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指原莉乃はHKT48で“裏方”の能力を開花させた グループ卒業は“演者”として大きな転機に?

2019年04月28日 20:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 HKT48の指原莉乃が本日4月28日をもってグループを卒業する。


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 2007年にAKB48の5期生としてオーディションに合格し、チームBとして渡辺麻友や北原里英などとともにアイドル活動を始めた指原。“さしこ”や”さっしー”の愛称で親しまれ、早くから冠番組(『さしこのくせに』TBS系・2011年放送)を持ち、同年には『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の水曜日レギュラーにも抜擢。テレビ東京の深夜番組『指原の乱』では、地方から上京してきたいちアイドルが業界の裏事情を暴いていくスタイルで行き当たりばったりの企画を見事にこなすなど、持ち前のトーク力を各方面で発揮していく。当時の彼女は、旧態依然とした芸能界にある種一石を投じるヒロイン像を孕んでいたように思う。着々とのし上がっていく姿は痛快であった。『AKB48選抜総選挙』では前人未到の4度の1位。圧倒的な人気を誇った。


 そんな彼女も2012年にHKT48へ移籍した後はプレイヤーとしてというよりプロデューサー的側面を強めていく。2013年には劇場支配人を兼任。まだ発足したばかりのHKT48で、アイドルになりたての後輩たちや、自分を慕って加入してきた若手たちを育てることに注力する。彼女がいち早く素質を見抜いた後輩の宮脇咲良や矢吹奈子は現在、日韓合同グループのIZ*ONEとしてデビューし、世界を舞台に快進撃を続けている。自身がプロデュースするアイドルグループ、=LOVEも順調だ。


 こうして振り返ると、彼女は「演者」と「裏方」の両面で才能を発揮している。流行り廃りの激しい業界で、どちらの分野でも一線級の人気を維持してきた。彼女にとってHKT48というグループは、自身の新たな能力を開花させた場所でもあったのだ。単純に所属グループを移籍したと考えるより、彼女のもう一つの才能を発掘するための場が用意されたと思った方が自然だ。


 そう考えた時、「演者」側の要素を担っていたアイドルを卒業することは、彼女にとってさして大きなことではないのかもしれない。もちろん、“アイドル・指原莉乃”が好きなファンも多いだろう。しかし、恐らくは今後も芸能界を賑わすタレントのひとりであり続けるだろうし、彼女が売り込んできた多くの後輩アイドルは今後も変わらずに活動していくはずだ。むしろ、「演者」としてまたひとつ大きな展開を迎えられる転機だと考えれば、今後のさらなる飛躍に期待大である。


 さて、そんな彼女が卒業するHKT48の最新シングル『意志』に収録された「いつだってそばにいる」は“旅立ち”や“別れ”をテーマにしたバラード。表題曲とはまた違ったテイストで、もちろん先日リリースされたAKB48「ジワるDAYS」(センターを指原が務める)とも全く異なる路線だ。


 歌詞は、旅立つ主人公がその場に残る相手に向かってやさしく語りかけるような口調で綴られている。言うまでもなく、卒業する指原とHKT48の関係を歌っているが、具体的な名詞や単語を用いてない分、一般的な卒業ソングとして聴くこともできるし、より普遍的な“旅立ち”の歌として捉えることも可能だ。


 彼女が主役の楽曲やソロ曲は、王道から少し外してみたり、コミカルな要素を持たせた楽曲が多かった印象があるが、この曲は奇を衒わずストレートに作られている。作曲は杉山勝彦。乃木坂46に提供した作品がグループの代表曲にまでなっている人気作家だ。


 「いつだってそばにいる」は、「それでも好きだよ」や「恋するフォーチュンクッキー」などとともに、彼女の歩んできた道を語る上では欠かせない楽曲になりそうだ。(荻原梓)