大雨による悪天候による打ち切りレースとなった前回のスーパーGT開幕戦岡山。気になるGT500クラスの3メーカーのパワーバランスはミッドシップのNSXがリヤタイヤのトラクションを活かす形で上位を実質独占することになり、分からないままになってしまった。
予選ではニッサンGT-R陣営が1-2となったが、翌日の雨が確実だったことからソフト目のタイヤを選んでいたというウワサもあり、完全復活と言い切るにはまだ材料が足りない……そんなもやもやが募った開幕戦となってしまったが、今週行われる第2戦富士の天候は晴れ/ドライが濃厚で、3車の本当の実力が試される場になりそうだ。
ゴールデンウィークの恒例となっているスーパーGT富士戦。GT500はその3メーカーの争いが気になるところではあるが、今回、もっとも雪辱を果たしたいと願っているひとりは、KEIHIN NSX-GTの塚越広大で間違いないだろう。
大雨の決勝レースで2番手まで順位を上げたが、トップのRAYBRIG NSX-GTに1コーナーのブレーキングで接触してしまい、まさかのホンダ同士討ち。打ち切りレースで塚越はトップチェッカーを受けたものの、34秒加算のペナルティを受けて14位という結果になってしまった。
ホンダNSXが1-2-3という状況での同士討ちなだけに大きな話題となったが、そこから約2週間後のこの第2戦富士を、塚越はどのような心境で迎えるのか。その塚越にまずは開幕戦について聞いた。
「岡山では優勝、ホンダにとっては1-2-3という結果が目前だったわけですので、チームに対してもホンダに対しても、本当に申し訳ない気持ちがあります。もちろん、レース結果の裁定に関してもペナルティは自分としてはしっかりと受け止めますけど、自分の走りだったり、判断に関しては何も後ろめたいものはなかったと思っています」と、第1戦を振り返る塚越。RAYBRIGとの接触シーンについても、自分なりの考えを示す。
「あのレースに関してはいろいろな意見があるでしょうし、『もう少し待てば』という意見や、『あそこは勝負を仕掛けるタイミングじゃない』という意見も多かったと思うんですけど、でも、あの一瞬一瞬で、いつ何が起こるか分からない状況で先のことを考えすぎてもしょうがないし、僕たちは勝つために走っているので、みなさんのいろいろな意見はあるとは思いますが、僕は自分の走りをするしかないので、もちろん結果を残すのは大前提ですけど、残せなかった分をどう補うかはこれからだと思います」
「過ぎてしまったことはもう取り返しがつかないので、ここから先、その時その時で、自分が一番できる限りのことをやるだけです。今回のレースを一周一周、どう戦うかだけだと思っています。ホンダ同士、接触してはいけないというのはあるにしても、ドライバーとしては一番になるというのが目標なので、そのためにはどういう走りをするか、とにかく僕自身としてはこれまでどおり精一杯、真っ直ぐ自分の走りを続けるしかないと思っています」
塚越の今回の富士戦に懸ける意気込みは、想像に難くない。実際、ウエイトハンデが0kgのKEIHIN、そしてRAYBRIGは当然、この第2戦でも上位の候補となるが、優勝争いに目を向けると、この富士はニッサンGT-Rが最有力に挙げられる。まさに、今年のGT-R勢の真価が問われる戦いになることは間違いないのだ。
■MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生「空力的にレクサスは富士が合っていると思う」
GW恒例となっている富士戦は昨年、MOTUL AUTECH GT-Rが勝利しており、富士はGT-Rにとって相性のよいサーキットだ。MOTUL GT-Rの松田次生も、今回の富士に自信を持って臨む。
「前回の開幕戦で2位とはいえ、ハーフポイントなのでウエイトもそれほど重くなっているわけではないので、今回もチャンスがあると思っています。17kgしか積んでいないので行けると僕らは見込んでいます。ただ、今回は岡山で速かったホンダだけではなく、空力的にレクサスは富士が合っていると思うので、怖いところだと思っています」とレクサス陣営を警戒する次生。
今回のレースは500kmの長丁場となり、今週の富士は天候が良く、暑くなることが予想されることから、次生はタイヤの摩耗をキーに挙げる。
「今回はどこまでタイヤが保つのかというのが勝負になると思っています。今年は僕たちミシュランも保つタイヤを開発してきていますので、ブリヂストン勢が予選でどんなタイムを出して、ロングではどんなタイムになるのかですね」
昨年はこの第2戦で勝利を挙げたものの、シーズン終盤戦は成績が急下降してしまったGT-R陣営。だが、今年は背水の陣で開発を進め、次生も開幕戦で十分に手応えを感じることができるまでにクルマを仕上げることができたようだ。
「今年のクルマに関しては、セットアップを見直したというのが一番大きなところですね。クルマで触れるところは限られていますが、その中でもダンパー、スプリング、スタビ(アンチロールバー)のバランスをしっかり注力してできたというのが大きいと思います。乗っていてもフィーリングは昨年よりもかなり良くなっています」
完全復活をこの富士で挙げたいGT-R陣営、そして、開幕戦の雪辱に燃えるKEIHIN、RAYBRIG、そこに岡山ではまさかの大低迷に陥ってしまったレクサスLC500がどのように絡んでくるのか。500kmの決勝はクルマ、ドライバー、そしてチームの総合力の戦いとなるだけに、今回の優勝メーカーが主軸となって今シーズンのGT500は展開していくことになるだろう。