トップへ

“ヒロインと結ばれない”朝ドラ定番に変化? 「幼なじみ枠」大勢出演の『なつぞら』を機に分析

2019年05月01日 09:31  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 朝ドラでは一つの定番となっている、「異性の幼なじみ」枠。


 漫画の世界にも異性の幼なじみはしばしば登場するが、親友であり、きょうだいのようでもあり、ときには恋の相手でもあり……という関係性を観るたび、「幼なじみに異性なんかいない!」「異性の幼なじみは、ステキじゃない」「恋愛から最も遠い相手」などとリアルとの違いを感じる人も多いことだろう。


 その点、100作目のNHK連続テレビ小説『なつぞら』は、ヒロイン・なつ(広瀬すず)の異性の幼なじみも、イケメン俳優だらけ。


 例えば、なつが戦災孤児で浮浪児だったことから病気を持っているのではないかとクラスメイトに言われたとき、かばってくれ、なつの絵心を目覚めさせた天陽を演じるのは、吉沢亮。田舎の風景に浮きまくるほど眩しい光を放っていて、おそらく朝ドラ史上最もキラキラ度の強いキャラではないだろうか。


【写真】なつ(広瀬すず)の幼馴染たち


 また、菓子屋・雪月の長男で、子ども時代は、なつを引き取った柴田家の長女・夕見子のほうを「なっちゃんよりめんこい」と気に入っていたものの、なつと同じ農業高校に通い、なんとなくそばで見守っていて、演劇部に誘う雪次郎役の山田裕貴。


 幼いなつを空襲から救ってくれ、同じ戦災孤児として一時は一緒に暮らしていたものの、生き別れになった佐々岡信哉役の工藤阿須加。


 成長後はまだ登場していないが、絵画の才能に恵まれ、芸術大学で学ぶ天陽の兄・陽平を演じる犬飼貴丈。


 なつを引き取った柴田家の長男で、責任感が強く真面目な照男役の清原翔。


 彼らは視聴者にとっての「目の保養」枠として機能しつつ、当然ながら、なつとの恋模様なども今後の注目ポイントとなる。


 ところで、かつては朝ドラの幼なじみと言うと、「ヒロインと結ばれない」イメージが強かった。ヒロインはみんなに愛されるが、「恋愛に疎い」キャラが多いため、見守ってくれている幼なじみの思いに気づかないパターンが多いためだ。


 例えば、『ごちそうさん』では、め以子(杏)の幼なじみで、ヤンチャだが、優しく、正義感が強く、いつも陰で支えてくれる源太を和田正人が演じていた。め以子の夫・悠太郎が満州に渡る際には、め以子のことを頼まれ、「たった一人の人生の相方」として大切な存在だと告げ、見守る約束をする。さらに、悠太郎の帰りを待ち続けるめ以子に、突然、「ほなお前、わしと一緒になる? お互い一人やし」と突然プロポーズをすることで、め以子から「(悠太郎がいなくなって)まだ二年だし!」と言う言葉を引き出し、元気にさせる優しさもあった。


 また、『花子とアン』では、ヒロイン・花子(吉高由里子)のことをひたすら一途に思い続けた幼なじみの朝市(窪田正孝)が人気となり、40歳にして結婚するスピンオフ『朝市の嫁さん』が作られる展開となった。


 『おひさま』の幼なじみ・タケオ(柄本時生)に至っては、いつも畑仕事をしながらヒロイン・陽子(井上真央)の姿を遠くから見守り、「陽子はおひさま。笑っててほしいんだ」とまるでファンのような賛辞を送り続けていた。しかも、戦地から復員したときにはすでに人妻になっていた陽子にプロポーズし、玉砕してもなお生涯見守る、気の毒なほどの健気な存在として描かれていた。


 ちなみに、『ちりとてちん』の同級生・和田清海の兄(友井雄亮/元・純烈メンバー)の場合は、小学生時代のヒロインに初対面で暴言を吐いてカバンで殴られ、それを機に一目惚れしてプロポーズ→後に再びプロポーズし、いずれも玉砕→ヒロインとの共通の友人と結婚するというパターンだった。


 他にも、双子のヒロインの一方に恋心を抱きつつ、やがてもう一方と結婚する『だんだん』の幼なじみ(久保山知洋。ネット上での通称は「タンバリン」)のような例もあったし、『ウェルかめ』の幼なじみ(武田航平)のようにヒロイン(倉科カナ)に片思いを続け、結婚してしまうと聞いたときには、ヒロインの両親に結婚を申し込んで、本人にもプロポーズするという謎の暴走ぶりを見せた例もあった。


 そんな「幼なじみがヒロインと結ばれない」パターンに変化が見られたのは、おそらく堀北真希主演の『梅ちゃん先生』の松坂桃李あたりから。初恋は別の相手だったが、最終的に幼なじみと結ばれ、ご近所共同体の地盤が固められていく。


 さらに、『ひよっこ』の場合は、ヒロイン・みね子(有村架純)に同性と異性の幼なじみが一人ずついたが、異性の三男(泉澤祐希)がずっと思いを寄せていたのは、ヒロインではなく、その親友で後に女優になる華やかな時子(佐久間由衣)のほうだった。しかも、みね子が三男に恋心を抱くことも一切なく、幼なじみ3人の関係の中で唯一「恋」と関係ない場所にいるのがヒロインだったのは、いま考えてもなかなか斬新である。


 そして、「幼なじみと結ばれない」説を大きく覆した決定版は、やはり『半分、青い。』だろう。同じ日に同じ病院で生まれ、赤ちゃん時代から運命的な出会いをしていた鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)。お互いに大切な親友で、恋心を抱いた時期もありながら、別の人と恋をし、結婚もし、距離を置いた時期も経て、最後の最後で、ようやくお互いの気持ちを確認する。この結論に至るまでの全てが、誕生時からずっとつながり、育まれてきた運命だったのだ。


 さて、『なつぞら』の場合は、なつを見守る人、助ける人、将来への影響を与える人、安らぎを与える人など、複数の幼なじみ的存在が配置され、それぞれにキャラクターも関わり方も異なっている。現時点では恋心がお互いに見えるのは、天陽だけだが、はたしてこの先は……? 幼なじみたちとの今後の展開も、見逃せない。


(田幸和歌子)