4月15~18日、ドイツのユーロスピードウェイ(ラウジッツリンク)において、DTMドイツ・ツーリングカー選手権の最終合同テストが行われている。
ドイツの人気ツーリングカーシリーズであるDTMでは走行テストの回数や参加台数が厳しく制限されており開幕前最後のオフィシャルテストには、ほぼ初めてクラス1規定の新マシンをドライブする者もいた。
今回のテストではブランドとして初めてDTMに臨むイギリスのアストンマーティンから2台、迎え撃つBMWが3台、アウディは3台+カスタマーチーム、Wレーシングチーム(WRT)の1台が参加した。
新たにアウディRS5 DTMを投入してシリーズに新規参入するWRTのマウリチオ・レスキュッタDTM監督は、かなり厳しい条件ながらも「2020年からの本格始動を目標に、今季は学びの年と捉えている」とコメントしている。
そのWRTは3月にファクトリーで行われたプレゼンテーションで2台体制を予定していること、1台目のドライバーにジョナサン・アバディンの起用を発表したが、今回のテストではピエトロ・フィッティパルディもターボ化された新型アウディRS5 DTMのステアリングを握った。
2018年シーズンまでの4.0リットルV8エンジン車から、スーパーGT GT500クラスと基本規定を同じくする“クラス1”レギュレーションに合致したマシンへと生まれ変わったDTM車両は、ニッサン、レクサス、ホンダが覇を競うGT500クラスのマシンと同様に2リットル直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載する。
マシンのみならず要となるエンジンも新作となったことで新規定の採用初年度である2019年シーズンは、各メーカーともある程度のトラブルは想定しているだろう。
メルセデスとの関係が深いHWA AGと組んで初参戦するアストンマーティンを除いては新マシンでの実車テストはまだ2度目とあり、ベンチマークテストでは起こらなかったトラブルや問題点の解明のため周回後、長くピットに滞在する様子が確認できた。
そんななか、公開テストが行われた17日の朝一番には、ブルーノ・シュペングラーのドライブするシェフラーカラーのBMW M4 DTMのエンジンから煙が上がった。幸いすぐに消火され車両への大きなダメージは免れたものの、シュペングラーのマシンは修復のためにその日の走行がキャンセルされている。
また、この出火アクシデントによりマシンの回収やコースの安全確認のためにセッションがしばらく中断されることとなったが、その後は大きなトラブルもなく順調にスケジュールが進められた。
■リヤタイヤの使い方が2019年シーズンの鍵になるか
クラス1規定車では従来のマシンに比べて100馬力以上もエンジンのポテンシャルがアップしたと同時に、最低重量は50kg軽量化されている。一方、ハンコックが供給するタイヤのサイズやコンパウンドは2018年から変更なし。
このため特にリヤタイヤの負担が大きく、摩耗が激しくなることからタイヤマネジメントという意味でもドライバーとエンジニアの頭脳戦にもなり得そうだ。なお、アストンマーティンについては新規参入メーカーへの特別措置として、別途テストの機会が許可されている。
そんなアストンマーティンを代表して新規参入するRモータースポーツからは今テスト中、メディア関係者全員とアウディやBMWの関係者へ、アストンマーティン・バンテージDTMがプリントされたイースター(復活祭)のチョコレートがお土産として振舞われた。
午前と午後のセッションの合間には、恒例の集合写真や記者会見も行われ、新たなマシンとともに真新しいレーシングスーツとヘルメット姿のドライバーが記念写真に納まったが、前述のフィッティパルディは正式にWRTのドライバーとなるのかが未定のためこれに加わっていない。
また、このテスト期間には日本から3メーカーのエンジニアらが多数見学に訪れている。会期中はDTMを運営するITRとの技術協議会が同時に行われており、日独両シリーズの更なる発展の一歩が踏み出されたと言えるだろう。