「なんて退屈なレースだ。アゼルバイジャンGPのレースで一度もセーフティカーが出ないなんて!!」
これは日曜日の決勝レース後、チームの囲み会見に現れたレッドブル代表を務めるクリスチャン・ホーナーの第一声だった。
初年度こそ、セーフティカーは出なかったが、2年目の2017年と3回目の昨年はいずれもセーフティカーが出動し、セーフティカー出動率は67%を誇るアゼルバイジャンGP。今週末は、サポートレースでも通算で6回もセーフティカーが出ていたことから、ホーナーでなくとも、レースが荒れることは覚悟していたことだろう。
だが、今年のF1第4戦アゼルバイジャンGPは荒れなかった。
ただし、一度だけ、セーフティカーが出動する可能性があった。それは皮肉にもホーナーのチームに所属するピエール・ガスリーが、ドライブシャフト破損によって、エスケープゾーンにマシンを止めてリタイアしたときだった。
しかし、FIAの判断はセーフティカー(SC)ではなく、バーチャル・セーフティカー(VSC)だった。SCもVSCも似たような状況のように思うかもしれないが、大きく違う。SCは先導するセーフティカーよりもF1マシンのほうがペースが速いため数珠つなぎになるのに対して、セーフティカーがいないVSCは、全車が等間隔で決められた速度でスロー走行するため、マシン間のギャップは変わらない。
もし、あのタイミングでセーフティカーが出いたら、ホーナーは「ピットインした」と言う。「後ろ(シャルル・ルクレール/フェラーリ)との差が30秒以上あったから、C4タイヤ(ソフト)に履き替えて、逆転優勝を狙っただろう」
ところが全車が同じペースで走るVSCとなったため、ピットインすれば、ピットロス分だけ前を走るマシンとの差が広がってしまう。そのためレッドブル陣営はピットインを断念した。
■スペインGPではレッドブルがアップデートを投入
VSCとなったものの、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)との差はわずか3秒。表彰台を狙えるポジションにいた。
「しかし、ガスリーのトラブルの原因がその時点でわからなかったため、1つのポジション上げるためだけに無用なアタックを行なって、同じトラブルに見舞われるリスクを避けることにした」(ホーナー)
こうして、レッドブル・ホンダのアゼルバイジャンGPは、フェルスタッペンの4位という結果で幕を閉じた。
表彰台には届かなかったが、ホーナーは「メルセデス、フェラーリとのギャップを確実に縮めることができたポジティブな週末だった」と総括した。もちろん、そこにはホンダが投入したスペック2の存在があることは言うまでもない。
「メルセデスとフェラーリに追いつくため、積極的にアップデートを入れるという方針は変わっていない。今回はホンダがいい仕事をしてくれた。次のスペインGPではわれわれがアップデートを入れる」
開幕4戦を終え、フェルスタッペンはドライバーズ選手権でベッテルと1点差の4位につけている。