「夢」や「目標」と聞くと前向きで煌びやかなイメージがありますが、その夢や目標を失った時の怖さは経験してみないとわからないものです。目標を失った人はときに暴走する。僕の場合"借金"という方向に暴走した過去があります。
弱冠20歳そこそこで借金1000万円を背負った。しかも高価なものを買ったとか、海外に留学したとかではなく、ギャンブルと遊びが原因です。20歳にとって借金1000万円は果てしなく終わりの見えない暗いトンネルの中にいるようでした。(文:ちばつかさ)
幸せそうな人を見て「死ねばいいのに」と思う日々
もともと僕はプロ野球選手という目標があり、自分の実力にも自信があったので、都立高校出身ではあったものの勉強で野球の強豪大学に進学。そこで目の当たりにした厳しい野球環境に挫折しました。
だんだんと野球が嫌いになり、怠け癖がつき、大学にも練習にもいかなくなり始めた時にギャンブルに出会いました。パチンコやスロットにハマりお金がなくなり始めると学生ローンでお金を借りる。遊ぶお金欲しさにまた借りる。お金を返すためにバイトをして返すけどまた借りる。気づけばあっという間に1000万近くの借金を抱えていました。
借金を背負い始めると毎日お金のことを考えるようになります。「明日の返済はどうしよう」「どこか貸してくれるところはないか?」と。働いても働いてもお金が追いつかず、働いても足りないからギャンブルでなんとかしようとする。負けることのほうが多いから結局また借りて負債が増える。その繰り返しです。
当然、精神状態は普通じゃありません。「返せないとどうなるんだろう?」「取り立てに来るかもしれない」(実際には違法な借り入れをしていなければ取り立てにはきません)と震える日々。そんな状態の時どうするかというと、まず他人のせいにします
自分が悪いのに「こうなったのは親のせいだ」とか「周りが悪い」ととにかく他人のせいにする。すれ違う幸せそうな人をみて「死ねばいいのに」と本気で思うようにもなりました。恐らく罪を犯す時の心理ってこれに近いのかもしれません。
自分でなにかを変えなければいけないのに、変えることが怖いし何をしても変わらないと思うから、自分を変えるのではなく自分以外の何かを変えようとするんです。自分が不幸だと思っている間は、見える世界を不幸にしようとします。
さらに「助けてほしい」と言えない変なプライドみたいなものもあって、すべてを自分で背負いこもうとしていました。できる限り早く「助けてください」が言えていれば脱出も早かったのに、変なプライドを持つことで状況はどんどん悪化していたんです。
パチンコ屋で作った借金をパチンコ屋で働いて月18万円返す
もう1つ、当たり前のことなのにお金を失っている最中には気づかなかったことがありました。それは"お金を失いやすい人はお金のことを知らない"ということ。お金にまつわる言葉、投資や投機、期待値などのことも知らなければ、金利や手数料にも無頓着で無知。
自分のお財布から出ていくお金が投資なのか消費なのか、浪費なのかなんなのかも考えずにお金を使っていたし、感情を埋めるために使うお金ほど無駄なものはありませんでした。
お金を失ったことで環境は悪化しました。精神状態も悪化し、離れていく人もいました。また、自分を変えようとせず堕落した日々を送っていると、同じような人間と付き合い、傷をなめ合うようになりました。本当は脱出するために引っ張ってくれる人に接しなければいけないのに、です。
最終的に、借金は主に金利の安い銀行で借り換えたり弁護士を挟んだ債務整理もして完済になりましたが、その他にも色んな解決法があることを後になって知りました。あの時自分を見失わずしっかり考えていればもっと早く解決していたでしょう。
ちなみに、一時期はパチンコ屋で働き月18万円返していました。パチンコ屋で作った借金をパチンコ屋で働いて返していたのです。一旦落ち着くまでに3~4年はかかりました。
人間生きていれば困難なことは起きます。借金だけでなくいろんな問題や悩みがあるのが人間ですが、そんな困難な状況になった時一番見失いやすいのが"自分自身"です。実際1000万の借金は、まっさきに自分を見失わせました。
困難な状況になった時ほど冷静に、自分を見失わず、ゆっくりじっくり考えたり、勇気をもって「助けてほしい」と言えるかどうかが問題解決のための第一歩。それができればどんな困難な状況でも道は拓けるんだと自身の経験から学んだし、誰にでも当てはまることだと信じています。
【筆者プロフィール】ちばつかさ
柔道整復師、メンタルケア心理士、元プロ野球独立リーガー。東京と福井で投げ銭制の接骨院「小道のほぐし接骨院」を経営しのべ10万人近くの体と心と向き合う。野球経験を活かし都内で"野球を教えない"野球レッスンも運営。【公式サイト】