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混戦を制したGAINER TANAX GT-Rのドライバー力と展開の妙【GT300決勝《あと読み》】

2019年05月05日 15:11  AUTOSPORT web

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GAINER TANAX GT-R/2019スーパーGT第2戦富士
事前の天気予報にこそ言及があったものの、その雷雨は多くのチームの予想よりも早くやってきた。まるで第1戦岡山を思い出させるような大粒の雨に、多くのファンを集めたスーパーGT第2戦富士はたまらず赤旗中断となる荒れた序盤だったが、この乱戦を制したのはGAINER TANAX GT-Rだった。その勝因はどこにあったのか。

■GAINER TANAX GT-Rのリードを築いたふたつの勝因
 安田裕信がスタートドライバーを務めたGAINER TANAX GT-Rは、セーフティカーが退去した3周目でGT300マザーシャシーの2台を一気にパス。4番手から一気に2番手へ浮上して、ポールポジションのリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rに迫った。

 このときのコンディションは、まだ路面がしっとりと濡れている状態。“チョイ濡れ”を大得意とするダンロップを履くGAINER TANAX GT-Rにとっては、まさに絶好のコンディションだったのだ。また、JAF-GTはタイヤの発動に時間がかかることも大きい。

 ただ、その後雨量が強くなったところで一気に速さを増してきたのは、ブリヂストンを履くマシンたちだ。特に、今回車両特性も合っていたと思われるニッサンGT-RニスモGT3勢、ホンダNSX GT3勢のうち、ARTA NSX GT3は猛烈な追い上げを披露してきた。

「序盤はダンロップに合っていましたが、セーフティカーが入る直前はブリヂストン勢が一気に速くなってきた。このままいくとブリヂストンかな……という感じはありました」というのはGAINER TANAX GT-Rの福田洋介エンジニアだ。

 ただここであまりの雨量にセーフティカー導入となり、さらに赤旗中断となってしまった。結果的に、この中断もGAINER TANAX GT-Rには味方する。マージンはなくなったが、ふたたびコース上の水量が減り、GAINER TANAX GT-Rに合ったコンディションになったからだ。

 レース再開後、路面は急速に乾いていくことになるが、ここでもブリヂストン装着車が追い上げをみせはじめる。特に素晴らしいスピードを披露したのは、蒲生尚弥が駆るLEON PYRAMID AMG。Modulo KENWOOD NSX GT3を先頭とする集団を一気にかわしてきたが、「100Rでアウトからいかれるなんて」とドライブしていた大津弘樹も驚くスピードだった。

 31周目に、ついにLEON PYRAMID AMGはGAINER TANAX GT-Rをもかわしていくことになるのだが、この段階で急速に路面は乾きつつあった。このチェンジオーバーのタイミングを読み切ったのが、GAINER TANAX GT-Rの安田裕信だ。実は福田エンジニアによれば、交換するタイミングは「コンディションをいちばん分かっているのはドライバーですから」と安田の経験に任せていたという。

「安田選手のスリックタイヤへの切り替えるタイミングがどストライクでしたね」と福田エンジニアは語る。さらに交代した平中克幸が完全に乾ききらないなか、アウトラップをプッシュ。これでタイムを稼いだGAINER TANAX GT-Rは、大きなマージンを築くことになった。「このふたつが勝因ですね」と福田エンジニアは語った。

■終盤の思わぬARTA NSX GT3の急接近の理由

 これでリードを築いたGAINER TANAX GT-Rだが、終盤、ARTA NSX GT3の接近を許すことになった。ファイナルラップ、テール・トゥ・ノーズまで迫られることになったが、これはある原因があったのだとか。

「実はセカンドスティントのときに、実際のタイヤの内圧と、車内表示の内圧の差異が出ていて、実際よりも低く表示されていたんです。ドライバーに無線で聞いたところ、低すぎる内圧でした。バーストしてしまってはまずいですし、平中選手のスティントの終盤、振動も出ていた」と福田エンジニアは明かした。

「そこで、最終スティントは内圧を上げていったんです。ただその結果内圧が高すぎて、安田選手はセクター3がかなりロスすることになってしまったんです」

 結果的になんとか優勝を遂げることはできたが、「実際は分かりませんが、それがなければ楽になっていたかもしれません」という。ただ、今回GAINERがみせたドライバーふたりの好判断とその走り、そしてミスなく作業をこなしたチームの力は、勝者にふさわしいものだっただろう。

「これはチーム力の勝利では?」と聞くと、「僕は運だと思っていますけど(笑)。でもドライバーふたりが頑張ってくれたおかげですね」と福田エンジニアは笑った。

「今回勝てたことは大きいですが、まだ55号車がランキング首位ですし、ライバル勢が苦戦したことも大きいとは思います。基本的にストレートが速いマシンがシーズンは強いです」とまだまだシリーズに向けては楽観視していない様子。

 ただ「今回のように天候が荒れてくれればまだチャンスはあるかもしれません」とも語った。近年のGT300はタイヤのパフォーマンスや性能調整に隠されがちだが、こういった長丁場で荒れた展開ほど、最後は強いドライバーとチームが勝つのだ、と教えてくれた気がした。