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『集団左遷!!』福山雅治の“がんばり”は奇跡を起こすか? 2つの正義がぶつかりあう

2019年04月29日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 日曜劇場『集団左遷!!』(TBS系)の第2話が4月28日に放送された。


参考:『集団左遷!!』福山雅治の“必死すぎる中年男性”姿は必見! イメージを一新する“普通”ぶり


 第1話で、常務取締役の横山輝生(三上博史)に、廃店を回避するためノルマ達成を宣言した蒲田支店長の片岡洋(福山雅治)。「僕はがんばりたい」と伝えたものの行員たちはキョトンとするばかりで、自分たちがリストラ対象であることをよく理解できていない様子。副支店長の真山徹(香川照之)は本部に謝れば助かると反論する。『半沢直樹』の大和田常務や『小さな巨人』の小野田捜査一課長など、表情筋をフルに使ったオーバーアクションで日曜劇場の常連となった香川照之だが、今作で演じるのは受け身な態度の副支店長。これまでと異なるキャラクターが回を追うにつれて変わっていく様子にも注目したい。


 香川の代わりにオーバーアクションを見せるのは主演の福山だ。目を見開いて眉を上下させ感情を前面に押し出す。福山自身にとって新機軸といえるキャラクターだ。なかばヤケになりながら目標達成を呼びかける片岡だが、行員たちにはまったく響かない。それどころか、滝川晃司(神木隆之介)からは「支店長が逆ギレ」したとあきれられる。戦う前から白旗な、まさに“無理ゲー”な状況で「がんばりましょう!」と発する片岡も、1人になると我に返ってため息をつく。とにかく人間くさいのが『集団左遷!!』の福山なのである。


 そんな蒲田支店に本部からの報復が開始される。審査部部長の柘植良春(林泰文)から稟議書類に難癖をつけられたのは序の口で、妨害が本格化する第2話では横溝厚男(迫田孝也)が担当する町田エネラルをめぐってストーリーが展開。金利の引き下げをほのめかす社長の町田良介(市川猿之助)に誠心誠意頭を下げて得たせっかくの取引をライバルの羽田支店に奪われる。裏には本部の横やりがあった。


 経営の合理化という銀行にとっての正義と、行員の人生という働く人にとっての正義が正面からぶつかり合うところが『集団左遷!!』の見どころだ。第2話では銀行側を代表する横山と片岡の直接対決が早くも訪れる。乗り合わせたエレベーターで横山が問いかける「どちらが正しいのか」という問題提起は、リストラの記憶も生々しい平成という時代に何度も繰り返されてきた普遍的なテーマだ。


 今作のキーワード「がんばる」。片岡に対する滝川の「また出たよ。がんばる」という揶揄や、息子・裕太(弦瀬聡一)の「がんばってるのに、さらにがんばれって言われるとキツいんだよね」というセリフは、”働く=がんばる”という価値観に一石を投じるもの。若い世代にとっては、そちらのほうがむしろ自然な感覚かもしれない。


 がんばったり、がんばっていいのか悩んだり、それでもやっぱりがんばってしまうのが片岡だ。二転三転しながらも、最終的に町田エネラルとメガソーラー事業のための巨額の融資契約を締結し、岩盤浴で知り合った三嶋和生(赤井英和)から給与振込の口座開設を取りつける。単身、客先に乗り込む支店長の圧倒的な仕事への情熱にほだされ、ひとつになりはじめる蒲田支店。そこに現れた横山……。


 第1話の最後に示唆されたスパイの存在が次第に現実味を帯びてきた。もちろん、このまま順調に融資目標を達成するとは考えにくい。「がんばるだけで押し切っちゃったよ、あの人」と滝川に言わせてしまう片岡は、働き方改革が叫ばれる現在では絶滅危惧種かもしれないが、その人並み外れた“がんばり”を見ているうち、懐疑的な視線を跳ね返して奇跡を起こすパワーがそこに宿ることを信じたくなる。見事契約を勝ち取って帰社する片岡と横溝が歌う「これでいいのだ」という歌詞はがんばっている1人ひとりへのエールでもあるのだ。


■石河コウヘイ
東京都出身のエンタメ系ライター。年間ドラマ視聴数は50作品以上。三度のメシとエンタメが好き。