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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『キングダム』『愛がなんだ』

2019年04月19日 19:11  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部のピュアガール担当・大和田が2本のイチオシ作品をプッシュします。


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■『キングダム』


 原作は、『週刊ヤングジャンプ』にて連載、現在までに53巻まで単行本が刊行され、累計発行部数3800万部超(2019年3月現在)を記録する原泰久の同名コミック。紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に、大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年・信と、中華統一を目指す若き王・エイ政(後の秦の始皇帝)の姿を描く。


 何と言っても、全体を通して壮大なスケールで描かれる映像に、幕開けから圧倒される。クランクインとなった中国でのロケは20日間に及び、スタッフだけで約700人、兵士役のエキストラものべ1万人が参加した。舞台設定と同様の春秋戦国時代の宮殿を再現したセットを戦場とし、繰り広げられるのが役者たちの魂がぶつかり合うアクションの演技。ジャッキー・チェンのアクションチームなど最高峰のスタッフが集結し、アクション監督の下村勇二は、本格的アクションに初挑戦となった信役の山崎賢人について「頭で考えるより本能で動いた時に、ものすごい跳躍やアクションをするんです」とポテンシャルの高さを評価している。 「細マッチョに仕上げて欲しい」というプロデューサーの要望に、ささみとブロッコリーばかり食べて過ごしていたという話から彼のストイックさも伺えるだろう。


 プロデューサーの松橋真三が「原作の先生が脚本に参加していることは、原作ファンの皆さんにとって大事なことだと思うんです」と話す通り、原作者の原も脚本に携わっている。原作の5巻「王都奪還編」までを描く本作を2時間14分の長さで描くために、どの部分を変えるか、時には12時間ぶっ続けの脚本会議も行われたそう。たくさんのファンに愛される本作だからこそ、映画化において最高の体勢で臨んでいる。


 山崎、吉沢亮、橋本環奈が並ぶシーンをみたとき、この壮大なプロジェクトの顔として堂々と佇む若手俳優たちの3人が、とても誇らしく感じ、今後の日本のエンターテインメントを引っ張っていく存在としての期待が湧き上がってきた。また、彼らを演技の面で支え、本作の重要人物である王騎演じる大沢たかおの絶大なる存在感と楊端和役の長澤まさみの佇まいにも魅了されるはずだ。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。


■愛がなんだ


 直木賞作家・角田光代の同名小説を、『パンとバスと2度目のハツコイ』の今泉力哉監督が映画化した恋愛映画。主人公の28歳のOL・テルコは一目ぼれしたマモルに想いを寄せている。自分の時間のすべてをマモルに捧げ、仕事を失いかけても、親友に冷たい目で見られても、マモルがいてくれるならテルコはこの上なく幸せだと思っている。テルコと最も近しい友人である葉子、葉子に想いを寄せるナカハラ、マモルが憧れる年上の女性すみれ、ぞれぞれの「好き」の形が描かれる。


 こちら側からは一方的な片想いに見えるテルコだが、本人からすれば、ここぞという時に自分に助けを求めてくるマモちゃんは、自分に好意があるのでは? と思ってしまう気持ちもちょっとだけ分かる。本作には、理解できない/できるのテルコの気持ちと行動が散りばめられていた。


 テルコが葉子やナカハラにマモちゃんのことを話すパートでは、その会話の中で見えてくる、それぞれの恋愛観の違いが面白い。特にテルコとナカハラの「ストーカー同盟の反省会」。劇中で片想いをしている同士の2人が、腹を割って話す機会が2回あるのだが、ナカハラはいつも最後に「幸せになりたいっすねぇ」と呟く。ナカハラは「好き」の先に「幸せ」を口に出して求めている、だがテルコは「うるせぇバーカ」とそれを認めようとはしない。


 相手に想ってもらうことも、一緒になることも、幸せになることも、望めるのならテルコだってそうしたいはずだ。だけどテルコは「マモちゃんが好き」という気持ちを最も大切にしている。「好き」という感情があったとしても、それは恋や愛、恋愛と言えるのだろうか? かと言って好きになってくれる人を好きになるなんて、そんな順当そうな人生もなぁ、とやっぱりテルコのように自分の気持ちを貫いていくことへの憧れと、こうなってしまったら怖いなという気持ちが溢れてしまうのだ。


 『ここは退屈迎えに来て』では結婚する役柄を演じ合った岸井ゆきのと成田凌、『まんぷく』では良き夫と結ばれ夫婦生活を送る姉妹として共演していた岸井と深川麻衣、共演経験が豊富な役者たちの、相手と呼応した絶妙な演技が、片思いの恋の物語を優しく映し出している。


(リアルサウンド編集部)