4月28日現地時間午後4時10分、アゼルバイジャンGP決勝が行なわれメルセデスのバルテリ・ボッタスがポール・トゥ・ウィンを飾った。レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは4位、ピエール・ガスリーはトラブルによりリタイアを喫している。
決勝日も朝から晴天で気温は18度、路面温度40度というコンディションでのレース。
予選でクラッシュを喫したシャルル・ルクレール(フェラーリ)とロバート・クビサ(ウイリアムズ)は、それぞれECU(エンジンコントロールユニット)パラメーターの変更とスペックの異なるパーツへの交換を行ない、クビサはピットレーンからスタート。
フリー走行2回目の車重計測無視でピットレーンスタートを義務づけられていたガスリーは、予選Q1で燃料流量が規定の100kg/hを超えていたため予選失格とされたが、変わらずピットレーンからの決勝出走は許可された。これに合わせて土曜に新品ギヤボックスを投入したほか、予選後にECUのパラメーターも変更している。
さらに予選後にキミ・ライコネン(アルファロメオ)のフロントウイングのフラップに静荷重テストで規定の5mmを上回る湾曲が見つかったため、こちらも予選失格となりピットレーンからの決勝スタートが義務づけられた。
その結果、スターティンググリッドには17台のマシンしか並ばないという珍しい光景となった。アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)は今季3基目のCE(コントロールエレクトロニクス)投入のため10グリッド降格ペナルティで17番グリッドからのスタートとなった。
Q3に進んだ上位勢はルクレールだけがミディアムタイヤでスタート。Q1・Q2敗退のダニエル・リカルド(ルノー)以下はロマン・グロージャン(ハース)、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)。クビサ、ガスリーがミディアムでそれ以外のドライバーたちはソフトタイヤを選んだ。
スタートで2番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)が首位ボッタスに襲いかかりターン1~2をサイドバイサイドで抜けるが、ハミルトンも同士討ちを避けるためそこまでアグレッシブなアタックは見せず、ボッタスはターン3でポジションを守り一気に後続を引き離していく。
後方ではセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が3番手を守り、ターン2でアウトからセルジオ・ペレス(レーシングポイント)がフェルスタッペンを抜いて4番手に上がった。ランド・ノリス(マクラーレン)はターン1でダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)を抜いて6番手、アレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)は、ターン1出口のテックプロバリアをヒットするが事なきを得て走行を続ける。
3周目にDRSが解禁となるとストレートでカルロス・サインツJr.(マクラーレン)がクビアトを抜いて7番手に上がる。クビアトは翌周にはランス・ストロール(レーシングポイント)とリカルドにも抜かれて11番手、さらにアルボンにも抜かれ12番手まで後退してしまう。クビアトはマシンに違和感を訴え、5周目にピットインしてミディアムタイヤに換えコースに復帰する。
フェルスタッペンはペレスを追い詰めていくがなかなか追い越しには至らない。6周目のターン1でインに飛び込み、ようやくオーバーテイクを成功させて4番手を取り戻した。
ブレーキに違和感を持つライコネンもピットインするがクビアトの後方となる。8周目にはニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)もピットインしている。
また7周目にはルクレールがペレスをパスし5番手まで順位を挽回している。
エンジンブレーキの不調に苦しむフェルスタッペンはペースが上げられずルクレールからのプレッシャーを受け、9周目に抜かれてしまう。ペレスもマクラーレン勢に対して防戦一方となっていくが、9周目にノリスがピットインしアンダーカットを仕掛ける。
ピットスタートのガスリーもこの時点ですでに11番手まで挽回し前のリカルドとアルボンの9番手争いに加わっていく。 ガスリーはすぐに彼らを料理してさらにターン13でストロールもパスし7番手へ。10周目にペレス、ストロール、リカルドがピットインするがライコネンの後方へと下がり大幅にアンダーカットされたかたちになってしまう。
