『衝撃のトップ4独占。GT300のタイヤコンペティションは一強時代に!?』
スーパーGT第1戦岡山の予選後、このタイトルの記事をこのコーナーに掲載した後、多くのチームやタイヤメーカーの関係者の皆さんから、「読んだよ」というお声をいただいた。多くの方にご覧いただいていることに恐縮するばかりだが、迎えた第2戦富士の公式予選は、ヨコハマタイヤ装着車が予選でトップ3を占める結果となった。タイヤコンペティションを望んだ筆者にとっては、まずは嬉しい結果だ。
その「読んだよ」という声をかけていただいた方のひとりが、ヨコハマを履くHOPPY 86 MCの土屋武士監督。ただその後、「待ってろBS!」と今回の富士戦に向け、“タマ”を込めていることを明かした。この“タマ”とは、公式テストで作られ、実戦投入はこの第2戦からというもので、ヨコハマによれば「タイヤの構造を変えてきたタイヤ」だという。
「今までの発想とは逆方向の考え方で使えるタイヤです。年初からのミーティングで課題としていたものです」とのこと。
実はもう1種類の“タマ”もあったと土屋監督は言うが、これは公式練習の段階で今回の使用は断念。「負けているならば、やりたいものを投入する。リスクはあるから普通はできないけど、お互いの信頼関係がなければできないもの」だったという。「もしこれが当たっていたら、ポールは間違いなかったかも」とのことだ。
とはいえその結果、「良かったですね。GT-Rが速いのは分かっていましたし、レースでは心配がないタイヤ。予選順位は気にしていませんでしたけど」とHOPPY 86 MCは2番手を獲得した。
そしてポールは、土屋監督の言うGT-Rとなった。リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rは今季からの参戦チームだが、エンジニアリングの力は非常に高い。そして何より、ドライバーふたりの快走がモノを言ったと言えるだろう。平峰一貴は今さら説明不要のスピードだが、今季から日本で活動するサッシャ・フェネストラズは、全日本F3選手権でもライバルが戦々恐々とする速さを証明した。
また、今回の富士でニッサンGT-RニスモGT3勢がかなり合っているのは、予選トップ5のうち3台を占めていることからも分かる。そのなかで、リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rは「公式テストの結果から、コンパウンドがいちばん合うものを持ち込んでいます。思っていたよりもソフト側のゴムが合っていたと思っています」とヨコハマが気温・路温にフィットしていたこともポールポジションに繋がっているだろう。予選5番手のRUNUP RIVAUX GT-Rも同様だ。
では決勝レースもヨコハマ勢が上位を占めていくのだろうか……? ただ、今回ブリヂストン勢は予選では決勝を見すえたハード寄りのタイヤを選んでいるのではと言われている。「今までのレース結果を見てもレースでの強さは驚異的です」とヨコハマも警戒する。
しかし「レースでは我々も十分戦えると考えています」とのことで、今回はダンロップも含め白熱のレースが展開されそうだ。
ただレースはタイヤの激しい戦いに加えて、チーム力と戦略が問われる戦いになりそう。「決勝はブリヂストン勢が強いと思っていて、LEON PYRAMID AMGのペースはすごく速いし、ARTA NSX GT3やK-tunes RC F GT3も前に来ると思う」と警戒するのは予選6番手のグッドスマイル 初音ミク AMGの河野高男エンジニア。
「ヨコハマが予選で前にきたからといって、そんなに浮かれている場合ではないと思います。始まってみないと分からないですけどね。どのタイミングでピットに入れるのかも難しい選択になりますし、戦略でいろいろなイメージができます」
そして、各チームが気にしているのは、5月4日の決勝日のレース中、雨が降るのではないかという天気予報がでていることだ。予報によってまちまちだが、15時頃に降るという予報もあれば、16時頃というものも。
「2回のピットストップ、ドライバーが2/3以上走ってはいけないルールがあるので、いつ雨が降るか。どうなるは分からない」と河野エンジニアは言う。タイミングはもちろんだが雨量によってもまた戦略、そして順位は変わる。特に今回は500kmという長丁場。さらに戦略は重要だ。
僅差のGT300だけに、たしかに戦略はかなり重要になりそう。タイヤ、クルマ、ドライバー、戦略、そして天候。すべてがかみ合ったものが、令和最初のGT300ウイナーになるはずだ。