ホンダがF1第4戦アゼルバイジャンGPにスペック2のパワーユニット(PU/エンジン)を投入した。2017年にスペック2を投入したのが第5戦スペインGPで、2018年は第7戦カナダGPだったので、かなり早いタイミングと言っていいだろう。その理由を田辺豊治F1テクニカルディレクターは、次のように説明した。
「前戦中国GPでの(ダニール)クビアト選手のPUトラブルを解析した結果、初戦より使用してきたICE(内燃機関)に品質観点での課題を確認しました。したがって、今回のラウンドから4台全車にアップデートしたスペック2のICE投入を決めました」
トロロッソのダニール・クビアトのスペック1にトラブルが発生したことで、図らずもホンダは今回のスペック2投入を決断したわけだ。
だが、このスペック2は、スペック1に発生したトラブルを改善したという仕様ではない。じつは、クビアトのICEに発生したトラブルの原因はまだ完全には突き止められていない。では、なぜスペック2を投入したのか。
「スペック2の開発は、スペック1に何かあったときに、できればエンジンを交換するのに合わせて、スペックも上げたいと以前から準備してきました。中国GPではトロロッソにそのような状況が訪れたわけですが、中国GPの時点ではスペック2は間に合っていませんでした。しかし、バクーへパワーユニットを出荷するタイミングとなった先週末(4月19~20日)に4台準備が整ったので入れることにしました」(田辺TD)
さらに、スペック1で問題が起きた箇所はスペック2では違う仕様となっているので、同じ問題は起きないという。そのうえで「万が一、問題が起きたときにも、ICEにダメージが及ばないように、(センサーの)データセッティングを変えるという対処をとっている」(田辺TD)という。
つまり、今回のスペック2は、クビアトのトラブルとは関係なく開発されたものだが、投入を決断するきっかけとなったのは、クビアトのトラブルが関係していたという複雑な事情となっている。
ちなみにトラブルが起きたクビアトのスペック1は「残念ながら、ICEは使用できない状態」だったが、それ以外のコンポーネントは再使用が可能だったという。また中国GPのフリー走行3回目にクラッシュしたアレクサンダー・アルボンのパワーユニットは、まだ解析中とのことだが、少なくともICE以外は使用可能だという。
そのため、アゼルバイジャンGPではスペック2のICEは4台すべてに投入されているが、トロロッソの2台はICE以外でこれまで使用しているもの(中国GPで投入した2基目)を搭載し、レッドブルはICE以外にもTC(ターボチャージャー)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)、MGU-K(運動エネルギー回生システム)も今回から2基目を使用している。