2019年05月04日 10:01 弁護士ドットコム
勤務先の風俗店にやってくる男性客の妻から、慰謝料請求をされているーー。風俗で勤務している女性が、子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板に、「シングル風俗勤務、客の嫁から慰謝料請求されてる」と題したスレッドを立てました(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=2933692 )。
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女性によると、トラブルになった男性は、店に週4回ほど通っているそうです。昼に一緒にご飯を食べに行くこともありますが、その際金銭の支払いがあり、「私は割り切りで、不倫をしているつもりはない」と話しています。
女性は「客の嫁の勘違いですが、慰謝料を払うべきなのか」と疑問に思っています。夫の風俗通いは「不貞行為」にあたるのでしょうか。長瀬佑志弁護士に聞きました。
どこからが「不貞行為」にあたりますか。
「『不貞行為』とは、(1)性交又は性交類似行為、(2)同棲、(3)1、2のほか、配偶者の立場に置かれた人を基準として、夫婦間の婚姻を破綻に至らせる可能性のある異性との交流・接触をいうと解釈されています(判例タイムズ1278号45頁)」
風俗通いのケースでは、どうなりますか。
「肉体関係を伴う性的サービスや、性交渉に類似したサービスの提供があれば(1)に該当します。また、夫側が風俗通いに熱を上げて、別の女性と頻繁に交際することを継続するのであれば、(3)に該当することも考えられます」
妻が離婚を求めた場合、「風俗通い」は離婚原因として認められるのでしょうか。
「夫が風俗店を利用した際、性交渉まで及んだのであれば『不貞行為』(民法770条1項1号)に該当します。
仮に性交まで及ばなかったとしても、性交類似行為を繰り返すなど、度を超えた交際であれば、離婚原因の一つである『その他婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)に該当するとも考えられます」
風俗店を利用した場合、全てが不貞行為に当たると考えられるのですか。
「そうとも限りません。夫が風俗店を利用したことは不貞行為にあたらないと判断したとも思われる裁判例があります(平成25年3月22日東京地裁判決)。
また、クラブのママがいわゆる『枕営業』として顧客と性交渉を繰り返したものの、妻との関係では不法行為を構成しないと判断した裁判例もあります(平成26年4月14日東京地裁判決)」
結局のところ、風俗で働く女性に対する慰謝料請求が認められる可能性はあるのでしょうか。
「これまで説明してきたように、不貞行為に当たるケースもあれば、当たらないとするケースもあります。風俗サービスや風俗嬢との交際状況、夫婦に与えた影響などによって、判断が分かれるといえます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所水戸支所
事務所URL:https://nagasesogo.com