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『アベンジャーズ/エンドゲーム』最大のテーマとは 杉山すぴ豊が語る、MCUだから描けたもの

2019年04月29日 11:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『アベンジャーズ/エンドゲーム』の予告編を観た時からずっと気になっていたことがありました。アクション映画なのに派手な戦闘シーンの映像がない。ヒーロー物というのは基本、正義の味方が悪党と戦うわけですよね。じゃあそもそもヒーローたちは誰と戦うのか、それが全くわからない予告編でした。


参考:MCUの魅力とは


 本編を観てその理由がわかりました。まず安心してください。すごいアクション・シーンのオンパレードです。そしてクライマックスに至っては鳥肌もののかっこよさ。まさにこのシーンを観るためにいま劇場にいるんだよね! そういう気持ちになりました。ヒーローがかっこよすぎて涙が出ちゃう(本当です)という初めての経験でした。しかし、こららのアクション・シーン、ちょっとでも見せちゃうとネタバレになるのです。だから予告で見せなかった。つまりそれぐらいドラマとアクションの見せ場が融合しているわけです。もう一つ予告編で戦闘シーンがなかった理由は、今回のアベンジャーズは敵を倒すことが目的ではないからです。すでにサノスを倒すことなどどうでもいい。サノスによって歪められた宇宙を元に戻すために再び立ち上がるのです。


 この“再び”というのがポイント。というのも本作は人々の希望であるべきアベンジャーズ自身が、みな希望を失っているということです。彼らは完全にサノスに負け、その敗北を受け入れているのです。そういう意味で『エンドゲーム』は『インフィニティ・ウォー』の続編ではあるけれど、前編・後編の関係では無く、それぞれが独立した映画だと改めて思いました。『インフィニティ・ウォー』は決して、次につなげるために”宙ぶらりん=クリフハンガー”で終わったのではなく、サノスを主役と考えれば物語として完結しているわけです。そして『エンドゲーム』では、打ちのめされたヒーローたちがあることをきっかけにもう一度希望を抱き挑戦するという流れになります。


 試練から始まるわけですが、そこはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)!シリアスな展開の中にもユーモアのある会話は健在。特に毒舌なロケットを残しているから彼がいいアクセントとなっています。本作をリードするのは『インフィニティ・ウォー』に登場しなかった2人のヒーロー。前作の”“欠席”が本作の大きな伏線になっており、また『キャプテン・マーベル』での無双ぶりが話題となった彼女もうまい形で合流。こういう構成の巧みさもさすがMCU。


 派手な見せ場がいっぱいの至福の3時間ですが、この壮大なエピックのテーマは「希望」と「家族」でした。こうしたヒーロー物をしょせんは絵空事、現実逃避という人もいます。しかし、フィクションだからこそ、英雄物語という寓話だからこそ描けるものがある。そして観た人を勇気づけることが出来るのです(GWにアベンジャーズに勇気をもらえればその後の新生活もきっとのりきれるますよ)。


 クライマックスの大バトルは震えがくるかっこ良さ、カタルシス。万が一、億が一、途中でトイレに行きたくなったら無理をせず早めに対応して、この大バトルを見逃さない(あるセリフを聞き逃さない)でください。あと3Dで観る方はハンカチをお忘れなく。感激・感動・興奮で涙が出てきます!(ヒーローたちのあまりのかっこ良さに泣く、という初めての経験をしました)。3Dグラスが涙で曇っちゃうかもですから。MCUファンにとって、MCU自体が心の故郷。このGWは『エンドゲーム』で“里帰り”しましょう。  (文=杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)