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金子大地が語る、NHKドラマ初主演でゲイの少年役に挑んだ心境 「ここまで役と向き合うのは初めて」

2019年04月27日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 NHK総合にて「よるドラ」枠で放送中のドラマ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』。原作は小説投稿サイトに掲載されたものを書籍化した浅原ナオトの小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』だ。


 主人公で、ゲイであることを隠している高校生・安藤純を金子大地、そして、純にBL(ボーイズラブ)マンガを買っている姿を目撃されてしまう同級生の三浦紗枝を藤野涼子が演じる。さらに、純の幼馴染の同級生・亮平役に小越勇輝、純のゲイ・パートナーであり、同じくゲイであることを隠しているマコトに谷原章介が扮するなど、旬のキャストと演技力の確かな俳優陣が送る、青春ドラマに仕上がっている。


 NHKドラマ初主演にして、この複雑な題材に挑むことになったのが、現在22歳の金子大地だ。自身にとって特別な作品になったと語る金子に、共演者・スタッフと共に作り上げた本作について、話を聞いた。


■「言葉にできない感情を体験することがすごく多かった」


ーー台本を読んだ感想はいかがでしたか?


金子大地(以下、金子):ゲイであることに悩んでいる純を演じることになり、ここまでゲイやLGBTについて向き合ったり考えたりすることがなかったので勉強になりました。原作『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を初めて読んだときは、すごく感動しました。LGBTで悩んでいる人が日本には多くいて、そういう人たちにも届く作品になればいいなと、みんなで話しながら撮影していきました。僕もこの原作を読む前は、LGBTに向き合ったことがなかったですし、今も完全に理解できたわけではないですが、意識するきっかけになりました。原作を読んだ時に感じた気持ちを、テレビドラマを通して伝えられたらいいなと思います。


ーー純と金子さん自身で、似ている部分はありましたか?


金子:僕も、純のように考えごとが多いし、人に言えないことがあったり、壁を作りやすいので、その部分は共感できるなと思いました。純が“普通”にこだわることも、少しわかりますし、家庭を持っているマコトさんを好きになるというのも、自分は経験したことはないけど、人を好きになったことはあります。でも、理解して演じたというよりも、演じ終わったから理解できたのかな、という感覚です。その時はお芝居をしているから無我夢中で、現場で「なんだ、この感情は」というような、言葉にできない感情を体験することがすごく多かったんです。撮影は終わったけど、純のことを100パーセント理解できているわけではなくて、もう1人の純に「お前は全然わかってないよ」と言われそうな気もします。でも、それはいいことなのかなと思っていて、僕が芝居についてずっと考えていたのと、純が悩むことがうまくリンクできたかなと。


ーーこの作品は、言葉にできなかったり、名前をつけられない感情や関係性をとても大事に扱っていますよね。


金子:そうですね。それをテーマとした作品でもあったので、みんなでそこに向かっていきました。


ーー純が考えていたり悩んでいる様子が、目の動きを通して感じられました。


金子:目の動きは意識しました。純が今何を考えているのか、表情や身体の動きを通して伝えたいなと。やっぱりテレビドラマなので、見ている人にしっかり伝わるような演技を心がけました。


ーー第1話の初めは、純とマコトのラブシーンから始まりました。谷原さんとは何か話されましたか?


金子:谷原さんがクランクインしたその日に、キスシーンが3つくらいありました(笑)。でも、役に入れていたこともあり、すんなり進んでいきました。原作と台本を読んで、しばらくしてからマコト役が谷原さんだと知ったのですが、まったく違和感がなく、すぐに「マコトさんだ」と思えましたし、谷原さんと共演することができて嬉しかったです。


■「どんな人にもあてはまるドラマだと思う」


ーー紗枝とマコトと亮平、純から見てそれぞれのどんな人か教えてください。


金子:マコトさんは、純が出会って惹かれるものがあって好きになった人です。普段はゲイであることを隠して生活していて、でも2人だけは互いに知っている。普段は人に隠している顔が出る関係性だと思いますが、そこにも壁はあるのかなと。


 亮平は幼馴染で何でも話せて小さい時からの思い出もたくさんある。純と亮平というよりも、金子大地と小越勇輝として、仲良くなれたらいいねという話をしました。ゲイであることを隠してはいるけど、親友であることは変わらないという関係だと思います。


 紗枝は腐女子であることを隠していて、純もゲイであることを隠しているから、どこか共通点はあるのかなと思います。それで傷ついた過去もあったりして。純は壁を作っているんですけど、紗枝は純を振り向かせようと、積極的に発信していく役です。自分のことを気にかけてくれるから、紗枝に対して感情表現が出しやすいのかもしれないです。純は「普通の家庭を持ちたい」とも思っているので、その点では「この人だったら自分を変えれるかもしれない」と思わせてくれる女性でもあります。回を重ねることによって、2人の関係性が変わっていくので楽しみにしていてほしいです。


ーー現場で作品について話し合ったりは?


金子:監督やプロデューサーさんには、僕の考えにかなり寄り添ってもらえたと思っています。クランクインインする前にも6~7回くらいリハーサルをして。みんなこの作品についてすごく考えていたし、それぞれが作品や役に向き合っていて、だからこそ完成できた作品だと思います。


ーー金子さんにとって特別な現場になった?


金子:そうですね。みんなが一つのものに向かっていけるのがすごく嬉しかったです。NHKドラマ初主演のチャンスをいただいて、感謝の思いもありますし、いい作品にしたいという気持ちが強くありました。みんなの人柄もあって現場の雰囲気もよくて、お芝居って楽しいなと思いました。一人じゃ絶対にできないし、みんなそれぞれ熱いものを持っていたと思います。僕自身、ここまで役と向き合うのは初めての経験でした。役者は、表面的な芝居で済むこともあるのかもしれないのですが、それでは、この作品の主演はできなかったと思います。自分の中でずっと忘れられない作品になりました。


ーー第1話を見て、心がふと軽くなるような作品だと感じました。今後、それぞれの関係性がどう変わっていくのか、あるいは変わらないのか、とても楽しみです。


金子:ありがとうございます。ゲイや腐女子の登場人物が出てきますが、どんな人にもあてはまるドラマだと思うんです。理解できない人も出てくるだろうし、実際そういう登場人物もいます。でもやっぱり、純や紗枝みたいな人もいるから、そういう人に何か感じてもらえたらいいなと。僕も原作を読む前は、腐女子やゲイ、LGBTについて考えたことがなかったけど、深く深く考えていくと、いろんなものを感じたし、それをドラマを見た人にも伝えられたらと思います。イメージや先入観、肩書きで人を決めるのはすごく簡単ですが、そうではなく、一人の人間として見ることができれば、ちょっとずつ現実も変わるのではないかと思います。(取材・文=若田悠希/スタイリスト=Hideaki Tatematsu(TEN10)/ヘアメイク=Emiy)