フランスのポール・リカール・サーキットで2019年4月26~28日、ユーロフォーミュラ・オープン(EFO)の開幕大会が実施され、佐藤万璃音(モトパーク)がレース1で5位、レース2で優勝を飾った。
同じくシリーズに参戦しているホンダ育成でレッドブル・ジュニアの角田裕毅(モトパーク)は2位と6位、ホンダ育成の名取鉄平(カーリン)は6位と8位に入り、日本人3ドライバー全員がレース1&2ともにトップ10入りを果たしている。
■佐藤万璃音、2番手スタートのレース2で快勝。「タイヤが温まっていない序盤に全力でプッシュした」
FIA-F3ヨーロ仕様のマシンをEFO仕様に改修した車両を使い、チームのプライベートテストを経て開幕大会へ臨んだ佐藤。もっとも、レッドブル・リンクのプライベートテストは2日間とも土砂降りで目ぼしい成果は得られなかった。
また、ポール・リカール・サーキットでの走行経験がない佐藤は、同地で25日に実施された開幕大会直前の合同テストで、そのハンデキャップが明白になった。午前のセッション(180分間)を経て臨んだ午後のセッション(55分間)でも、トップから約1.4秒後れの10番手に終わっていたのだ。
翌26日に21台が参加して実施された練習走行(30分間×3回)では、タイヤ/ホイールが外れかける不具合でブレーキ・ローターがダメージを受け、その交換作業などで大きく時間を失った影響もあったとはいえ、トップから約0.6秒後れの総合6番手まで挽回するに留まった。
「普段はあまり見掛けない視界だし、コースはずっとフラットだし、さすがに最初はコース攻略で苦労した」と佐藤は弱音を吐いた。
それでも27日の決勝レース1に向けた予選1回目では4番手を獲得。ただし、「このメンバーで4番手は嬉しくない」と佐藤は不満気な表情を見せた。
同日の決勝レース1は序盤こそ4番手を走行するも、中盤からペースが落ちて5位。「ストレートが伸びなかった。ミラーでエンジン・カバーが開きかけているのが見えたので、それが原因かもしれない。
タイヤの空気圧も高すぎたようですぐにリヤタイヤが熱を持ち、それを抑えようと走っていたら今度はフロントが熱を持つ悪循環。前の3台にストレートでついていけないからコーナーで詰めようと頑張って、それもタイヤには優しくなかったのかな」と佐藤は分析した。
28日の決勝レース2に向けた予選2回目は、終盤までトップにつけ、ポールポジション獲得か? という状況。しかし、最終周にリアム・ローソン(モトパーク)がスリップストリームを使って驚異的なタイムを叩き出し、佐藤は2番手へ落ちた。
決勝レース2では抜群のスタート。周りのドライバーが加速に失敗した影響もあり、“ジャンプ・スタート審議中”との文字情報がタイミングモニターに表示されるほどの切れ味だった。最後までライバルを寄せ付けず優勝を飾った佐藤は、「序盤タイヤが温まっていないときに全力でプッシュした。リアムが2番手へ上がって近づいてきたときも余裕があった。これから彼はプッシュしてくるだろうと思ったけど、だったら自分だってプッシュできると考えられる余裕があった。クルマは最高だった」と笑顔を見せた。
■角田裕毅はレース1で2位表彰台。「スタートが悪かった」と語るも笑顔
EFOではなくFIA-F3の車両とはいえ、ポール・リカール・サーキットでテスト経験のある角田は、25日の合同テストでも26日の練習走行でも、常にトップをうかがうタイムを記録。「自己ベストタイムはチームメイトのリアムとほぼ変わらないし、練習走行3回目では決勝のシミュレーションもできた」と角田は満足そうだった。
27日の決勝レース1に向けた予選1回目ではトップと0.026秒という僅差の2番手。「正直悔しい。クルマもとくに問題は無いし、この週末をとおしてもっとも良い状態に仕上がっていた。最後のラップもある程度はまとまっていたし、納得のいかないラップでもなかった。強い風の影響もあったかもしれない。まあ、それほど悪い予選ではなかった」と苦々しい表情を見せながらも最後はやり切ったかのような言葉を残した。
