F1第3戦中国GP後、ホンダが次戦アゼルバイジャンGPに改良パワーユニットを投入するのではないかという噂が持ち上がっている。
その根拠となっているのは、マックス・フェルスタッペンの「バクーではマシンとエンジンに新しいパーツが導入される予定だ。本格的なアップグレードはもっと後になるけどね」というコメントだ。(4月17日「「今年は決勝スタートがうまくいかない」。悩むフェルスタッペン、レッドブル・ホンダのアップグレードに期待」)。
また中国GPではレッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコが、「バクーでは20馬力向上したアップデートしたパワーユニット(PU/エンジン)が投入される予定だ」と語ったという話もある。ただし、中国GPでホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、その件について一切、明言はしておらず、その真偽は定かではない。
20馬力アップというと、バクー・シティ・サーキットの場合、約コンマ4秒のタイムアップとなる。中国GPの予選で5番手だったマックス・フェルスタッペンとポールポジションのバルテリ・ボッタス(メルセデス)のタイム差はコンマ5秒ほどだったので、もしこれが本当なら、ポールポジションに迫ることになる。
それほどの大きな改良は、通常であれば、スペックを上げたアップグレードエンジンでなければ実現しない。もちろん、予選モードの使用範囲を予選だけでなく、レースに拡大することでも『20馬力アップ』は可能である。同じ記事の中で、フェルスタッペンが「今の僕らはレースペースがよくない」と言っていることからも、同じスペック1のまま、予選モードの使用範囲をレースまで広げて使う可能性は十分に考えられる。
スペック1のままパフォーマンスを向上させるのか。またはスペック2を投入するのか。あるいは中国GPと同じスペックをまったく同じ使い方で臨むことになるのか。その答えは1週間以内にわかることだ。しかし、どうなるにしても、今のホンダのパワーユニットには、もうひとつ気になることがある。
■PUアップデートの決断を下すタイムリミットは4月21日
それは中国GPのフリー走行1回目の終了間際にトラブルが発生したダニール・クビアトのパワーユニットの件だ。というのも、トロロッソが使用しているパワーユニットも、レッドブルに搭載されているパワーユニットも同じスペックだからだ。
データに異常が発見されたというトラブルは、「温度センサーが少しというレベルじゃなかった」という田辺豊治F1テクニカルディレクターの口調から想像するに、エンジンがどこかが物理的に壊れている可能性が高い。
問題は、そのトラブルの原因が何かだ。原因が特定のロットに不良品が存在していたバッチトラブルであれば、そのロットの部品をレッドブルのパワーユニットに使用されていないことが確認できれば、何も問題ない。
しかし、バッチトラブルでなく、燃焼システムに根本的な問題を抱えていたために発生したトラブルだということが判明すれば、そのスペックのままパワーアップを図るにしても、スペック2を投入するにしても、なんらかの見直しが迫られることになる。
さらにその決定を下すまでに時間があまりないことも問題だ。中国GPの金曜日にトラブルを起こしたクビアトのパワーユニットは、通関の関係で中国GP後にしか出国させることができず、4月17日(水)にようやく栃木県さくら市にあるホンダの技術開発研究所 HRD Sakuraへ到着した。
アゼルバイジャンも通関が複雑なため、もしアップグレードしたパワーユニットをアゼルバイジャンGPに投入するには、日本のHRD Sakuraから一度イギリス・ミルトンキーンズにあるHRD MKに輸送した後、イギリスからアゼルバイジャンに入国させないといけない。その場合、4月21日(日)には日本からイギリスへ出荷しなければならない。
つまり、調査して結論を出すまでの時間は4月17日から20日までの4日間しかないということだ。
果たして、HRD Sakuraで、ホンダのエンジニアたちはどのような決断を下すのか。その決定を見守りたい。