F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は2019年F1第3戦中国GPだ。
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☆ ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)
予選=17番手、決勝=16位
中国GP開催前に行われたバーレーンテスト二日目にメルセデスW10を体験しトップタイム。初日FW42とは“4.6秒”も違い、最速マシンの感触をつかむ絶好のトレーニングだった。
予選ではロバート・クビサとここでも接戦、0.028秒まさり直近のランス・ストロール(レーシングポイント)に初めて0.961秒差まで接近。レースペースも向上、前進の兆しをチームに示す。
☆☆ ピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)
予選=6番手、決勝=6位
現在のレッドブルRB15が空力特性上、ピーキーな挙動なのはマックス・フェルスタッペンも認めている。そのためチームに来たばかりの彼がセットアップに悩むのはある意味仕方がない。
レース終盤、最速ラップ1点ボーナスを狙わせたチームの指示に1分34秒742で応えた。レース中のアタックランは周囲の状況も違い、ライン自由度も狭まるがこのアタックチャンスを活かした。3戦目に一歩前進。
☆☆ セルジオ・ペレス(レーシングポイント)
予選=12番手、決勝=8位
強烈なロケットスタート、4台をかわし12番手から8番手へ。そしてそのポジションをワンストップ戦略で守り切った。ジャンプアップした後、ずるずる落ちずに結果につなげるエースの仕事。
☆☆ キミ・ライコネン(アルファロメオ)
予選=13番手、決勝=9位
インからアウトから次々パッシング・ショットをきれいに魅せた技(テニス界のフェデラーみたい)。開幕から8位/7位/9位、もしキミがアルファロメオに行かなかったら今年の中団勢バトルは薄味になっていただろう……。
☆☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
予選=PP、決勝=2位
今年のピレリはアタック中の1周に、“グリップ・エネルギー”のデグラデーション(性能劣化)が進む。それをつかみとり、セクター最速タイムはなくても一周をまとめてPP獲得。スタートのホイールスピンさえ無ければ2勝目はありえた。
☆☆☆ シャルル・ルクレール(フェラーリ)
予選=4番手、決勝=5位
バーレーンGPで煌めくスターとなっても有頂天にならず、チームプレイヤーとしてオーダーを受け入れた。
そこが同年代マックスとの性格の違い。上海では初日からリズムをつかめず、冷却系問題がありロングランができなかった。スタート後のペースにそれが響き、ベッテルとの順位入れ替えに……。
次のアゼルバイジャンGPでは昨年のザウバーで驚異の6位入賞、“アンダーステア・バランス”に仕上げたヘッドワークが印象に残った。セットアップ能力が彼の速さの源(みなもと)でもある。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
予選=5番手、決勝=4位
マシンとパワーユニット(PU/エンジン)のリミットを使い切るようなマックス・ドライビング。その危うさがデビューからつきまとっていたが、それがしだいに消えてきた。現在13戦完走、すべて上位入賞、自己ベスト記録を更新中。
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
予選=3番手、決勝=3位
イタリアのメディアは昔から一喜一憂で、地元メディアの記者たちから批判されている。だがドライビングが急に下手(?)になったわけではない。
19周目、バックストレート・エンドの14コーナーで、フェルスタッペンとの攻防戦。わざとインを空けて相手を誘いこみ(タイヤロックさせ)、自分は大回りの“スロー・イン・ファストアウト”。出口のクロスラインを狙い抑えこんだ。フェルスタッペンの気性を読んだトリック・プレーはさすが。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
予選=2番手、決勝=優勝
グランドスタンドに「チームLHチャイナ」応援団がいっぱい。上海でさらにファンが増えた勝負師、独走の75勝目。前回コラムでも説明したように金曜から挽回に徹し、セットアップと走りを自己修正していった。王者の思考力と集中心のなせる技だ。
☆☆☆☆ ダニエル・リカルド(ルノー)
予選=7番手、決勝=7位
どうしてもレッドブル・マシンの残像が消えず、ルノーにフィットできないもどかしさがあった。上海では初日からコーナー・アプローチがスムーズ。進入ラインを変えながらブレーキング・タッチを確認。深く入り、最大踏力で瞬間減速する感触が戻ってきた。
トップ3チーム勢に次ぐベストの予選7番手、決勝7位。3レースかかったが蘇ったリカルドが、ヨーロッパ・ラウンドを面白くしてくれそうだ。
☆☆☆☆☆ アレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)
予選=不参加、決勝=10位
心も体も痛かったFP3のハード・クラッシュ、FP3最終コーナーの事故はルーキーならではのミスだろう。スロットルをゆるめ、イン側に巻き込みスピンしていれば軽微なダメージで済んでいたかもしれないが……。
初めてのピットレーン・スタートにも落ち着いているように映った。がむしゃらに行くのではなく19周目までに着実に11番手へ、終盤に2ストップ作戦のロマン・グロージャン(ハース)に迫られた。
10位1点をめぐるドッグファイト、青旗のタイミングを見極めながらルーキーは競り勝った。10ポジション・アップレース、3戦目のこの結果は大いに称えられるべきだ。ファンが選んだ“ドライバー・オブ・ザ・デイ”に異議なし――。