同日の決勝レース1ではスタートの加速が鈍って3番手へ落ちるも、セーフティーカー(SC)明けに2番手へ浮上。3番グリッドからトップに立ったローソンと白熱したバトルを繰り広げて2位となった。「めちゃくちゃスタートが悪かった。そこでリアムに前へ出られてしまったのがすべて。レース半ばにはトップのリアムと争いになって、最終セクションのコーナーでは自分のクルマが決まっていたので抜ける感触はあった。実際に並びかけた。いまから考えるとあそこで行っちゃえば良かったかもしれない」と優勝は逃したが角田は笑顔を見せた。
28日の決勝レース2に向けた予選2回目の角田は3番手に留まった。「ポールを取れる自信はあったけれどまともに一周走れず、最終盤にみんながタイムを出してきたときも、前にドライバーが居て思うように走れなかった。クルマの何が悪いとかはとくに無い。ポールのタイムを見ても余裕で僕も行ける。普通に走れていたらいくらミスしてもあれくらいのタイムは出せていた」と悔しさをあらわにした。
同日の決勝レース2はスタート直後のストレートで、出遅れたポールシッターのローソンから幅寄せを食らって2台は接触。1周終了時点で角田は7番手まで後退した。
果敢な追い上げで一時は5番手まで順位を戻すも、レース後半はペースが落ちて6位に留まった。「スタート後のストレートで抜きに行ったところ、幅寄せされて当てられ順位を落としてしまった。その影響が出たのかどうかは分からないけれど、レース中盤はタイヤが厳しくースが落ちてしまった」と語る角田。ローソンには総合結果に3秒加算のペナルティが科されたが、順位が上がることは無かった角田は“やりきれない”といった表情を見せた。
■名取鉄平、「チーム内ではいいポジションだったが、他チームにはまだまだ及ばない」と悔しさにじむ
ポール・リカール・サーキットではFIA-F3の車両でテスト経験があり、EFOの車両ではウインター・シリーズでのレース経験もある名取。26日の練習走行では総合8番手のタイムを記録し、カーリンからはチームメイト3人を先頭に立って引っ張る存在と位置付けられた。
「チームのデータ不足とこのクルマでの自分の経験が少ないこともあり、まだ学んでいる最中とはいえドライビングはすごく楽しい」と名取は笑顔を見せていた。
27日の決勝レース1に向けた予選1回目は佐藤に次ぐ5番手。「チーム内では自分主導でクルマのセットアップを開発して、昨日より良い状態で予選を迎えられた。でも、テオ・マルティンとモトパークが頭ひとつ抜けている。決勝へ向けてさらなる改善が必要です。予選中は無線のトラブルでコース状況、ほかの選手のタイヤの使い方やラップタイムを把握できず、自分としてはベストな予選でもなかった。ただし、チームメイトをコンマ4秒引き離しているので悪くはない」と名取は振り返った。
同日の決勝レース1ではスタートで出遅れて大きく後退。それでも中位集団で抜きつ抜かれつの激しいバトルを繰り広げ、バックストレートのシケインでは2台抜きの大技も決めた。レース終盤には佐藤の背後まで迫る速さも見せて6位。
「スタートはホイールスピンが多くてほかのクルマに抜かれて、ポジションを9、10番手まで落とした。コーナー重視のマシン・セッティングが裏目に出て、スリップストリームを使われてどんどん抜かれた。ただ、セーフティーカー明けにはチームから良いレースペースと伝えられた。シケインでの2台抜きなどはうまい判断ができたと思う」と名取は状況を説明した。
28日の決勝レース2に向けた予選2回目は9番手。「常に3、4番手くらいに居ながら最後のアタックに合わせていった。ところがレコードライン上を走るクルマに遭遇してタイムを伸ばせなかった。それがなければ5、6番手は行けたと思う。最後のアタックでは場所取りも良く、スリップストリームも使えてこれは行けるという感じだっただけに残念です」と肩を落とした。
同日の決勝レース2では一時10番手へ後退するものの、最後は8位でチェッカー。「昨日より良いスタートがきれた。でも、1周目に先行するクルマ同士がぶつかってパーツが僕のクルマのウイングに当たってダメージを負った。それで思うようにペースが上げられず、苦しいレースになった。この土曜日、日曜日、チームの中では良いポジションに居たけれど、ほかのチームにはまだまだ及ばない。ひとつひとつチームと分析して、何が自分たちに足りないのかを探りたい」と名取は週末を振り返った。