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静かな朝カフェに響く「英語の音読」 迷惑客を退店させたい

2019年05月04日 10:01  弁護士ドットコム

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出勤前、会社近くのカフェで一息入れるのが会社員J子さんのひそかな楽しみだ。ところが、行きつけの店に珍客が訪れるようになったことで、最近は足が遠のきがちだという。


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J子さんは珍客について、こう説明する。「見かけはごく普通の30代のサラリーマン風です。パソコンを開いて、イヤホンをしているので、世にあふれた意識高い系でした。ところが途中から、隣のテーブルにもはっきりと聞こえる声で英語の音読を始めたんです」。



両隣の客は迷惑そうに、なんども珍客に冷たい視線を向けるが、一向に構う様子はなかったという。さらに、この日だけでなく、毎日のように現れるようになったため、「お店を変えることにしました」と、J子さんはため息をつく。



店側は、このような迷惑客を追い出すことはできないのか。大村真司弁護士に聞いた。



●「雰囲気を重視する店では、退去を求められる」可能性

ーー店と客はどのような「契約」を結んだと考えられるのでしょうか



カフェでの飲食も契約には違いないのですが、契約書を作成することなど絶対にありませんし、細かい約款を提示することも難しいでしょう。このため、契約上はどうなるのか、という点が曖昧になりがちです。



まず、カフェでの契約というのは、主には飲食物の提供を受けるものです。同時に、飲食をする席、スペースを提供する契約でもあり、これらが複雑に絡み合っています。



このことからすれば、想定される飲食の仕方、スペースの利用の仕方を著しく逸脱する場合には、店としては退去を求めることができると考えられます。



ーー英語の音読は、「著しく逸脱する」といえるのでしょうか



英語の音読は微妙なところだと思います。



カフェでの雑談は基本的に許されているでしょうし、多くの場合は携帯電話の利用も制限されていないと思います。そんな中で、英語の音読に限ってダメ、というのは無理があるように思います。



ただ、雰囲気を重視し、大声でしゃべった場合には注意されたり退去を促されるのが前提のカフェでは、そういう空間の提供が契約の内容になっていると考えられますから、退去を求められるでしょう。



●想定の利用方法から「著しく逸脱している」か否か

ーー判断は難しいのですね



多少業態が違いますが、ネットカフェの中にはおしゃべり、携帯などを禁止しており、こうした店では音読をしたら、当然退去を求められますよね。



結局、店や顧客が想定する利用の仕方から著しく逸脱しているといえるかどうか、という曖昧な基準で判断せざるを得ないと思います。



過去に弁護士ドットコムニュースで、女性食べ放題の相席居酒屋でたくさん食べる人の退去を求めることが出来るのか解説したことがあります(https://www.bengo4.com/c_8/n_3688/)。「食べ放題」という明確に店が認めた条件について女性の飲食の仕方が店の想定外だというだけの理由で退去を求めるというものでしたので、難しいと断定できました。



しかし、今回の問題では、そもそも契約内容が曖昧なため、ケースバイケースで結論が異なりうると思います。



(弁護士ドットコムニュース)




【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。日弁連消費者問題対策委員会副委員長、広島弁護士会 非弁・業務広告調査委員会委員長、消費者委員会委員、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員

事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com