2019年04月28日 10:11 弁護士ドットコム
「夫が失踪して15年になります。もう1度結婚したいと思っているのですが…」。東京都に住む会社員のミハルさん(50代)は悩んでいます。
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ミハルさんには2人の子どもがいます。下の子が2歳のころ、いつもと変わらない様子で夫は会社に向かったそうです。しかし、その日を最後に、夫は姿を消してしまいました。
会社にも行っていないことが分かり、警察にも届けたというミハルさん。「いつかは帰ってくる」と信じながら、1人で子ども2人を育ててきたといいます。しかし、夫はみつからず、そのまま15年の月日が流れました。
そんなミハルさんは1年前に飲み屋で知り合った年下の男性にアプローチされ、交際を開始。男性は「結婚について前向きに考えてほしい」と言っているようです。
15年も行方が分からない夫との関係を清算するには、どのようにすればよいのでしょうか。和賀弘恵弁護士に聞きました。
「ミハルさんのように、長期間経っても相手と連絡がつかないまま離婚したい場合は、話し合いによる『協議離婚』はできません。そのため、裁判所で離婚を審議する『裁判離婚』となります。
本来は、離婚調停を先にしなければ、離婚裁判はできません。しかし、今回のように相手と連絡がとれないような場合には、例外として調停をせずに裁判を提起できます」
相手の連絡先がわからなくても、裁判を進めることができるのでしょうか。
「その場合には、『公示送達』という特別の手続きで、訴状を相手に送達することが可能です。
また、裁判ですから、民法に規定されている離婚事由があるかどうかが判断されます。ミハルさんの場合は、相手と連絡がとれずに、生きているのか死んでいるのかさえ分からず3年以上経っていることになります。そのため『配偶者の生死が3年以上明らかでないとき』(民法770条1項3号)に該当し、離婚できます」
では、夫が失踪してから3年未満の場合には、どうしたらいいのでしょうか。
「3年未満でも、裁判での離婚が可能な場合があります。
例えば、夫が他の女性と不貞関係にあった場合には、『配偶者に不貞な行為があったとき』(民法770条1項1号)に該当し、離婚できます。
その他、生活費さえ入れてくれないような場合には、『配偶者から悪意で遺棄されたとき』民法770条1項2号)に該当する可能性があります。また、夫婦関係が破たんし回復できないと判断されれば、『その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき』(民法770条1項5号)に該当するとして離婚できます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
和賀 弘恵(わが・ひろえ)弁護士
大手食品メーカー、行政職員の経験を経て、目の前のただ1人の人を救う仕事をしたいと思い、弁護士を目指しました。現在は、的確な法的解決のご提案に加えて、カウンセリング機能も果たせる弁護士を目指して奮闘中です。
事務所名:みつ葉法律事務所
事務所URL:http://www.mitsuba-law.net