、今回の第2戦富士では予選で3台がQ1を突破し、決勝では見事ZENT CERUMO LC500が優勝を果たす結果となった。シャシー、エンジンとシーズン中の開発ができない現在のGT500で、レクサス陣営はいかにしてパフォーマンスを上げることができたのか。

 実はレクサス陣営は開幕戦ではエンジンに不安を抱えていた。開幕前のオフテストで開発中のエンジンが立て続けに壊れてしまったため、シーズン中に2基までと定められているうちの前半の一基を今季型のエンジンではなく、昨年型のエンジンで戦うことにしたのだ。TRDのエンジン担当、岡見崇弘エンジニアが話す。

「オフシーズン、原因不明のトラブルがエンジンにありました。何が原因が分からなかったので、エンジンの燃焼が安定しないところがありまして、性能を抑えて使用しているところがありました。アンチラグをほとんど機能させずに運用していたんです」と岡見エンジニア。

 アンチラグはアクセルオン、オフ時のターボラグを防ぐシステムだが、アンチラグが使えないとタービンの回転数が下がってしまい、踏み始めのトルクが得られず、ドライバビリティが悪くなってしまう。

 つまり、『アクセルを踏んでもトルクが来なくて、踏んで待っていると突然トルクが来るという状況だったのですごく乗りづらかった』というのが、開幕戦の時のレクサス陣営のドライバーの感想だったのだ。

 当然、その問題の解決には当たっていたが、開幕戦ではその対策ができなかった。TRDの岡見エンジニアが話す。

「原因が分からなくて、年間2基しか使用できないエンジンを壊す訳にもいかないので、今年用にいろいろ開発してきたものを一旦、止めていたんです。その中で原因をいろいろ検証して、いろいろな不具合対策をしている中で、アンチラグのマッピングですごくいいものをベンチテストで見つけたんです」

 ホモロゲーションを通して封印したエンジン本体は開発できず、今季用の開発を施したエンジンはシーズン2基目での投入となるが、制御系は変えることができる。だが、それでも第1戦岡山には間に合わず、岡山後の鈴鹿タイヤテストの際に実装して手応えを得ることができ、そこから今回の富士に向けて合わせ込んできたという。

■対策した効果が確認できたと共に、MOTUL AUTECH GT-Rとの戦いで見えた直線速度の差

「アンチラグが変わって、回転が落ちたところからのドライバビリティは良くなりましたね」と話すのはZENT CERUMO LC500の石浦宏明。立川祐路も今回のエンジンの進化を実感していた。

「エンジンは多少、バージョンアップというか、アンチラグに加えてパワーも少しは出るようになっているので、その効果はあったと思います」と立川。

 そのTRD開発陣の努力を受け、ZENT CERUMO LC500が見事優勝という形で結果を出したが、それでもまだまだ、安堵できる状況ではないようだ。石浦が話す。

「開幕戦のショックから、みんながすごく危機感を持って、やれるだけのことをやった成果がもちろん、優勝につながっているんですけど、まだ、負けている部分がたくさんあることが見えたレースでもあったと思います。得意としている富士で、なんとか勝てたというところなので、他のコースに行ってちゃんと戦うためには、もっともっと開発を続ける必要があると思っています。チャンピオンを狙うにはもっともっとやらないと届かないと思います」と石浦。

 立川も「元からこの富士は他のサーキットよりも戦えるなという感じはあった。レクサスとしては得意なサーキットなので、チャンスだとは思っていました。逆に、この富士で勝てないようなら他のコースではもっとダメ。ただ、今日のレースでも、やっぱりGT-Rとは最終コーナーの立ち上がりからストレートで負けている部分がある。まあそれでも、開幕の時よりは良くなっていますよね」と優勝後にも冷静に状況を分析していた。

 TRD岡見エンジニアも「エンジンのレスポンスがいいとドライバーも気持ちよく乗れる。アンチラグを改善したところで、いきなり何秒も速くなるわけではないですけど、ドライバーが気持ちよく乗れることで結果的に速くなっているのかなと思います。そういったドライバーの気持ちの部分は大きいと思います」と間接的な効果を強調する。

 それでも、レクサス陣営のエンジン面ではまだまだ課題も残っており、その課題は裏を返せば今後の伸びしろになるとも言える。

「トラブルはまだ全部が解できているわけではなくて、今回はそのアンチラグの部分が分かって、前よりもいいものが発見できて、まだ原因がわからなくて止めているものもあるので、エンジン本体は触れないですけど、もう少し、ラップタイム的には向上できるかなと思っています」とTRD岡見エンジニア。

 開幕戦の劣勢から見事、逆転を果たしたレクサス陣営。しかし、本当の戦いはこれからの富士以外のサーキットで試されることになりそうだ。