2019年04月23日 10:31 弁護士ドットコム
「ナイフか何かの刃物で刺されたみたいです」「犯人はまだ捕まっていません」ーー。ツイッターにウソの投稿をしたとして、警視庁が4月8日、20代の男女4人を書類送検した。
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NHKなどによると、4人は3月15日夜、人が倒れる様子をムービー撮影し、ツイッターで動画の拡散を呼びかけたという。逃走中の犯人を特定できないか、という内容だった。
ツイートには、「町田市」で撮影したとあったことから、警視庁町田署に複数の通報が寄せられたという。署員が事実関係を確認し、ウソだと判明した。
今回の4人の容疑は、「軽犯罪法違反(虚偽申告)」。ネットにウソの書き込みをすると、「偽計業務妨害罪」や「威力業務妨害罪」に問われることも多いが、今回のケースはどう違うのだろうか。小沢一仁弁護士に聞いた。
ーーなぜ軽犯罪法なのでしょう?
「軽犯罪法1条16号は『虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者』を拘留(=1~29日)または科料(=1000~9999円)に処する旨定めます。
犯罪予告事案では、実行場所を示唆することが多いことから、管理者の業務を妨害するものとして『業務妨害罪』の嫌疑で刑事事件化することが多いと思います。
私見では、本件では単に犯罪の状況を示しただけで、犯行現場を特定することが困難であったことから、『軽犯罪法』で処理したのではないかと思います」
ーーツイートは「申し出」に当たる?
「少なくとも問題の映像を見る限りは、書類送検された者は警察官など公務員に『虚構の犯罪の事実』を申し出ていません。書類送検するにあたり、その点をどのようにクリアしたのか必ずしも明らかではありません。
可能性としては、(1)実際に動画の閲覧者に公務員がおり、書類送検された者もその可能性を認識していた、または、(2)事情を知らない閲覧者を利用して、警察に通報させたかのいずれかではないかと思います。
私見としては、(2)の可能性が高いと思っています」
ーー閲覧者に「虚偽の犯罪」を申し出させたのが問題だと。
「このケースのように、動画の内容が虚偽であることを知らない閲覧者を通じて犯罪を実行することを、『間接正犯』といいます。
自らは犯罪を実行しなくても、事情を知らない第三者をあたかも道具のように利用したときに、利用した者が処罰されないことは不合理ですから、これを処罰するために用いられる法理論です。
また、実際に動画を公開した者は1人のはずなのに、なぜ4人書類送検されているのかという疑問もあるかと思います。
これは、出演者として虚偽の犯罪をでっち上げたこと、この動画がいわゆる『ドッキリ動画』の趣旨であることが明らかであること、趣旨に照らしインターネットで公開することは4人の共通認識であったと考えられることが影響していそうです。
これらが『実行共同正犯』(刑法60条)と評価され、『一部実行全部責任』の原則(今回のケースで言えば、出演しただけの者にも刑事責任の全部を負担させるもの)に基づき書類送検されたのだと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
小沢 一仁(おざわ・かずひと)弁護士
2009年弁護士登録。2014年まで、主に倒産処理、企業法務、民事介入暴力を
扱う法律事務所で研鑽を積む。現インテグラル法律事務所シニアパートナー。
上記分野の他、労働、インターネット、男女問題等、多様な業務を扱う。
事務所名:インテグラル法律事務所
事務所URL:https://ozawa-lawyer.jp/