2019年05月01日 09:11 弁護士ドットコム
「毎日、奥さんが作ったお弁当を持ってきている同僚がいます。でも、『たまには外で食べたいから』とゴミ箱に捨てています。腹立たしいです」。子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板には、「奥さんが作ったお弁当を捨てる同僚」(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3014435)と題したスレッドで、こんな怒りの声が寄せられている。
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スレ主によると、同僚は「妻は俺と離婚したら生きていけないから。社食がまずいから弁当を作らせている」と周りに言っているという。
同僚の言動に対して「食べ物を粗末にするなんて許せない」、「そんな旦那、弁当のように捨てられてしまえばいい」など、怒りの声が複数上がっている。
もし何らかのタイミングで妻が気付いた場合、法律上の離婚原因になるのか。離婚問題にくわしい長瀬佑志弁護士に聞いた。
「一般的に、妻が夫と離婚したいと考えた場合、話し合いや調停で離婚が決まらなければ、裁判で離婚を請求することになります。
裁判で離婚が認められるのは、(1)不貞(2)悪意の遺棄(3)3年以上の生死不明(4)回復の見込みのない精神病(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項各号)がある場合、と定められています」
今回のケースは離婚の要件を満たすのだろうか。
「(5)の『その他婚姻を継続し難い重大な事由』があるかどうかが問題となります。
夫が妻の弁当を捨てたということのみで直ちに要件が認められるとまでは言い難いかもしれません。しかし、夫が妻の弁当を捨てることで、夫婦関係に決定的な亀裂が生じて、別居するなど、その他の事情も重なるのであれば、『その他婚姻を継続し難い重大な事由』があり、離婚が認められることも考えられます。
ただし、妻が浮気をしていたなど、婚姻関係の破綻について妻に落ち度がある場合、妻からの離婚請求が認められないこともありますので、注意が必要です」
もし、家に持ち帰って、妻が見ているところで弁当を捨てるようなことがあれば、DVにあたる可能性もあるのか。
「ドメスティック・バイオレンス(DV)は、身体的DVや性的DV、精神的DV等に分類されます。このうち精神的DVは、『心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの』をいいます。
夫が妻の作った弁当を、妻が見ているところでゴミ箱に捨てるということは、夫の態度や、夫婦のこれまでの関係等によっては、精神的DVにあたる可能性があります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所水戸支所
事務所URL:https://nagasesogo.com