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AI、『Mステ』で久々の生歌唱 なぜ「Story」は愛され続ける名曲となったのか?

2019年04月19日 12:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 AIが、4月19日に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演し、「Story」を披露する。AIは2018年12月に第2子となる男児を出産し産休に入っていたため、地上波番組で生歌唱するのは2017年年末の『第68回NHK紅白歌合戦』以来約1年4カ月ぶりのこととなる。


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 「Story」は2005年5月にリリースされた楽曲で、今やAIの代名詞でもあり平成のJ-POPを代表する名曲の一つ。今回、同曲はAmazon Prime Musicのキャンペーンソングに使用されることが決定した。


 このキャンペーンは、Amazon Prime全体のTVCMとPrime Music、Prime Video、Prime Wardrobeといった各サービスごとのWEB CMが連動して放映されるという企画で、今回のクリエイティブでアーティストの楽曲が起用されるのはAIの「Story」のみ。CMでは、ある曲を口ずさんで掃除する妻が途中から歌詞を思い出せず、鼻歌になってしまう。するとソファでくつろいでいた夫がPrime Musicですかさず検索し「Story」を妻に聴かせるというもの。何かを懐かしみながら大切な曲を聴く仲睦まじい2人の表情が印象的に描かれている。


 また、2014年にはディズニー映画『ベイマックス』で日本版エンドソングとして同曲の英語バージョンが起用された。『ベイマックス』は人々の心とカラダをケアするために開発されたロボット“ベイマックス”と最愛の兄を失い心に深い傷を負った少年ヒロとの絆を描いた物語だ。


 こんな風に、「Story」の歌詞は兄弟愛にも夫婦愛にも当てはまる。筆者はこの曲を聴くたびに、楽しい時も辛い時もずっと隣にいてくれた親友の顔が思い浮かび、落ち込んだ時にでも自分には心から大事だと思える存在がいるんだと背中を押してもらえる。


 曲全体を通して伝えているのは「私」の気持ちだけれど、1番では「私」が辛い時に「キミ」がしてくれたこと、2番では「キミ」が辛い時に「私」がしてあげられることが書かれている。


 一般的には「僕」に対して「君」、「私」に対して「あなた」と使われる方が多いかもしれないが、同曲では「私」と「キミ」という三人称を用いることで、恋愛や友情など一つの形を想像させない普遍的な“愛”を描くことに成功している。また、この歌には場所や年齢、あるいはどういったことで相手や自分が傷ついているのかといった具体的なことがあまり書かれていない。そういった関係性やシチュエーションが聴き手に委ねられていることも、幅広い世代がこの歌に共感する理由の一つだろう。


 重たいビートを見事に乗りこなすラップや、バラードでもミドルボイスの印象が強いAI。だが、ゴスペルクワイアで身につけた本格派の歌唱力は底知れないものだ。10年前、AIの日本武道館公演にチャカ・カーンがゲスト出演し、2人でチャカのヒット曲「Through the fire」を披露した際、AIのパワフルなハイトーンボイスに鳥肌が立つほど圧倒された感覚は、未だに忘れることができない。実はJ-POPを歌う中でも中低音域でバランスを取るのが一番難しいと言われている。「Story」で優しく包み込むようなミドルボイスを聴かせられるのも彼女がゴスペルやラップで培った強みなのだ。


 AIは2019年11月でデビュー20周年を迎える。「Story」をはじめ、「ハピネス」や「Believe」「みんながみんな英雄」など代表曲を挙げればたくさんあるけれど、いつだってAIは「誰かがいてくれる大切さ」を教えてくれる。〈1人じゃないから〉そんな心強さを思い出させてくれるAIの声を、今日は久しぶりに聴けるのがとても楽しみである。(神人未稀)