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稲垣&草なぎ&香取の出発にはいつも雨がつきものだった 令和の幕開け飾った『ななにー』を見て

2019年05月01日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 〈世界のどこかにきっと仲間がいるはず〉


 平成から令和へ。新しい時代の幕開けと共に聞こえてきたのは、新しい地図が歌う「新しい詩」だったーー。


 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が、レギュラー番組『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)を、いつもの第1日曜日から変更して平成最後の日に生放送した。


(関連:新しい地図はまだまだ広がり続ける 『ななにー』での爆笑問題との“ホンネ過ぎるトーク”を聞いて


 番組は、日本の「象徴」である天皇陛下の退位の儀式を、共に見守るところからスタート。厳かな雰囲気の中で進む平成の幕引きを、平成という時代を“象徴”する彼らと共に過ごすという贅沢な時間。「こうやってみなさんと一緒に時間を過ごせて嬉しいですね」と香取がコメントを寄せると、次第にいつもの『ななにー』の和やかな空気に。


 やがて来る新しい時代に向けて、彼らが見せてくれたのは、やはり歌の力だった。残り少ない平成の時間を、スペシャルライブで彩る。新世代の才能であるSASUKEと、その名も「平成終わるってよ」を披露し、平成元年から30年間のヒットソングを振り返ったのだ。


 稲垣が主演したドラマ『二十歳の約束』(フジテレビ系)の主題歌であった「約束の橋」を歌うシーンには、当時を思い出してグッとくる人も少なくなかったはず。また、「浪漫飛行」や「I LOVE YOU」「夏の日の1993」「愛しさと切なさと心強さと」など、今でもカラオケの18番だという人も多いのではないだろうか。


 GAO、岡本真夜、松平健ら、ご本人登場もあり、大いに盛り上がるステージ。岡本真夜が「デビュー前にGAOの曲をよく歌っていた」という音楽トークが聞けるのも、また楽しいひとときだった。「SUN」や「HERO」「Lemon」「マリーゴールド」など、次々と歌われる名曲たちに、どこか年末の特番を見ているような気分になっていく。


 そして同時に、これほど多くの平成の名曲たちを前にして、SMAPの楽曲が披露されない寂しさは拭いきれない。新元号が発表された際、安倍首相が「世界に一つだけの花」に言及したことも記憶に新しい。それくらい、平成の時代を語る上で、欠かせないグループだったのだと改めて実感する。


 「よくわからない大人の事情とかあるのか……」。令和へのカウントダウン直前、草なぎのナレーションで、視聴者の思いを汲み取るような言葉が綴られた。新しい地図を広げて、SNSで多くのことを共有し、共感し、楽しんでいること。それでも大人の事情があるのか、みんなが望む場所に到達できていない部分もあること。でも、みんなのおかげでものすごく生きていること。「同じ時代を生きているんだ」ということを、日々強く実感しているということ。


 そして、平成の30年間は何かに追われるように、ただひたすらがむしゃらに走り抜けてきたこと。かつて、みんながちゃんと立っていられるように、「世界に一つだけの価値があるんだって」伝えたこと。そして、今はもう、みんな誰かのメッセージを受け取るだけじゃなく、自分の物語を生きている。少なくとも、そう生きようとしていること。そして、そんな一人ひとりの物語の一部になれたら、僕たちはこんなにうれしいことはない……と。


 静かに、淡々と、語られる草なぎのナレーションは、まるで流れ星のようにスッと心の中に落ちる。「令和の英語訳は、ビューティフルハーモニーだそうだ。寄り添い、共感し、共に品よく、美しく、生きていこう。ワクワクするような新しいことを一緒にやろうね。私たちは、新しい地図」。


 彼らの出発には、いつも雨がつきものだった。1991年のデビューイベントも雨の中で行なわれたし、2017年に草なぎと香取が原点回帰にと駅前でダンスパフォーマンスのゲリラライブを行なったときも雨。そして、令和を迎える今夜の東京タワーでのライブも雨だった。


 「雨降って地固まる」。草なぎがポロッとつぶやいた何気ない言葉が心地よく響く。冷たい雨を知っているから、温め合う仲間を大事に思える。恵みの雨が降るから、花が咲く。そして、雨だったからこそ忘れられない日になる。新しい時代、新しい物語を、一人ひとりが紡いでいく。その1ページ目に、『ななにー』の雨のライブを。そして、彼らの、これを読むすべての人の物語が、そんな愛しい想い出でいっぱいになるように、心から願っている。(佐藤結衣)