4月27日に行われた2019年のWRC世界ラリー選手権第5戦アルゼンチン競技3日目。3台のトヨタ・ヤリスWRCで挑むTOYOTA GAZOO Racingはオット・タナクが総合首位争いを繰り広げたものの、電気系のトラブルでデイリタイアを余儀なくされてしまった。
ラリー・アルゼンティーナの競技3日目はサービスパークが設置されているビジャ・カルロス・パスの西北にあるプニラ渓谷で6SS、ビジャ・カルロス・パス近郊のダートコースで1SSの計7SSで争われた。
前日、スピンにより総合3番手まで後退していたタナクは、SS9でステージ2位に入って総合2番手に浮上すると、続くSS10~11ではステージ最速タイムを記録して、首位を走るティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)との差を6.4秒まで縮めてみせる。
その後はヌービルが反撃したため、11秒差で迎えたSS14、タナクのヤリスWRCはステージスタート前にバッテリーの電圧が下がる症状に見舞われる。
なんとかステージへ走り出したタナクだったが、ステージ途中で電圧を失いストップ。再走行も叶わずデイリタイアとなってしまった。
チームはマシンをサービスパークへ持ち帰り、問題箇所を特定。タナクのマシンは修理され、競技最終日には出走する見込みとなっている。
タナクの離脱により、トヨタ勢の最上位にはクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)がつけることに。総合4番手で競技3日目に臨んだミークは、午前中のステージでブレーキトラブルやタイヤトラブルに見舞われながらも表彰台圏内の総合3番手に留まってみせた。
ミークは総合2番手のアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)とは17.5秒差、総合4番手の王者セバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)とは2.8秒差で、僅差の表彰台争いを演じている。
総合8番手で競技3日目をスタートしたヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)は着実にポジションを上げて総合6番手。前を走る総合5番手のダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)とは16.3秒差だ。
なお、SS10~11でタナクが連続ベストタイムを獲得したことで、ヤリスWRCは2017年に登場した現行WRカーのなかでもっとも早く通算200回目のステージ優勝を飾ったマシンになっている。
■デイリタイアしたタナク「今やどんなラリーでも勝てるレベルにあると思うけど……」
チーム代表を務めるトミ・マキネンは「午後のステージでクルマが止まるまで、オット(タナク)はここアルゼンチンでまたしても素晴らしい速さを見せてくれた」とタナクの走りを労う。
「現在トラブルの原因を調査中だが、ステージのスタート前にバッテリーの電圧が下がってしまったことは分かっている。だから、オルタネータかバッテリーに問題が起こったのではないかと疑っているよ」
「オットが順位を下げた今、我々はクリス(ミーク)の表彰台フィニッシュに期待をしている。午前中の終わりに少しタイムを失ったこと以外は、彼にとって良い1日だったと思う。明日はきっと、上りの難しい山岳ステージで接戦が繰り広げられるだろうね」
優勝争いを演じながらもデイリタイアを余儀なくされたタナクは「パフォーマンスに関しては、今やどんなラリーでも勝てるレベルにあると思うけど、やらなければならないことも残っている」と悔しさをにじませた。
「明日は自分たちができることをやる。まだシーズンは先が長いから、これからも攻め続ける」
表彰台争いを演じるミークは「(セバスチャン)オジエとのタイム差は広がったが、バトルはまだ続いているし、明日は激しい戦いの1日となるだろう」とコメント。
ラトバラは、午後のステージで「ウォータースプラッシュを通過した際、エンジン内部に水が入ってしまった」とアクシデントがあったことを明かしている。
「しかし、何とか再スタートを切ることができた。その後ミスをしたこともあり、最終的には5、6秒を失い、それが5位争いに響いてしまったよ」
「とはいえ明日もまだ戦い続けるし、自分達がどれだけできるのか、様子を見たいと思う」
競技最終日となる28日(日)はサービスパークの西南にあるトラスラシエラ山脈を舞台にSS16~18の3SSが行われる。最終ステージとなるSS18“コピナ-エル・コンドル”はステージ上位5名にボーナスポイントが与えられるパワーステージだ。
全3SSの合計距離は53.16km、リエゾン(移動区間)も含めた1日の総走行距離は287.07kmとなっている。