2019年05月01日 09:31 弁護士ドットコム
仏パリのシンボル、エッフェル塔。その夜景を撮影して、インターネット上に無許可で公開したら、法律違反にあたる可能性がある――。ネットメディア「GIGAZINE」がこのように報じている。
【関連記事:「ほらよ」。男子中学生に「アダルトDVD」を渡そうとした男性、罪に問われる?】
GIGAZINEによると、その理由を解説したムービーが、YouTube上で公開されている。昼のエッフェル塔を撮影した写真や動画をSNS上に投稿することは合法だが、夜景については違法になる可能性があるというのだ。
エッフェル塔に限らず、観光地で建物を撮影して、SNS投稿することは、今では当たり前のようにおこなわれている。はたして、日本の法律から考えると、どうなるのだろうか。著作権にくわしい井奈波朋子弁護士に聞いた。
「エッフェル塔は『建築の著作物』にあたります。
日本の著作権法で保護される著作物といえるためには、『創作性』が必要です。エッフェル塔の曲線形のフォルムや、鉄骨の組み方には、設計者の創作的表現が認められると思います。
ただし、設計者であるギュスターヴ・エッフェルは、1923年に亡くなっていますので、著作権保護期間の経過により、エッフェル塔が著作物であっても、著作権は消滅しています。したがって、エッフェル塔を写真撮影してもまったく問題はありません」
「ただ、エッフェル塔の夜景を撮影した場合、ライトアップされていますので、その照明が『美術の著作物』と捉えられる可能性があります。
『美術の著作物』として、著作権法で保護されるものであれば、その写真・動画をSNSなどで公開する行為は、著作権侵害となる可能性があります。
しかし、エッフェル塔の照明を『美術の著作物』と捉えるのは難しいのではないかと思います。エッフェル塔の照明はきらびやかですが、パターンは限られており、誰がやっても同じような照明になるはずです。そのため、著作物性を認めることはできないと考えます。
著作物性がなければ、写真や動画をSNSなどで公開しても問題はありません。なお、公開する場所によっては、外国法が適用される可能性があり、その場合にも同様の解釈になるとは限りません」
(編集部注)エッフェル塔をめぐっては、フランスの公共団体が管理しており、現地で夜間撮影する場合には、事前許可が必要となっている。
それでは、著作権が消滅していない建築物はどうなのだろうか。
「建築の場合、なんの特徴もないオフィスビルなどは創作性がないので、著作権法により保護される著作物ではありません。建築のうち創作性がみとめられるものが、著作権法による保護の対象となります。
しかし、著作権により保護される建築の写真や動画をSNSで公開しても著作権侵害にはなりません。著作権法は、このような場合には著作権が制限されることを規定しています(著作権法46条)。
ただし、プロジェクション・マッピングされた建物の写真や動画については、問題があります。
プロジェクション・マッピングは、映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせる方法で表現されるものとして、『映画の著作物』に該当すると考えられ(著作権法2条3項)、単なる照明と違って、創作性が認められます。
この場合は、先ほどの46条に定める著作権の権利制限や、そのほかの権利制限規定に該当しないので、写真や動画の公開は著作権侵害行為にあたります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
井奈波 朋子(いなば・ともこ)弁護士
著作権・商標権をはじめとする知的財産権、企業法務、家事事件を主に扱い、これらの分野でフランス語と英語に対応しています。ご相談者のご事情とご希望を丁寧にお伺いし、問題の解決に向けたベストな提案ができるよう心がけております。
事務所名:龍村法律事務所
事務所URL:http://tatsumura-law.com/