F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は2019年F1第4戦アゼルバイジャンGPだ。
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☆ アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)
予選8番手、決勝12位
フル参戦・4戦目に自己アピール。10グリッドダウンが決まっていても全力アタック、予選で8番手タイムを出しきった。セクター3でトーイング(前方を走るマシンの真後ろにつくことで、空気抵抗を減らし加速、最高速を上げること/スリップストリーム)を活用し最速タイム。
予選で先輩であるライコネンに初めて先行した。そして17番手グリッドから混戦を潜り抜けた“5位アップ”となったレースに〇を。
☆ ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)
予選19番手、決勝15位
いきなり“地雷”を踏んだようなあの瞬間にも冷静だった。突然の“マンホール・クラッシュ”、金曜フリー走行1回目でまた重大案件が発生。
初年度にもピットレーン入口の側溝の蓋が外れ、バルテリ・ボッタスがダメージを負っている。そうウイリアムズ時代のボッタスとラッセルで二度目なのだ。チームはロバート・クビサの予選クラッシュにもガンバリ抜き、ふたりとも2周遅れで走破。完走率100%、古豪せめてもの意地を――。
☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
予選3番手、決勝3位
切れ味がもうひとつ……。ターンイン時の安定したリヤ挙動から素早いアクセルONでコーナーを抜ける、そのリズムが整わないようだ。予選アタックはやや慎重な走り、決勝ではリヤタイヤのグレーニングをなんとかカバー。
「消極的だ」とイタリアン・メディアから批判されてもめげることはない、まだ17戦あるのだから。
☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
予選2番手、決勝2位
うーん王者ももうひとつ……。第2戦からここまでセッション・トップがいちどもない。スタート直後のコーナーでボッタスと並走も引いて2番手に。
「自分はフレンドリーすぎた」と言うが攻めこむ力がないのを感じたからだろう。今回は実直に1-2フィニッシュをめざしたチームプレイヤー。
☆☆ ピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)
予選15番手、決勝リタイア
車重検査違反には重い罰則が科せられる。ピットレーンスタートの判例が2015年モナコGPのニコ・ロズベルグ、2016年バーレーンGPのケビン・マグヌッセンだ。
FP2最後にオフィシャルの指示に応じなかったのは単純に言って、視野に入らず通過してしまったから。このミスを受けとめ、FP3でロングランペースを徹底チェック(20番手)。そして予選Q1ではソフトタイヤでアタック、この切り替えは難しいがQ1での1番手タイムは立派。着実にRB15のドライビングをマスターしつつある。
☆☆☆ ランド・ノリス(マクラーレン)
予選7番手、決勝8位
セクター1=7番手、セクター2=9番手、セクター3=16番手。それでも予選7番手にきた。コントロールライン速度は最下位の320KMH台、トーイング効果もなくこのポジションを得た。
レースではストレートが伸びないマシンでぎりぎりのラインワーク、何度もウオールをこすりながら決勝8位へ。進化を続ける最年少ルーキー。
☆☆☆ セルジオ・ペレス(レーシングポイント)
予選5番手、決勝6位
どこかに『バクーの近道』を見つけているとしか思えない。2度の表彰台3位が偶然ではないことを今年のマシンで実証した。
旧市街セクター2を抜けてからのセクター3(2km以上のストレート)に独自の“マジックライン(?)”があるのかも。決勝でマクラーレン勢に追いまわされてもそこで逃げ、今季ベスト6位入賞。一気にコンストラクターズランキングを8位からトップ5へ上げた。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
予選4番手、決勝4位
予選Q2をトップでクリア。初PP可能性を個人的にも抱いたが0.574秒届かず予選4番手。惜しまれるのはセクター3だ。単独走行でトーイング効果が望めず、この区間のタイムは13番手。あらためて言うと、初めてホンダ製パワーユニット(PU/エンジン)は、Q1とQ2でトップにつけるレベルまできた。
レースペースも相対的に高まり、バージョンアップ効果を確認、これがスペインGP→モナコGP(春決戦)につながると思える。
☆☆☆ キミ・ライコネン(アルファロメオ)
予選9番手、決勝10位
フロントウイングの違反によるペナルティが正式に告知されたのは、決勝日の午後14時14分<ドキュメントNO・35>だった。ライコネンのピットレーンスタートはあまり記憶になく、2015年メキシコGPでPU関連ペナルティの19番手グリッドを思い出した。
そんな事態にも動じずにライコネンは、6周目にさっさとミディアムタイヤに換え、最長44周の“オーバーテイク戦”に集中。どこからでも、何があっても、やるべきことをやってのけるレースさばき。
トップ2チーム・メンバー4人とキミだけが4戦入賞中だ。今後のエアロアップデートしだいでさらなる上位戦線へ。それをじっと待ちかまえているベテラン……。
☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
予選11番手、決勝7位
マクラーレンにようやく春が巡って来た。ちょうど1年ぶりに“ダブル入賞”、エースとしてフェルナンド・アロンソのようにチームを引っ張り7位入賞。ここまでの不運を一掃する本来の走りをつらぬいた。
母国スペインGPを前に好走し、バルセロナに“ピーキング”を合わせこむサインツ。今年カリスマ不在の第5戦スペインGP、この国のF1人気を支えていくのは彼にほかならない。
☆☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
予選PP、決勝1位
パルクフェルメでコクピットを出るとマシンの上に堂々と立ち上がった。勝っても感情をあまり露わにしなかったのに珍しいシーン。バクー雪辱戦に完勝。
ハミルトンとの“マッチレース”を制した達成感がそうさせた。この5勝目は格別だ。彼自身にとって<2勝分>の価値がある――。