オセアニア地区最大の人気を誇り、世界中にファンを抱えるVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第4戦フィリップ・アイランド・スーパースプリントが4月12~14日に開催され、ディフェンディングチャンピオンのスコット・マクローリン(フォード・マスタング/DJRチーム・ペンスキー)がレース1を、その僚友ファビアン・クルサードがレース2を制し、2019年から新型フォード・マスタングを手にした王者がここまで10戦7勝と快進撃を続けている。
前週のタスマニア島でのイベントから“島連戦”での開催となったオーストラリア南岸沖に浮かぶフィリップ・アイランドでの1戦は、前週の勢いを維持したエレバス・モータースポーツのアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB)がFP1で首位発進するも、続くFP2、FP3はDJRペンスキー・デュオのクルサード、マクローリンがそれぞれトップタイム。
予選でも定位置となった今季7度目のポールポジションを確保したマクローリンは、120kmの距離で争われるレース1を完全支配する盤石の強さを見せ、あっさりとラップレコードも更新して、フロントロウに並んだクルサードとのワン・ツー・フィニッシュを飾った。
この週末、そのDJR勢の後方で気を吐いたのは伏兵のニッサン勢で、ケリー・レーシングで2年目のシーズンを迎えたアンドレ・ハイムガートナー(ニッサン・アルティマ)は、エースのリック・ケリー(ニッサン・アルティマ)を上回る4番グリッドを手にし、レースでもピットアウト直後のチームメイト直接対決を制して、2019年シーズンでケリー・ニッサン初の表彰台を獲得した。
本来、そのニッサン勢のポジションで週末を戦いたかったはずの名門、トリプルエイト・レースエンジニアリングのレッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)は、7度の王者獲得経験者ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)が予選Q1でまさかの敗退で17番手、2016年チャンピオンのSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB)も予選9番手止まりと、マイナスの意味でのサプライズとなった。
さらにレースでは10ラップ前後で最初のピットへと向かった上位勢に対し、ウインカップがファーストスティントを引っ張る戦略で上位進出を目指したものの、ピット作業で右フロントホイールの装着に手間取り、焦った元王者はクルーを引きずるような形でピットアウト。
無線ですぐさま「スローダウン」の指示が飛んだが時すでに遅く、ターン5でその右フロントホイールが脱走し、まさかの2戦連続ホイール脱落というホールデン・ファクトリーチームらしからぬ失態を犯してレースを終えることとなった。
結局27周のレース1は、首位を快走しながらもまさかの“右側2輪交換”のリスクを取り、さらにマージンを広げたマクローリンが勝利。以下クルサード、ハイムガートナーの表彰台に続き、エレバスのエース、デビッド・レイノルズが4位、ティックフォードのチャズ・モスタート(フォード・マスタング)が5位、SVGの6位を挟んでニッサンのケリーが7位に入った。
明けた日曜、45ラップ200kmでの勝負となったレース2も、DJR勢がフロントロウを独占。2番手スタートから主導権を握ったマクローリンがクルサードを従えて後続を大きく引き離すと、マクローリンは最後のストップで燃費セーブの作戦で上位浮上を果たしてきたパスカーレに抑えられ、クルサードとのポジションが逆転。
無線で「スコッティ(マクローリンの愛称)は君にアタックする気はない」と伝えられたクルサードが今季初勝利を挙げ、2位のマクローリンとともに再びDJRがワン・ツーを達成。3位には前戦タスマニアでトップ10を快走しながら、トランスミッション支持ボルトが折れて涙を飲んでいたパスカーレが、VASCで自身初の表彰台を獲得した。
そのポディウム背後にはウィル・デイビソン、モスタート、キャメロン・ウォーターズのマスタング勢がずらりと並び、今季は引き続きフォード勢がシリーズを席巻する流れを示唆するリザルトとなっている。
続くVASCの第5戦は5月2~4日にオーストラリア大陸に戻り、昨季はシドニーで実施され、今季は西オーストラリアのバルバガロ・レースウェイでは初の試みとなる"パース・スーパーナイト"が待ち受ける。