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日向坂46の歌姫 齊藤京子、努力の末に勝ち取った歌唱力 『Mステ』初出演を機に振り返る

2019年04月18日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 デビューシングル『キュン』が大ヒット中のアイドルグループ・日向坂46が、4月19日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初出演する。その中でもブログに「ずっと憧れだった」と喜びを綴っていた日向坂の歌姫・齊藤京子に今回は注目したい。


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 日向坂の魅力として、明るく幸福感に満ち溢れたムードや、バラエティでの対応能力の高さなどが挙げられるが、それは歌番組での強みにも繋がっている。これまでに様々なアーティストとコラボし、その期待に応えてきた彼女たちだが、その一因を担っているのは歌に自信のある齊藤と言えるだろう。たとえば、先週放送された『うたコン』(NHK総合)では、加藤史帆と共に市川由紀乃と「東京の花売娘」でコラボ、けやき坂46(以下、ひらがなけやき)時代に同番組に初出演した際には氷川きよしとBOYS AND MENと共に「Choo Choo TRAIN」を歌唱し、ソロパートを担当するなど、齊藤は公開生放送かつ実力派の演歌歌手と共演という大舞台でも臆することなく歌い上げる。むしろ、彼女からは歌うことへの純粋な喜びを感じるほど。生歌でのコラボが安定してできるというのは、アイドルとして最強の武器であり、齊藤の歌への信頼がグループの活動の幅を広げているとも言える。


 そんな齊藤は、中学生の頃から“歌手”になることが夢で、結果的にアイドルとなった。「誰よりもそのために努力をしてきた」と『キュン』の特典映像で語っているが、小学1年から中学2年までダンスを習っていた齊藤。だが、急に歌をやりたいと思い、中高時代には自ら調べてボイストレーニングに通うなど、ソロの歌手を目指してレッスンを積みながら、何度もオーディションに挑んできたという。そこで元欅坂46の今泉佑唯と出会い、3年後には自分はアイドルに向いていないと思いつつも、縁に引き寄せられように見つけたひらがなけやきのオーディションに合格。


 歌手になるためにきっちりと下地を作ってきただけに、他のメンバーと比べて、歌への特別な思い入れとプライドは人一倍だと思われる。そんな齊藤だからこそ、欅坂と初対面時には、その圧倒的なオーラと完成されたアイドル力に「この人たちにはかなわない」と思い涙を流し(詳しくは『キュン』の特典映像で)、自分たちの立ち位置もわからず、悔しくて情けないと悩んでいたという。そこから奮起し、ひらがなけやき自体が数々のライブ経験を通して一歩一歩前進すると同時に、齊藤もアイドルとしての自覚とひらがなけやきとしての誇りを持っていったという。齊藤はメンバー屈指の運動神経の悪さだが、ダンスパフォーマンスにおいてはグループ随一の迫力と表現力の持ち主。これは彼女が目標に向けて努力してきた証だろう。そして何より歌への愛が齊藤からは常に伝わってくる。


 ひらがなけやきが連続ドラマ初主演を務めた『Re:Mind』(テレビ東京系)の主題歌「それでも歩いてる」は、1stシングルに匹敵するほど重要な曲だ。ひらがなけやきの象徴である長濱ねるが欅坂専任になった直後の同曲で、センターを任されたのが齊藤だった。その歌声で世間に勝負できると判断されての抜擢だろう。また、齊藤が自身のことを歌っているというソロ曲「居心地悪く、大人になった」の歌詞からは、彼女の心境の変化や生き様が伝わってくるようだ。〈ああ 僕らはここまで来てしまった/ただひたすら歩き続け/目指したわけではないのに/気づけばこんな遠くへ〉と歌い出し、そして、今ここにいるのはあの頃の自分じゃない、生まれ変わった自分だと続く。


 歌手という夢を叶えるために頑張ってきた齊藤だからこそ、シングルデビューと日向坂46への改名が告げられた際に、飛び跳ねて喜んでいたのも頷ける。当時のブログでは、「初めて見た人にもすぐに理解して興味を持ってもらえてグループを大きくしていくには新たに坂道が必要だと私は思いました。自分が入ったグループを大きく成長させることがメンバーとしての役目だと思っています」とその心境を綴っていた。デビューシングル『キュン』における齊藤のポジションは、まさにグループを大きく成長させる重要な役目を担っていると言える。センター小坂菜緒の真横で、後輩センターを支えながら、自身の歌とダンスも目立つ位置。だからこそ齊藤のポテンシャルが問われる。


 そんな「キュン」で日向坂が『Mステ』に初出演を果たす。今回の出演は、遠回りしてきた彼女たちがやっと辿り着いた、デビューの証にして一つの到達点。メンバー各々に様々な思いがあるはずだが、ひらがなけやき単独アルバム『走り出す瞬間』がリリースされた直後の『BUBKA8月号』(2018年)のインタビューで、これからひらがなけやきで実現させたいことについて「私はMステにでることです」と断言していた齊藤にとっては、一つの夢が叶う瞬間でもある。ずっと歌手を目指していた齊藤が、目標にしていた番組に出演するという記念すべき日を我々は目撃するのだ。(文=本 手)