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PC不要のVRヘッドセット「Oculus Quest」予約開始 高まる期待も進化の余地あり?

2019年05月03日 08:51  リアルサウンド

リアルサウンド

 SNS最大手Facebookは、4月30日から5月1日にかけて毎年恒例の開発者会議「F8」を開催した。そのイベント初日において、同社傘下のVRヘッドセットメーカーであるOculusが新しい主力製品を発表した。この製品は、VRカルチャーの新時代を切り開くものとして期待されている。


(参考:Facebook、独自AIアシスタントを開発中と判明 Oculus製品にも実装か?


■新時代のVRヘッドセット
 Oculus Questは以前より開発中であることが知られており、大方の予想通りFacebookの重要イベントにおいて満を持して登場した。同ヘッドセットの特徴は「フルスペックのオールインワン型VRヘッドセット」であることだ。オールインワン型VRヘッドセットという製品カテゴリー自体には、すでに昨年リリースされた「Oculus Go」のような先行製品がある。同ヘッドセットが同カテゴリーの製品と一線を画しているのは、ついにハイエンド型VRヘッドセットの仕様を実現したことにある。


 Oculus GoはPCを必要としないで単独で使用可能なのだが、全身のトラッキングには対応していなかった。対してOculus Questは、ついにPCと外部センサーなしで全身トラッキングに対応したのだ。従来の全身トラッキングは、ハイエンド型VRヘッドセット「Oculus Rift」のようにVRヘッドセット本体のほかにPCと外部センサーが必要であった。全身トラッキングに対応したことにより、Oculus QuestではOculus Riftでも使われる腕の動きをトラッキングする専用コントローラ「Oculus Touch」を利用することができる。


 Oculus Questの予約はすでにOculus公式サイトやAmazonで受け付けており、価格は64GBモデルが49,800円、128GBモデルが62,800円となっている。Oculus Riftの後継モデル「Oculus Rift S」の価格も49,800円であるものの、別途PCが必要になることを考えるとOculus Questが破格であることがわかる。ちなみに、予約した場合には5月21日までには製品が届くようだ。


■対応コンテンツも豊富
 Oculus Questの発表に先立つ先月24日、Oculus社は同ヘッドセットでプレイできるゲームに関する公式ブログ記事を公開した。その記事によれば、5月の時点で同ヘッドセットのリリースのために開発された完全新作は少ないものも、いくつかのOculus Rift対応ゲームが同ヘッドセットにも対応することになる。


 完全新作として開発中なのが「Ballista」だ。同ゲームは「プレイヤーであるあなたは、マジックミラー、ユニコーンの角から作ったワンド、そして伝説のスリングを使って王国を悪の軍勢から守ります」と説明されていることから、ファンタジーアクションゲームであると推測される。同ゲームのリリース時期は不明だがOculus Rift S対応版もリリースする、とのこと。


 VR空間にユーザが集うVRソーシャルコンテンツも、Oculus Questに対応する。具体的にはOculus Rift対応の古参ソーシャルコンテンツのひとつである「Rec Room」、同じく以前より親しまれている「VRChat」が対応する。VRChatを開発するスタジオのCEOであるGraham Gaylor氏は、PCにつながれることなく手軽にVR空間に飛び込むことができるOculus Questは、ソーシャルなVR体験の没入感を高めるだろう、とコメントしている。


 そのほかのOculus Quest対応ゲームは、Oculus社が3月に公開した動画から推測することができる。この動画を見ると、Oculus Riftで大ヒットした「SUPERHOT VR」「Robo Recall」「Beat Saber」といったゲームが確認できる。


■まだ進化の余地はある
 Oculus Questに関しては多数の海外メディアがレビュー記事を公開し、そのどれもが高評価を伝えている。エンタメ系メディア『Polygon』のレビュー記事は、同ヘッドセットの内部設計を称賛している。同ヘッドセットの演算処理を司るチップには、Qualcomm製のSnapdragon 835が実装されている。このチップはGoogleが開発した最新スマホGoogle Pixel 2にも実装されているのだが、VRコンテンツのような高負荷なグラフィック処理に対しては性能不足の感が否めない。しかし、同ヘッドセットは高品質のグラフィックを実現していることから、チップに対して洗練された内部設計とチューニングがなされたのだろう、と評している。


 テック系メディア『Ars Technica』は、Oculus Questの重さに言及している。同ヘッドセットは、Oculus Goの重量である470gより重い571gと重くなっている。この重さと頭に固定するストラップがOculus Rift Sより簡素に作られていることから、1時間も利用すると顔に圧迫感を感じることを報告している。このように改善点はあるものも、総評として「真のワイヤレスなVR時代はOculus Questから始まる」とコメントしている。


 また、CNETもOculus Questを絶賛するレビュー記事を公開した。ただし、同ヘッドセットを直射日光のあたる場所で使用することは避けること、とも伝えている。というのも、直射日光下で使うと、トラッキングにわずかなずれが生じるからだ。


 以上のようなOculus Questは、VR市場を再び活気づかせる大きなポテンシャルを秘めている。そして、かりに「VRゲームをプレイし放題」をうたうゲームストリーミングサービスが登場したら、ゲーム市場に大きな地殻変動が起こるかも知れない。


(吉本幸記)