トップへ

新ドラマ『わたし、定時で帰ります』に「私も定時で帰りたい」と注目集まる 「新人は30分前に出社して下働きしろ」に反発も

2019年04月19日 17:20  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

吉高由里子主演の新ドラマ、『わたし、定時で帰ります』(TBS系・火曜夜10時~)。4月から働き方改革関連法が施行され、残業規制が始まったタイミングでの放送に注目が集まっている。原作は朱野帰子の同名小説。主人公は、Web制作会社でディレクターとして働く東山結衣32歳だ。絶対に残業しないことをモットーに効率よく仕事をこなし、定時で上がって中華料理店でビールを飲むことに幸せを感じている。恋人(演:中丸雄一)との時間も大切にし、充実した日々を送っている。

新卒入社した会社で無理に働き死にかけた経験から、無理はしないという信念を持って働いている。上司から「みんな残ってるんだからもっと頑張ろうよ」と言われても、「私はこれ以上、頑張りません!」と軽やかに宣言して退社していく。ネット上では「サラリーマンの理想」「私も定時で帰りたい!」と共感の声が相次いだ。(文:篠原みつき)

「仕事は無理してでもするもの」旧来の価値観貫く上司のせいで新人がばっくれ


結衣の会社はなるべく残業しない社風だったが、最近は風邪でも休まない同僚や超ワーカホリックの元婚約者、残業を奨める新部長などが次々と職場に配置転換されてきて、雲行きが怪しくなってきた。

4月16日の第一回放送で特に強烈だったのは、皆勤賞が自慢の同僚、三谷佳菜子(演:シシド・カフカ)だ。主人公の結衣と同い年の三谷は、新入社員に対して

「新人は朝30分前に出社して先輩の下働きをするもの」
「仕事は無理をしてでもするもの。私たちもそう言われて育てられた」
「社会人なら誰もが通る道」

など、かなり厳しく指導。新人は不服顔で反論するが、「私の言うことを聞けないなら好きにしなさい。この先どうなっても知りませんよ」など、高圧的な態度を貫いていた。

耐えかねた新人は、三谷のパソコンのパスワードを勝手に変え、正しいパスワードを明かさないまま退職。教育係として責任を追及された三谷は、他の新人にも「三谷さんって古くないですか」「10年前のスタンダードを押し付けないでくださいよ」と言われ、逆上する。

三谷は、「私たちの世代は」と何度も繰り返し、自分の世代が就活に苦労したこと、厳しく指導されながらも必死に働いてきたことを叫ぶように言い募った。自分のような不器用な人間は評価されず、「定時に帰る要領のいい結衣のような人間が評価される」と、妬む気持ちまで明かしている。

こうした言動にネット上では「価値観の押し付け」「自分が苦労したからお前もしろは間違い」といった感想が上がった。時代は変わっているのに昔の価値観を押し付けられても困るのだ。

「私は三谷側だ」「自分を重ねてしまう」必死にやらないと生き残れないという強迫観念

ただ、ネットには「私は三谷側だ」「三谷さんに自分を重ねてしまう」という声もあった。確かに理解できる部分もある。三谷は自分が内定取り消しに怯えた就職氷河期世代であることを仄めかしている。不器用と自覚する分だけ人の倍以上働かなくては、必要とされない恐怖がいつもどこかにあるのだ。これは、リストラや非正規雇用が当たり前のいま、誰でも薄々持っている不安ではないだろうか。

だから「頑張って残業する」ということにもなる。もちろん好きで残業する人もいるが、業務量が多すぎて仕方なく働いている人も多い。根底には労働者の立場の弱さや、そういうものだという思い込みもある。タイトルの「わたし、定時で帰ります」は、そう宣言しないと帰れない、残業が当たり前の働き方に対する挑戦といえる。

主人公の結衣は、「定時で帰るのは労働者の権利」「仕事だけ頑張りすぎていては人間らしく生きられない」「ましてや過労死しては元も子もない」という価値観を大切にしているが、「長時間働く人のほうが頑張っている」「定時で帰る人はやる気がない」といった価値観と戦うことになる。職種や社風にもよるが、つくづく定時上がりの難しさを痛感してしまう。

現代は、ほぼ正社員の男性だけで会社を回していた時代ではない。性別だけでなく独身と既婚、子育てや介護、外国籍など多様な人たちと互いの価値観を擦り合わせながら生きていかなくてはならない。ドラマは答えをくれるわけではないが、働き方に悩む全ての人が、自分の働き方を問い直すきっかけになるだろう。次回は内田有紀演じる双子のワーキングマザーに焦点を当てた話。ますます見逃せない展開になりそうだ。