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『ストロベリーナイト・サーガ』悲惨な事件の裏テーマは愛情の尊さ? 「ソウルケイジ」の真相

2019年04月26日 11:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 殺人事件の中にも色々な気持ちの絡み合いがある。『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)第3話では前回の続きである「ソウルケイジ」の後編としてバラバラ殺人事件の真相が明らかになった。前回、「高岡賢一(寺脇康文)と思われていた男性は別人である」というところで終わっていたが、実は高岡はもともと内藤和敏として生きていたことが新たにわかった。内藤は、事故で植物状態の息子の治療費が必要で保険金を受け取るため、自殺した高岡と戸籍を取り替えていたのだ。そして本当の高岡の自殺後、高岡として生きてきた。自身の息子が植物状態で、息子と共にできなかったことを耕介(堀井新太)と過ごすことで心の隙間を埋めていたのだ。その一方で、耕介もまた同じ境遇の中川美智子(山谷花純)と出会い守ろうと必死になる。


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 巧妙な手口の殺人事件、予想もしない展開で終始ハラハラさせる本作は、前編での伏線が後編で全て回収されスッキリとする構成であった。第3話では、姫川(二階堂ふみ)の捜査スタイルへの言及もあり、ガンテツ(江口洋介)や日下(神保悟志)から見た姫川の印象なども語られる。姫川は点と点をつなぎ合わせることはうまいが、あくまで憶測でしかない状態でも闇雲に突っ走ってしまう。そんな姫川の姿を、日下は心配している様子だった。姫川については「(姫川の捜査が間違っていたら誰か傷つく人が出てしまう。)それで人が傷つくのが怖い」と話し、勝ち負けではないところで姫川を気にかけていることがわかった。嫌味ばかり言う日下や、ガンテツも、実は姫川を気にかけ、どこか愛情をかけているのではないかと感じさせた。


 さらに、今回の事件のテーマは父性である。それに伴い、署の人間も自身の家族について考えるきっかけになっていた。家庭があり、子供のいる石倉保(宍戸開)や日下は、自身の家庭と向き合わなければならない現状に直面し、親として苦悩している様子が伺えた。日下は「親が真っ直ぐ生きないと、子供も真っ直ぐ育たない」と言う。これは実に日下らしいセリフで、日下は以前、姫川のような捜査をし、誤認逮捕をしてしまった過去がある。それにより傷つく人が現れてしまうことを恐れている人物ゆえのセリフであった。


 さらに第3話では、姫川が「人は罰だけでは生きられないから」と言う。これは、罪を償い、罰を受けるだけでは人は前を向いて生きていけないということを表しており、高岡が耕介を育てていたのは罪の償いだけではなく、真の愛情を持った行為であったということだろう。


 名言揃いの今回は、人生や家庭を省みる時に、ふと心に留めておきたいキーワードが散りばめられていた。目を背けたくなるほど悲惨な殺人事件を描きながらも、人の心に寄り添い愛情深いストーリーを描く『ストロベリーナイト・サーガ』。姫川を思いやる家族や、前回姫川を家まで送った菊田(亀梨和也)の優しさ、さらにガンテツや日下まで、姫川を支え、時にはきつい言葉をかけながらも背中を押している。第3話は、誰かを気にかけ、愛情を向けるということが生活の中にさりげなく織り込まれたドラマとなった。事件の真相解明だけではなく、繊細なキャラクターの描写にも注目してほしい。


(Nana Numoto)