2019年04月26日 18:21 弁護士ドットコム
15歳の時から、当時在校していた札幌市立中学の男性教師にわいせつな行為をされ、その後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、フォトグラファーの石田郁子さん(41歳)が教師と札幌市を相手取り、約3000万円の損害賠償を求めて提訴した裁判の口頭弁論が4月26日、東京地裁で開かれた(田中秀幸裁判長)。
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まず争点となっているのが「除斥期間」の問題だ。民法では不法行為から20年間を過ぎれば損害賠償請求権を失う除斥期間がある。石田さんが性的被害にあっていた訴えているのは、15歳から19歳まで。石田さんによると、その後の人生で、不安や生きづらさを感じるようになり、2016年2月にフラッシュバック症状が起きてPTSDを発症したと診断された。
被告の札幌市や教師はこの除斥期間を過ぎていると主張、訴えの棄却を求めている。一方、石田さんの代理人は、PTSDが発症した時点から除斥期間が始まるとして、双方の主張は対立。次回の口頭弁論が開かれる6月14日にも、除斥期間について裁判所の判断が下される可能性がある。
この日の口頭弁論では、石田さんが意見陳述を行い、訴えを起こした理由を語った。
「一番大きな理由は、私が受けたような被害を他の子どもたちに受けてほしくないという思いからです」「私は3年前に何度も被告・札幌市に申し入れをしてきましたが、市は現役の生徒の安全に全く配慮せず自らの保身だけ考え、適切な事実確認を行いませんでした」
また、生徒が教師から受ける性被害を「残酷」と述べ、「ただでさえ性被害で心身にダメージを受けたのみならず、学校の先生や大人という、子どもが頼りにする立場や力関係を利用されることで、当たり前の信頼関係や夢も傷つけられました」と訴えた。
石田さんはここ数年になってからやっと自分が性被害にあっていたことに気づいたが、周囲から「なぜそんな長い期間、被害にあったのか」「なぜ今さらいうのか」と言われ、さらに苦しい思いをしたという。
傍聴席には、大勢の女性が訪れていた。口頭弁論後、メディアの取材に応じた石田さんは「男性にも関心を持ってもらいたいと思っています。性被害を受けるのは女性が多いのですが、女性が声を上げて解決するだけでなく、男性も加害者、被害者になる可能性がありますので、みんなで考えてほしいです」と話した。
除斥期間については次回、判断が下される可能性がある。性被害の判例としては、約30年前の幼少期に性的虐待を受け、PTSDやうつ病を発症したとして、釧路市出身の女性が親族の男性を訴えた裁判があった。札幌地裁の一審では、20年の除斥期間を経過していたとして女性の訴えを退けた。しかし、札幌高裁の控訴審判決(2014年9月)では、うつ病を発症した2006年が除斥期間の起算点と認められ、逆転勝訴している。
石田さんは、子ども時代の性的被害と除斥期間の関係について、こう語った。
「子ども時代にあった性被害について、すぐに気づくことは子どもには難しいです。大人になって体に不調が出てから、やっと気づく場合もあります。医療関係者の間では、被害から20年、30年経って発症するのは当たり前だそうですが、世の中には知られていません。子ども時代に性被害があっても、時間が経っているからとあきらめてしまう人もいます。そうしたギャップがこの裁判で埋まってほしいです」
(弁護士ドットコムニュース)