トップへ

a flood of circleの大樹のごとき陽性エナジー ロックンロールの花咲き乱れた自主企画を見て

2019年04月28日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 4月13日TSUTAYA O-EAST。その日は『Coachella 2019』が開幕したタイミング。次々に奏でられる多種多様な音楽を、日本でも生配信を通して楽しむ人がたくさんいた。そんななか開催された、ロックンロールバンドのみによるイベント『A FLOOD OF CIRCUS 大巡業 2019』。a flood of circleが主催する本企画は今年で4回目となる。世界で何が鳴ろうとも、孤独な野犬の集いし場所に、ロックンロールの花は咲き乱れるのだ。


(関連:AFOC 佐々木亮介が問う、バンド音楽に対する問題意識「ラップにこそロックの歴史が息づいている」


 場内へ足を運ぶと、まず目につくのは手作り感満載の装飾。“サーカス”をテーマに彩られた鮮やかな飾りたち。かわいいし、楽しい気分を高めてくれる。フェイスペイントやフードエリアも充実。特に店員が渡邊一丘(Dr)の幼馴染だという『SOL’S COFFEE』のローリングサンダーパンケーキは、「いいね!(千鳥の大悟が最近推しているギャグ風)」でした。


 ここからは全7アクトを順に。a flood of circleと同じSEで登場した爆弾ジョニーは、「終わりなき午後の冒険者」に始まり、中盤で「Summertime Blues II」(a flood of circle)のオマージュを挟みつつ、「HOPE」、「かなしみのない場所へ」、「イミナシ!」などを披露。多彩な曲調やビートを発射台に、大宇宙へぶっ飛ぶそのメロディは、ロックンロールの本分を今回の出演者のなかで最も色濃く体現していた。欧米では、アメリカンルーツミュージックに“根ざした”ものをロックンロールと呼ぶ。つまり自分のスタイルでやるってことが自明になっている。形式なんてクソくらえ。衝動の洪水たる彼らの雄叫びが、会場中に誇り高くこだましたのだった。


 続いてTHE KEBABS。佐々木亮介(Vo&Gt/a flood of circle)、新井弘毅(Gt/ex.serial TV drama)、田淵智也(Ba/UNISON SQUARE GARDEN)、鈴木浩之(Dr/ex.ART-SCHOOL)によるロックバンド。1968年製作の映像作品『ロックンロール・サーカス』におけるザ・ダーティー・マックを彷彿とさせるが、佐々木の「ほんと友達とやってるって感じ」という弁のとおり、好きな音楽を好きにやってるという印象。ゆえにホームパーティ的な居心地のよさがあり、こちらは微笑ましく眺めるのみだ。ただし爆音は相当なもの。特に田淵は、この日のベーシスト中No.1の音圧だった。


 お次はa flood of circleと同期(メジャーデビューが同日)のTHE BAWDIESだ。黒っぽいノリを血肉とする彼らは、同じく黒人音楽をルーツとするThe Rolling Stonesのようにグルーヴのポケットを作るのとは違い、ベースが刻み、ドラムがビシバシ決めることで疾走感を演出する。それでいてキモとなるギターのホンキートンク感を、TAXMANがアウトロやMCの隙間にねじ込む。間の作り方が年々うまくなっている感じだ。もちろんJIMの全力プレイも実に爽快。そしてThe Rolling Stonesのように、いなたい楽曲で大会場を沸かせること、つまりエンタメへ昇華させることの意義をよくわかっているのが、彼らの素晴らしい点である。というわけで、この日も『スター・ウォーズ』寸劇を楽しませてもらった。一番楽しんでいたのは本人たちかもしれないけれど。


 「ロックシーンにドデケエ穴あけたろうぜ!!!!」(杉野泰誠/Vo&Gt)と煽り、歴戦の猛者たちに真っ向勝負を挑んだclimbgrow。マイナースイングを基盤に、動きは静謐、音でぶん殴るタイプのギター、ピックも指もお手の物な図太いベース、上半身は正統派ながらキックでフックを生み出すドラム、そして暴風雨のごときボーカルが渾然一体となり、その場の空気を飲み込んでいく。闇が深まれば光も濃くなるという極限のカウンターが、聴く者の人生を丸ごと揺さぶる熱演。観客の心のなか、そこに何かのスイッチがあるならば、パチンと動く音が確かに耳へ届いた。


 そこから結成30周年イヤーをひた走るthe pillowsへ。「Rebroadcast」、「About A Rock’n Roll Band」、「ハイブリッド レインボウ」……the pillowsは歌う、すべてのルーザーと、それでも今を闘い抜く人のために。the pillowsは演る、すべてのバンドと、ロックに夢とロマンを抱き続ける人のために。それがどんな時間であったのか。その答えは、なんとも言えない表情を浮かべながらベースを弾く、有江嘉典の顔が物語っていた。


 佐々木亮介のラブコールに応え、復活を果たしたDOES。オンステージ後、何も語らぬまま響き渡ったのは、「明日は来るのか」だった。デビューシングルにして、活動休止前ラストライブの最終楽曲でもある。その後も畳み掛けられるはち切れんばかりの爆演。彼らはいわゆる“4つ打ちブーム”につながる2拍3連の火付け役であり、谷川俊太郎ばりに人間世界の深淵を綴る言葉と、もののあはれを宿すメロディは、時代をひょいっと越えて今なお輝きを放っている。プレイ中、氏原ワタル(Vo,&Gt)はこうもらした。「あれだな、バンドっていいな」と。


 満を持して真打登場。6組の汗に濡れる襷を受け取ったa flood of circleは、いつにも増してドーン! と爆発。新アルバムのリリース直後ということもあり、アドレナリン全開で狂騒をスパークさせていく。「Dancing Zombiez」で佐々木はフレットの限界を飛び越えるロイ・ブキャナンばりのソロを披露。「Sweet Home Battle Field」ではHISAYO(Ba)の美声も轟く。「いいバンド呼びすぎたな。今日ここにいる人、マジで世界中に自慢したいよ」と佐々木。この男は歌詞も大切にしてきたわけだが、いま最も言いたいのは、「もうウキウキしちゃうよ、生きてんのサイコー」ということ。実にでっかい、そして明るい。その大樹のごとき陽性エナジーを旗印に、バンド陣も、オーディエンスたちも、すべての人が集い、万感の絶景が現れたのである。アンコールで「プリティ(長谷川プリティ敬祐/go!go!vanillas)を待ってる」と未来へ向けた誓いを残し、祭典の幕は降ろされたのだった。(取材・文=秋摩竜太郎)