11周目にベッテルがピットイン。これを機に上位陣にも動きが生まれ、翌周ボッタス、13周目にハミルトンがピットイン。上位勢はこれで順位関係を確定させた。
11周目にピットインしてアンダーカットを仕掛けようとしていたフェルスタッペンは、これをやめてステイアウトすることを選び、ミディアムのまま走り続けるルクレールの8秒後方で2番手を走る。しかしフェルスタッペンは14周目にピットインしガスリーの後方暫定6番手でコースに復帰。前のベッテルとのギャップは10秒に広がってしまった。
ここで首位ルクレールの13秒後方に2番手ボッタス、3番手ハミルトンはその3.8秒後方でファステストラップを記録。さらに2秒離れて4番手ベッテル、ステイアウトのガスリーを挟んで実質5番手のフェルスタッペンはベッテルの10秒後方を走り、ガスリーの前に出る。
その後方は各車がピットストップを終えて7番手ペレス、8番手ノリス、9番手サインツ、10番手はステイアウトするハース勢を抜いてきたクビアト。
ルクレールとのギャップをセーフティカーが入っても首位をキープされない8秒まで縮めたボッタスに、ピットからペースダウンの指示が出されるが、その後方のハミルトンはファステスト連発でギャップを2.5秒まで縮めてくる。
さらに20周目からはフェルスタッペンもプッシュを開始してファステストラップを更新。ボッタスのスリップストリームを使ってハミルトンが記録したタイムを、スリップストリームなしで上回ってきた。
上位勢は、首位ルクレールとの差を20秒以内に維持し、彼がピットインした時に前に出るべく戦っている。一方のルクレールはセーフティカーが入りロスなくピットインできることを狙い待ち続けている。これに対し後続は25周目を過ぎたところから動き始め、ボッタスはルクレールとのギャップを1秒に縮めていき、上位4台が数珠つなぎになっていく。
ボッタスは31周目のターン1でルクレールを抜き、ハミルトンも33周目のターン1でこれに続く。
24周目、11番手のグロージャンがターン15でロックしてコースオフし、15番手まで後退。そのままヒュルケンベルグとジョビナッツィに抜かれて17番手まで後退してしまった。これで10番手クビアトは後方リカルドまで3.5秒のギャップができた。
しかし30周目のターン3でリカルドがインに飛び込み、止まりきれずにオーバーシュート。クビアトはインにリカルドがいたためターンインできず、マシンを止めたところにリバースでコース復帰しようとしたリカルドがクラッシュ。
これでクビアトは17番手まで後退し、リカルドはピットに戻りリタイア。クビアトもマシンにダメージを負っており、その後ピットに戻ってリタイアとなった。
ルクレールは34周目にピットインしてガスリーの後方6番手でコースに戻った。レッドブルはこのためにガスリーをステイアウトさせ、ルクレールを抑え込んで20秒前方の4番手を走るフェルスタッペンを援護射撃する。
39周目、ガスリーが突然「パワーを失った」とスローダウンしターン5にストップ。そのままリタイアとなった。
フェルスタッペンには「ターン16出口の縁石は避けて走れ」と指示が出ており、脚回りにダメージを負った可能性もある。ガスリーのマシン処理のためバーチャルセーフティカー(VSC)となり、ここでノリスとマグヌッセンがピットインしてソフトタイヤに履き替える。グロージャンはピットに戻りリタイアした。
レース終盤、首位ボッタスと2番手ハミルトンは2秒以下の差で連なって走行。この時点でファステストラップを持っていたのはボッタスで1分44秒488だったが、ハミルトンが48周目に1分44秒166のファステストを記録してDRS圏内に入ってくる。
ボッタスは50周目にメインストレートでラッセル車のスリップストリームを使って1分44秒024のファステストを記録して逃げる。結局最後までボッタスは首位を守りきり、今季2勝目を挙げ、2位はハミルトンとなった。
3位に11.7秒後方のベッテル、4位に17.5秒後方のフェルスタッペン。
5位はルクレール。なお、ルクレールは48周目に後方ペレスと30秒のギャップがあったためピットインして新品のソフトタイヤに履き替え、50周目にタイムアタック。1分43秒009でボッタスの記録を塗り替えてファステストラップポイントを獲得した。
中団勢トップの6位はペレス、7位サインツ、8位ノリス、9位ストロールが入り、レーシングポイント勢とマクラーレン勢がダブル入賞。10位にライコネンがピットレーンスタートからの挽回を見せ、アルボンは2.699秒届かず11位でノーポイントに終わった。